脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

リーグ終了、試練の秋へ -vsバンディオンセ加古川-

2011年09月26日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグはいよいよ2011年シーズンの最終節を迎え、和歌山の桃源郷運動公園陸上競技場では、Div1優勝を決めている奈良クラブが2位・バンディオンセ加古川と対戦。撃ち合いの末に2-3で敗れた。奈良クラブは今季リーグ戦初黒星。対するバンディオンセ加古川はリーグ3連勝で有終の美を飾り、10月15日から開幕する全社に繋ぐ勝利となった。ちなみにこの後に行われた第2試合では、Div2の1位と2位が激突。既に来季のDiv1昇格を決めていたディアブロッサ高田に2-2で引き分けたアルテリーヴォ和歌山が来季のDiv1昇格を決めた。

 

 初のリーグ戦敗戦。前節のメンバーから出場停止の辻村剛に代えて李を中盤に加え、試合に臨んだ奈良クラブ。しかしながら、ここまで攻撃を抑えられるとは思わなかった。前半から効果的な攻撃は影を潜め、決定機もほとんど作れず。前半唯一といっていい見せ場は蜂須賀のミドルシュートの場面ぐらいで、攻めあぐねた末に両サイドを揺さぶられて先制点を献上するという悪い流れで前半を終えることとなった。前節のTOJITSU滋賀戦と同じく、前期の戦いを踏まえて研究され尽くしたという加古川の戦いぶりは強かで、守備ラインを上げすぎることなくしっかり引いてまずは守りに徹してきた。

 後半、いつも通りのパスワークでリズムを掴みつつあったが、スピードが武器である嶋の投入で一気に縦への推進力は上がった。69分に左サイドのFKから橋垣戸が合わせて同点に追いつく。完全に流れは奈良に傾いた。84分には、嶋のスルーパスに走り込んだ途中出場の浜岡が冷静にGKとの1対1を決めて逆転。残り時間が5分ほどいう場面で勝利をグッと手繰り寄せたかに見えた。
 しかし、ここからが魔の時間帯だった。加古川も交代出場で余力を残していた宮本が89分に左サイドから折り返すと、これを西口が決めて同点に。そしてアディショナルタイムの3分には、最終ラインでボールを持った眞野が相手をかわそうとした際にボールを奪われ、GK日野が上がっていたところを突かれて豪快なループシュートでそのまま決められた。前期の淡路佐野では4-0という完勝を演じることができたが、この日は攻めきれず、ペースこそ作りながらも試合巧者になれず惜敗となってしまった。

 結果的に順位は決まっていたが、しっかり勝って無敗でリーグを終えたかったのは本音。優勝祝勝会のこの試合の後に控え、なんとも寂しい負け方にはなってしまった。しかし、前向きにとらえるしかない。リーグ再開後は交代出場の選手が結果を出したり、良い動きを見せることで明らかにチームを鼓舞できていることは確か。特に3試合で2得点を演じた浜岡というベテラン選手の存在はチームに大きなものであることを改めてプレーで示してくれた。無論、シーズンを通して回顧すれば、11勝2分1敗、総得点42、総失点13というこの戦績は選手層のことを考えても評価されてもちろんだが、得点を生み出した選手たちが12人に上ることを考えると、まさに全員サッカー、全員攻撃を体現できたのではないだろうか。対照的に守護神・日野に頼るところが大きい守備陣の奮起はまだまだ必要。被シュート数が多かったことからも分かるように、まずはシュートを打たせない守備面の建て直しは今後の課題になる。それにしても、昨季の10月、KSLカップでの空中分解したような無様な負けっぷりが嘘のようで、今季の開幕前には「Div1残留」が今季の最大目標にもなりかねないと頭を過っていたことを思えば、昨夜のような盛大な祝勝会を迎えられたことは最大の喜びだろう。
 また、この試合で橋垣戸の得点をFKでアシストした吉田がアシスト王を決定づける今季7アシスト目。昨季の畑中(昨季限りで退団)に続き、2年連続でアシスト王の輩出となった。シーズンを通してそのスピードと段違いの正確なクロスで得点を量産してくれた。彼自身も町田、福島Uで満足に活躍できなかった鬱憤を晴らすかのようなパフォーマンスだった。
 残念だったのは、トップに1点差で牧が得点王を逃してしまったこと。これは悔しい。祝勝会でも本人が相当悔しがっていた。今季は6節から11節まで6試合連続で得点を叩き出してくれるなど驚異的なペースでゴールを量産したが、再開後はまさかの無得点と失速。檜山とのコンビは相変わらず観る者を魅了するコンビネーションだったが、周囲を引き立てる脇役に終始してしまった。その分も是非とも地域決勝の舞台で暴れて欲しい。

 シーズンを勝利で締め括ることはできなかったが、優勝というかけがえのない経験を手にした。果たして関西リーグの卒業試験、そしてJFLへの入試となる地域リーグ決勝大会で、この集大成を見せられるか。この秋、より一層のリファインを経て、次の公式戦であるKSLカップを迎えられるようにして欲しい。まだ奈良クラブのシーズンはここからが正念場だ。

沈黙、混沌の幕開け -G大阪vs甲府-

2011年09月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1の首位を走るG大阪は、ホーム万博で第27節を甲府と対戦。前回対戦では3-4で競り負けた相手だったが、この日はホームで今季初となる無失点で0-2と敗戦。今季4敗目は12試合ぶりの敗戦で、優勝争いを続ける中で非常に痛い1敗となった。対する甲府は前節の福岡戦に続き今季初の連勝。

 

 4連勝で迎えた前節・横浜FM戦をドローで終え、リーグ優勝へ粘りの戦いが続くG大阪。2位につける柏とは勝点差が1ポイント。おそらく今季のJ1優勝はその2チームと3位・横浜FM、そして4位の名古屋に絞られるはず。直接対決を残すのは名古屋だけということで、勝点が切迫している他チームの勝敗に大いに左右される展開。前回対戦時に撃ち合いで敗れた相手でありながら、甲府の現在の順位は16位と降格圏内だけに、ここは負けられないところだ。G大阪は、前節先発だった武井に代えてキム・スンヨンが先発に名を連ねる。左SBにはルーキーの藤春が4試合連続の先発。対する甲府はこのタイミングでダニエルが出場停止から帰還。市川がベンチへ入り、先発には吉田が名を連ねる。佐久間監督に代わってから片桐がハーフナーの後ろにトップ下として配置するようになったようだ。パウリーニョも含めてテクニックのある選手は多い。

 
 
 2万人近くが入った万博。
 この試合展開は一体どれほどの人が予想できただろうか。

 それでもG大阪は、途中加入したラフィーニャとシーズン開幕から活躍するイ・グノのコンビがここまで19得点挙げており、失点数は多いものの負ける気がしないのも本音。相手が16位ともあって、撃ち合いは予想できてもこの展開は予想できなかっただろう。前半終了時点でメインスタンドには席を立つ人が見られたほど。それほどこの試合のG大阪の攻撃は「非日常」的な退屈なものとなってしまった。
 両チームミスが少ないわけではなかったが、G大阪はゴール前へボールを進めるものの落ち着かない。カウンター時にシフトアップするG大阪の攻撃に対して、井澤、山本のボランチコンビ、そして吉田、内山の両サイドバックがしっかり寄せてくる甲府。中央には屈強なダニエルが186㎝を誇る長身でハイボールを跳ね返す。G大阪のくさびに対して3人も4人も詰め寄るこの素早いプレスの意識は徐々にG大阪にこれまでなかった焦りをもたらす。

 
 甲府の守備の厚さを崩せず。
 ラフィーニャも得意の形を作れない。

 
 甲府の守備の要として立ちはだかったダニエル。
 幾度となくチャンスボールを潰し続けた。

 甲府は、30分に片桐のライナー性のクロスボールをハーフナーが合わせ損じたところを柏がシュート。これはG大阪が藤ヶ谷のセーブで切り抜けるが非常に危なかった。元来、守備がスペシャルなチームではない。守備だけでいえば、26試合で42失点という数字はミドルクラス以下。これまで圧倒的なその得点力でここをごまかしてきたチームにとって得点が奪えなければ必然的にこういう場面が巡ってくるのは当然だ。34分には二川が渾身のドリブル突破から折り返し、キム・スンヨンが合わせるが、ギリギリのところで甲府のDFに体を入れられた。

 0-0で迎えた後半、分水嶺となったのは61分の交代の場面だった。G大阪は藤春、キム・スンヨンに代えて佐々木、武井を投入。なんと最終ラインを加地、山口、高木の3バックにシフト。すると、その1分後に中盤からバランスの崩れたG大阪のあたふたぶりを尻目に甲府・パウリーニョがドリブルで突進。エリア前から得意の左足でミドルシュートを決めた。相手DFの板挟みになったラフィーニャがボールを奪われた後に見事なまでのダイレクトパスの連続から一気にパウリーニョに繋がれる。甲府の集中力が発揮された瞬間だった。

 
 パウリーニョと対峙する山口。
 しかし、先制点の場面は完全にパウリーニョの勝利。

 
 
 ほとんどの場面で相手DFの素早い寄せに孤立を強いられる。
 ラフィーニャはG大阪加入後最も苦しんだのでは…

 1点を追いかける展開になったG大阪。ラフィーニャには良い形でボールが入らず、彼がシュートまで持ち込む場面も作れない。イ・グノが突破してもダニエルを中心に甲府の最終ラインが身を挺してこれを止めにかかった。後半のG大阪は前半からたった3本しかシュートを上積みできず。自ら3バックにしてしまった直後の混乱から奪われた1点の重みに苦しむばかりか、試合終了間際には、前がかりになったところをカウンターで簡単に裏に出され、安易な守備を見せた明神をかわしたハーフナーにダメ押しの2点目を決められて試合を終えることになった。

 
 
 
 
 アディショナルタイムのハーフナーの得点。
 日本代表クラスにあまりにイージーな守備で対応してしまった。

 痛い1敗。前節の横浜FM戦の引き分けも帳消し以上に思える取りこぼし。ここまで閉塞感の漂い続けた攻撃はG大阪らしくなく、元来持ち合わせていた守備面での脆弱性を改めて見せるだけとなってしまった。なんとかチームを動かそうとした61分の交代と布陣変更だったが、全体的に勝負を焦っていたと感じる。とはいえ、甲府の守備の高い集中力とタスク実行力の賜物。彼らは決して無理をせず、ほとんど数的不利の場面を作らせなかった。G大阪にとっても今季初の完封負けということだったが、甲府にとっても15節・鹿島戦以来の完封勝利ということで、残留に向けた強い意志を確かに感じる勝負に徹した試合運びだった。
 甲府に敗れて以来、2ヶ月ぶりの敗戦も甲府の前に。次節は20周年を飾るイベントを兼ねたホームでの浦和戦。残りのリーグ戦は7試合。明日、2位の柏が勝利すれば逆転で首位に浮上する。このG大阪を1差で追いかける名古屋、そして3差で追う横浜FM。今季も最後までJ1の優勝争いは混沌となりそうだ。

 
 どうも遠藤に元気がない様子だった。
 やはり、G大阪の浮沈は彼次第か…

覚醒のKG -関学大vs立命大-

2011年09月24日 | 脚で語る大学サッカー
 太陽が丘球技場Bにて行われた関西学生リーグ1部の後期第1節の第2試合は、5位・関学大が8位・立命大と対戦。この試合終わってみればなんと6得点の猛攻で関学大が6-0と大勝。来季G大阪に入団が決まっている阿部(4年)が4得点、コンビを組む三ノ宮(3年)も2得点と2トップが大活躍。2人ともこれで得点ランキングトップに躍り出た。これで関学大は、リーグ戦6試合無敗。対する立命大はリーグ戦6試合未勝利と対照的な2チームの試合だった。

 

 1点を争う大体大と阪南大の1試合目と打って変わって、関学大のゴールラッシュになった2試合目。関学大は比較的主力に4年生が多い中に、名古屋ユース出身の小幡、そして福森と1年生コンビが先発出場。対する立命大は左SBに篠原(4年)でなく武田(2年)を起用。直近5試合で2得点得点力不足が顕著なだけに昨季のリーグ得点王坂本(3年)の爆発に期待をかけたい後期初戦だった。
 しかし、試合が始まるとその出来の対照的なこと。関学大は常にフィニッシュをシュートの意識で阿部を中心に攻め立てる。立命大の攻撃を許すことなく、関学大は攻めまくった。19分に阿部がゴールラッシュの口火を切る1点目を奪取すると、36分には三ノ宮の突破から最後はゴール前にこぼれたところを再び阿部が決めて2点目。その直後には阿部が完全にフリーで抜け出してシュートという場面があったがシュートは無情にもバー直撃でハットトリックは後半にお預け。43分には左サイドから駆け上がった津田(4年)の折り返しを三ノ宮がヘッドで決めて前半だけで3-0とする。

 
 もちろん試合の主役は阿部浩之。
 無双状態の得点力で4得点と大活躍。

 
 関学大は1年生の小幡が印象に残った。
 小柄ながら間違いなく将来のチームを支える選手。

 
 関学大は前線ももちろんのこと、中盤で関(2年)が奮闘。
 攻守に強さを見せ、存在感の大きさを感じさせる。

 “手も足も出ない”と言わんばかりに好き放題攻められた立命大。後半から大型FWの前岡(1年)を投入して建て直しを図るが、後半も相変わらず関学大が攻守にペースを握る。63分には阿部がハットトリックとなる見事な抜け出しからの3点目で4-0とすると、71分には、今度はエリア右手からノーステップ気味にループめいたシュートでゴールの高い位置に決めて自身4点目。来季J屈指の攻撃陣を誇るG大阪入りを納得させる見事な存在感。その4分後には三ノ宮がこの日2点目を決めて関学大が6-0とそのリードを広げた。

 
 特別指定選手として既に東京Vでもプレーする梶川(4年)。
 その非凡なパスセンスと攻撃センスは関学大の要。

 
 この日は三ノ宮も爆発。
 遠慮なくハットトリックといきたかった。

 
 前半からキレのあるプレーを見せていた高松(4年)。
 関学大で最も気になる選手の一人。

 打つ手無く惨敗を喫した立命大は、これで6試合もリーグ戦での勝利に見放されることとなった。ほとんど決定的な場面を作れなかったのが残念。特に坂本がずるずると中盤までボールを引き寄せにいかなければならない展開が苦しかった。速い時間帯から1年生の前岡を入れるが、これがほとんど功を奏さなかったのは中盤の構成力の差というべきか。とにかく覇気の無さも含めてかなり気になる試合運びだった。次節は、前期接戦の末に敗戦を喫した大体大と対戦。なんとか浮上のきっかけを掴みたい。


 終始苦しい戦いを強いられた立命大。
 前期の序盤こそスタートダッシュは良かったが…

 
 エース・坂本は来季の今頃どこに去就が決まっているか。
 立命大の復調には彼がゴールを決めないと。

 
 小柄ながらテクニックのある戸高(2年)。
 劣勢の中でも好プレーは見せた。
 
 対して、覚醒のKGこと関学大。加茂総監督もおそらくご満悦の6点圧勝劇で、これで後期も上位陣にしっかりしがみつくことができそう。勝点が切迫した上位陣はどこが振り落されるかという勝負なだけに、この勢いでリーグ優勝も狙いたいところ。関西大、桃山大と直接勝負となる11月が勝負どころとなりそう。何にせよこのカテゴリーでは阿部は少しレベルが違う存在。常にゴールへと向かうその姿勢は今からJでどんなプレーを見せてくれるのかという妄想を掻き立てられる。また、同じくゴールでアピールした3年の三ノ宮もJ入りを意識してこのまま活躍を期待したい。また、主力に4年生が多い関学大は、小幡を中心に1年生選手など下級生戦力のアピールも欲しいだろう。11人中5人も4年生で構成されているのは来季のことを考えると少し心配の種かもしれない。

 
 来年の今頃は、この姿がG大阪のユニフォームで見られるか。

痛いロスト2ポイント -大体大vs阪南大-

2011年09月23日 | 脚で語る大学サッカー
 関西学生リーグの後期日程がいよいよ開幕。京都府立山城運動公園太陽が丘球技場Bでは、1部の2試合が行われ、第1試合で6位・大体大と7位・阪南大が対戦。阪南大前半先制して優位に試合を進めるものの、追加点が遠く、後半のアディショナルタイム終了間際に同点弾を被弾。1-1の引き分けに終わった。大体大と阪南大の勝点差は変わらず4ポイントのまま。

 

 秋晴れの太陽が丘球技場B。陽射しこそ強いものの風が強く、心地よい清涼感に満たされる。まさに秋のサッカー日和といった天候だったが、試合は熱かった。
 阪南大、大体大共に天皇杯出場を果たした関西勢を代表する2チーム。大体大は3年ぶりの総理大臣杯制覇で、大学枠での出場となったが、厚別での1回戦では北教大岩見沢校に総理大臣杯まさかの敗退。総理大臣杯のリベンジをとられる形になった。一方の阪南大もこの大体大との決勝となった関西選手権を制し、総理大臣杯に出場。初戦で敗れたが、優勝を果たした大阪府選手権経由で天皇杯にチャレンジ。1回戦ではJFLの強豪・SAGAWA SHIGA FCに敗戦と、双方1回戦で姿を消すことになったが、前後期のインターバルでどちらも共に結果を残したといえる。その両校が後期最初の試合で顔を合わせることになった。
 大体大は山田、山口という1年生コンビが先発に顔を揃え、ベンチにも坂本、藤山、泉谷と1年生が3人もスタンバイ。明らかに今後のチームも見据えたメンバー構成を垣間見せた。対する阪南大は、先日C大阪入団が内定した井上(4年)を軸に、GKには原田(2年)が入り、CBには永井(2年)ではなく二見(2年)が岩本(4年)をコンビを組む。前線では可児(2年)と中村(4年)のコンビ。そして、ベンチには神門(3年)が入った。

 試合は、前半から阪南大が効果的に攻撃を展開。井上から泉澤(2年)、中村にボールを繋ぎ、大体大ゴールに迫る。対する大体大も前線の山本(2年)を中心に、左MFの田上(3年)とで積極的なドリブル突破を見せる。しかし、前半こそ何度かチャンスを作るがなかなかエリア内でシュートを打たせてもらえず。対して、この日は阪南大の左サイドで泉澤が切れのあるプレーを見せており、40分にはその泉澤のシュートで阪南大が先制して前半を折り返すこととなった。

 
 阪南大ゴールに迫る大体大・山本。
 二見に倒されたこの場面は惜しくもPK獲得ならず…

 
 阪南大の選手に囲まれながらも突破を試みる田上。
 何度も左サイドからチャンスを作る。

 後半に入っても阪南大のペースは変わらず。左から飯尾(3年)のオーバーラップ、中村の突破、井上のセットプレー、泉澤のドリブルなどでチャンスを作る。49分には、飯尾の折り返しから泉澤がシュートを合わせるが、相手GKのセーブに遭う。65分にも井上が抜け出してニアからシュートを放つが惜しくも右に外れ、追加点が遠い。
 対して1点を追いかける大体大も64分にFW脇(3年)、FW泉谷を合わせて投入。同点のチャンスを窺う。88分には、脇が相手DFの裏に抜け出してGKと1対1の決定機を迎えるがこれを決められず。アディショナルタイムに入り、敗戦濃厚かと思われたその3分だった。馬場(3年)のFKにファーで頭で合わせたのは松竹(4年)。起死回生のゴールで大体大が1-1に追いついて試合を終えた。

 
 効果的な攻め上がりに定評がある阪南大・飯尾。
 この試合でも随所に持ち味を披露。

 
 C大阪入団が決まった関西屈指のプレーメイカー井上。
 負傷で出遅れたが、後期の巻き返しには欠かせない選手。

 
 先制点を決めた泉澤。
 今季はイタリア遠征メンバーにも選出され、切れ味見せる。

 

 
 アディショナルタイム3分の同点ヘッド。
 松竹が逃さなかった。

 前半こそ仕掛ける場面が目立っていた大体大が、次第に淡泊になり、阪南大のペースにハマりすぎていた印象があったが、最後の最後でチャンスを見逃さなかった。松竹のヘッドは集中力の勝利ともいえる流れ。このリーグ戦のインターバルで様々な経験を積んだ大体大の成長の証か。新しい選手も起用しながら、後期の戦いぶりが注目できる。また、追加点が最後まで遠かった阪南大は痛い引き分け。ほぼ勝利を掴んでいただけにこの2ポイントロストは、後期の巻き返しを左右してきそうだ。次節は、大体大が不調の立命大と、そして阪南大は好調の関学大を相手にする。

遠かった1点 -vsTOJITSU滋賀FC-

2011年09月19日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグは残り2節となり、18日に奈良クラブは、TOJITSU滋賀FCと第13節をビッグレイクにて対戦。優勝を決めて更に連勝を伸ばしたい奈良クラブだったが、1-1の引き分けで試合を終えた。TOJITSU滋賀FCは負ければ来季からのDiv2降格が決まっていたが、この引き分けによりAS.ラランジャ京都との降格争いは最終節にもつれ込んだ。

 

 久々のビッグレイクでの試合。この場所は府県リーグ決勝大会時代から何度も奈良クラブが試合を行ってきた地。今季は初めてとなるBコートでのリーグ戦となった。無論、優勝が決まったことで、残り2試合のモチベーション維持はこれまでより難しい。TOJITSU滋賀には前期の鴻ノ池での対戦でも勝利こそしたが、再三決定機を作られて苦しめられた。そういう意味では厳しい試合になると予想された。
 奈良クラブは、前節途中からボランチで入り、今季初得点を決めた黒田を先発で起用。李をあえてベンチに置いた。いつもポゼッションの中核として全方位にボールを捌いてくれる彼をあえて不在にして、どこまでやれるかを試したのだろう。地域決勝に向けて、層の薄い選手層の中でいかに個々の経験値を積み上げるか、このメンバーで絶対勝てというメッセージは間違いなく込められていた。

 試合は、開始直後にこの日キャプテンマークを巻いた檜山が惜しいシュートを早速放っていくが、案の定TOJITSU滋賀も序盤からアグレッシブ。ホームで負ける=降格するわけにはいかないということもあって、フィニッシュはシュートでという意識は高い。TOJITSU滋賀の岩田のシュートがポストに当たってかろうじて失点を逃れる場面もあった。奈良も黒田、三本菅が高い位置でボールを奪って、右サイドの蜂須賀、左の辻村剛に繋いでチャンスを作る。31分には、吉田の左CKから橋垣戸が完璧なタイミングでヘッドを合わせて先制点を奪った。
 しかし、36分にはTOJITSU滋賀がDF上田のパスに土岩が反応して抜け出し、シュートを決めて同点。こちらの先制後の守備の緩みを巧みに突かれた。前半を1-1で折り返すことになる。

 後半に入ってもTOJITSU滋賀の集中した守備を崩せない。今季は、2節のアミティエ戦、8節のラランジャ戦、11節の阪南大クラブ戦と、先制点を奪われても試合をひっくり返してきた。明らかに1点を争うこの試合でも次の決勝点を狙うのはこちらだという気迫を見せて欲しかったが、相手の運動量低下に合わせて回数が増えるダイレクトプレーも最後の最後でパスが繋がらない。自分たちのミスから食らうTOJITSU滋賀の鋭いカウンターに肝を冷やす場面が度々見られた。後半には吉田監督が「なんでお前たち1点を取りに行かないんだよ!」と激高する場面も。TOJITSU滋賀のスピードある飛び出しを警戒するあまり、積極的なアタックが影を潜めがちになった。シュートの打てない後半は非常に長く感じられた。
 それでも、前節初得点の浜岡、そしてスピードのなる嶋を投入して最後まで狙い続ける。後半終盤に嶋がGKと1対1の場面を迎えたが、わずかに決められない。両チーム死力を尽くした試合は1-1のドローで終えることとなった。

 双方ベストを尽くした良いゲームになった(試合終了後の辻村剛の一発退場は想定外だったが…)。勝ちたかったのは本心だが、何よりTOJITSU滋賀の残留への執念がそれを阻んだ。しかし、11月から臨む地域決勝のことを考えると、これを弾き飛ばせるほどの決定力と構成力が欲しいところでもある。13試合に渡ってリーグで負けていないことは非常に評価できるが、10月にほとんど公式戦を戦えないことを考えると、これまで以上に結果、内容にこだわって欲しい。残留をかけた相手の気迫に決勝点が奪えないようでは、まだ地域決勝を勝ち抜くことはできない。来週の最終節は、2位・加古川との試合(@桃源郷)。加古川も全社、そして補充枠という点でまだ地域決勝進出のチャンスはある。前期は圧勝できたが、もちろん後期も内容、結果ともに圧勝で今季のリーグ戦を王者らしく締め括って欲しい。

優勝、フロックではないこの力 -vs三洋洲本-

2011年09月12日 | 脚で語る奈良クラブ
 関西リーグがいよいよ再開。奈良クラブは、後期第12節ということで先週の天皇杯1回戦で敗戦を喫した三洋電機洲本と三木防災陸上競技場にて対戦。7-0という圧倒的なスコアで完勝。Div2を優勝して以来2年ぶりとなるリーグ優勝で、Div1は昇格してから2年目にして初優勝。昨季の王者からリーグ王者のタイトルを奪取することに成功した。

 

 5月にリーグ戦の前期で五色にて戦い、初めて三洋洲本から白星を挙げた奈良クラブ。8月には、この日と同じ三木防災のスタジアムで、「奈良県選抜」と「兵庫県選抜」として対戦。0-2のビハインドからアディショナルタイムに追いつき、PK戦では日野の大活躍もあって勝負には勝った。しかし、この2勝を遥かに忘れさせてくれる強さを取り戻して、昨季の王者は先週奈良クラブの前に立ちはだかった。雨の橿原でのあの敗戦は、1-3というスコア以上に、昨季JFL入替戦まで進んだ三洋洲本の屈強さを見せつけてくれた。それはまるで「お前らの実力なんてフロックだよ」と訴えるかの如きものだった。

 
 この大一番で檜山が大活躍を見せてくれた。

 1週間後の再戦となったが、やはり脳裏にはこの天皇杯での敗戦がすぐに想起され、順位こそ奈良の方が上であるものの、逆に「挑戦者」という形は否めなかった。選手たちのメンタルに三洋洲本に対する変な苦手意識が植わっていないか少し心配にもなったが、こんな考えが全く杞憂だと思わせてくれるのに時間はかからなかった。
 奈良クラブは、先週の天皇杯で矢部が負傷し、この試合では蜂須賀が5試合ぶりの先発で中盤に入った。選手層の薄さもあるが、結果的に大幅なテコ入れなど不要。この日は選手たちの気迫が違った。まず9分に辻村剛が易々と先制点となるシュートを決める。先週は立ち上がりの同じ時間帯に先制点を許し、試合の流れに大きく響いた。序盤から不安定な入り方をする悪癖がここ最近では目立っていたため、この先制点は序盤からチームを上昇気流に乗せてくれた。4分後には、蜂須賀がエリア手前左手から左足で豪快にシュートを決める。これでかなり楽になったが、33分には再び辻村剛がGKとの1対1を制して3点目を決めた。前半を3-0で折り返せるとは良い意味で想定外だった。

 
 前半、チームに勢いをもたらした辻村剛。
 さすが関西Div2の得点王。得点力は非凡。

 とにかく面白いようにパスが繋がる。相手のプレッシャーが緩いわけではないが、先週の三洋洲本に比べると少し元気が無いようにも思えた。しかしながら、先週の天皇杯でもシュート数では15対8と奈良クラブが上回り、決定機はいくらでも作れていた。ポストやバーに3本ほど嫌われた場面があったが、もしかしたら「運」の有無ということで、あの敗戦は片付けられるのかもしれない。それぐらいの勢いでパスワークの精度に圧倒的な差を見せて、後半も奈良クラブは得点を重ねていった。
 後半開始直後に檜山がシュートを決める。牧との完全に息の合ったパスコンビネーションで三洋洲本の守備陣を崩した。この4点目が既に試合を決めたといえるが、ピッチの中で走る選手たちは更にゴールを渇望する。後半に入ってギアが全開になってくるいつものサッカーはこの試合でも健在。ダイレクトパスがこれほど相手エリア前で繋がれば負けることはない。83分には、途中出場で右サイドの高い位置でプレーしていた浜岡が檜山の折り返しを中央で決め5点目を奪う。88分には同じく途中出場の黒田も今季初得点となるシュートを決めた。アディショナルタイムに入ってラストワンプレーというところで檜山がとどめの7点目を決めて試合は終了。初のDiv1優勝を派手な得点劇で締め括った。

 
 今ではすっかり古参選手だが、蜂須賀は今季最高のプレー。
 待ちに待った今季初得点を決めてくれた。

 先週の試合を振り返ると、「気迫」という言葉でしか勝因を分析できないような見事な大勝劇。そして同時に最後までワクワクさせてくれたエンターテイメントとしても最高の試合だった。浅野や成瀬という主力選手が帰還して昨季のメンバーが復活した三洋洲本にこの完璧な試合運びは、一体リーグ戦以外の夏の苦戦の連続は何だったのかと悩ましくさせてくれると共に、これから「地域決勝」というチーム未踏の舞台へと挑戦する強い意志表明にも思えた。ピッチで戦う選手の誰もがJFLを目指してプレーしている。一つ一つのプレーでもう一つ上のレベルを意識してやってくれているようだった。「今年はチームのほとんどが仕事を変えたり、生活水準を落としてまでサッカーに賭けていたので、自分の中では優勝して当然やし、正直なんの驚きもありませんでした。」と辻村剛が公式でコメントを残しているように、皆がここでのサッカーに人生を懸けている。その結果が気持ちとして、プレーとして最大の結果をもたらしたのだろう。本当にサポートする側として敬意を表すると共に、選手たちを労いたい。

 
 奈良クラブの司令塔としてパスワークの中心に君臨する李。
 ノッている時のキープ力は凄まじい。

 さて、2試合を残しての優勝を果たしたが、来月は全社出場を逃したチームにとっては公式戦の激減する期間となる。勝負はここからだ。リーグ戦は「無敗」に拘って残り試合に挑んで欲しいし、これ以上のブラッシュアップを地域決勝までに求められる。正直、リーグで戦っているどのチームよりも強豪が集まるこのカテゴリー最大の舞台。全国の強豪クラブと比較しても、3年前の府県決勝を勝ち上がった際のような突出した強さはここでは期待できないだろう。どれだけ「勝利」に拘れるか、この試合のようなメンタルを発揮して挑んでいかなければならない。

無念の1回戦敗退 -EC1回戦vs三洋洲本-

2011年09月05日 | 脚で語る奈良クラブ
 第91回天皇杯全日本サッカー選手権大会が3日から開幕。3年連続で奈良県代表としてこの大会に臨んだ奈良クラブ。4日に橿原で同じ関西リーグの三洋電機洲本との1回戦を迎えたが、1-3で敗戦。2年連続1回戦で姿を消すこととなった。

 

 台風の影響で天候は実に不安定な1日。それでも2年ぶりに奈良の地で迎える天皇杯という特別感と「奈良クラブ祭り」と題されたフードコートの展開で徐々に賑わう橿原公苑陸上競技場。しかし、試合が始まるとその90分間は、奈良クラブが戦った直近の試合において最も辛い現実を受け止めることを強要しているかのような試合だった。
 奈良クラブは、1週間前の県選手権決勝戦と同じメンバー。層が薄いことは承知。陣容の変更点も予想できる範囲といえば、右サイドバックに入った谷山とベンチに控える黒田、そして、この日もボランチで出場した矢部とベンチに控える辻村隆の2組が先発で入れ替わるかどうかという程度だ。しかしながら、リーグ戦の前期の対戦ではこの日戦う三洋洲本には2-0と勝利しており、先日のミニ国体でもPK戦までもつれ込んでの勝利だったが、2点差を追いつくという試合内容。昨季は1勝も挙げられなかった彼らを相手に苦手意識は払拭できたかに思えた。

 
 DF太田を中心とする三洋洲本の厚い壁が立ちはだかる。 

 しかし、それは違った。兵庫県予選の決勝から正守護神の浅野が帰還し、中盤にもリーグ2年連続MVPの成瀬が帰ってきたことで、この日の三洋洲本は5月に五色で対戦したそのチームとは違った。守備でブロックを固めて、素早いプレスでボールを奪いに来る。攻められても決して焦らず、守備から自分たちのペースに持ち込むそのサッカーは昨季の地域決勝で快進撃を見せ、JFL入替戦まで到達した最盛期のチームのそれだった。
 開始8分で先制点を献上する。得点を許したのはミニ国体から右サイドで快活なプレーを見せていた稲垣だった。先制されることで目が覚めた奈良クラブが攻勢に転じるが、檜山が相手GKと1対1の局面を作りながらも決められず、また、三本菅のヘッドがバーを叩くなど、あと一歩でゴールは割れず。前半を0-1で折り返した。
 後半に入ると、奈良クラブが再びまくし立てる。左の吉田、李、矢部の展開、そして檜山、牧のキープから前線でチャンスを作るが、守備面で集中力の高い三洋洲本のゴールを割ることができない。前がかりになり、時間も少なって焦ってきたところで右サイドを崩され、83分に太田に決められる。それでも終盤には三洋洲本に与えてしまったPKをGK日野がストップして見せ、89分には橋垣戸が押し込んで1点差とし、アディショナルタイムの反撃に望みを繋いだが、終了直前に途中出場の三洋洲本・井上に加点を許して万事休す。2回戦進出はならなかった。

 
 最後まで試合をひっくり返すことはできず。

 90分間、三洋洲本の著しい復調をまじまじと見せつけられることになった。強い。本当に強い三洋洲本が戻ってきたという感じだった。こちらポゼッションで優位に立っていても、そのファーストアプローチで守備の陣形をきっちり整える。そして、数的優位を作らせずにきっちり中央をブロックする守備の集中力はさすがだった。その上、相手の隙を逃さず得点に繋げてくる決定力。そういえば、6月下旬に太陽が丘でアミティエに惨敗する彼らを見たが、その印象は吹き飛んだ。浅野と成瀬が帰還したこのチームがこれだけ息を吹き返すとは。  
 その三洋洲本の復調に加え、奈良クラブの経験不足も大きく露呈した試合ではなかったかと思う。今季はリーグ戦こそ11節を終えて未だ無敗という独走ぶりだが、トーナメントのような一発勝負になるとなぜか安定した力が発揮できない。パスは繋がるものの攻守のバランスが乱れることが多く、先取点を与えてしまうと、なかなか建て直すまでに時間を要する。目の前の90分で全てが決まってしまうという焦りが出てしまうのか。全社関西予選のセントラル戦しかり、この三洋洲本戦もそうだ。この点は同じような経験を積み上げていくしかないものかもしれないが、リーグ戦との戦績にギャップを感じざるを得ないリーグ中断期間の戦いぶりだった。しかしながら、昨季の王者の強さを取り戻した三洋洲本に肉薄する実力は垣間見せてくれた。その証拠に15本(スポニチ報道による)という数字がこの試合のシュート数で、相手を凌駕していたはず。3度ほどバーやポストに嫌われる場面があったが、ここを決め切れる力が加われば、G大阪のように撃ち合いに強いチームにはなれると思うのだが。ここを光明として見出したい。加えて、追いかける展開に失点を重ねてしまう面は是非とも克服したいところ。前がかりになった時にカウンターなどで失点を重ねる奈良クラブの悪癖は今に始まった話ではないが、元来守備陣の層が薄く、各ポジションにスペシャリストが少ないというウィークポイントも相まって、この攻守のバランスを試合の中でいかにコントロールできるかは、今後全国の舞台で数ある強豪チームと戦う際に鍵となってくるはずだ。

 
 意地の1点を返した橋垣戸。
 守備だけでなく攻撃面での貢献度も高い。

 いやはや何とも素早く過ぎ去った天皇杯ウィークだった。県選手権決勝からわずか1週間での本番。実感もそこそこに迎えてしまう天皇杯の味気無さと、奈良で2年ぶりに戦えたにも関わらず勝てなかった無念の想いが巡る。奇しくも奈良では台風の被害が著しく、この試合も後半から大雨となった。この悪天候にも関わらず、初めて奈良クラブの試合に足を運んだ方々に彼らの戦いはどう映っただろうか。何より、今週の日曜には再び三洋洲本との試合が待っている。3試合を残した関西リーグの再開初戦。ここで勝てば初の1部優勝を決められる。JFL昇格という最大目標への挑戦もあるが、来年、できれば橿原でもう一度リーグ王者として、奈良県代表として、天皇杯を戦うためのリスタートポイントでもある。二の舞は絶対に“なし”にしたい。

3年連続県王者、天皇杯へ -vs奈産大-

2011年08月29日 | 脚で語る奈良クラブ
 今季の天皇杯出場を懸けた奈良県選手権の決勝が28日に橿原公苑陸上競技場で行われ、奈良クラブは奈産大と対戦。県選手権最多記録となる7得点を奪い、7-2と快勝で3年連続奈良県代表としての天皇杯出場を決めた。

 

 カンカン照りの陽射し、雨でも降って欲しいと思わせてくれるような酷暑の中で迎えた県内王座決定戦の大一番。この試合が終わればあっという間に天皇杯が始まり、優勝に王手をかけたリーグ戦も再開される。先週のミニ国体の敗戦からチームが再び上昇気流に乗るためにも重要な試合だった。相手は関西学生リーグ2部の奈産大。準決勝ではディアブロッサ高田(関西Div2)を3-1で下して決勝に進出。この前日に静岡県大会ではJFLのHondaを下して静産大が天皇杯の切符を掴み、東京都予選では、JFLの町田を相手に専大がPK戦まで持ち込む健闘を見せるなど大学勢の奮闘も目立っていた。油断はできない相手だった。
 奈良クラブは、準決勝の天理大戦から陣容をチェンジ。ゴールを守る日野は変わらず、ミニ国体前の練習試合からサイドバックに挑戦している谷山が右サイドバックに入り、橋垣戸、眞野のセンターコンビに、左は吉田。中盤に矢部が起用され、三本菅とセンターラインを組む。辻村剛が左に、そして李が右に入る形となった。好調を維持するFWコンビの牧と檜山は変わらず先発。

 準決勝の天理大戦でもそうだったが、リーグ戦でもなかなか立ち上がりから先制点を取るという場面は少なかったが、この試合では開始早々から格の違いを披露。特に中盤の矢部から相手DFラインの裏へ何度もパスが通った。開始5分の檜山の得点、そして21分にも辻村剛の得点を彼のラストパスから演出。38分には相手GKのミスも手伝って辻村剛が加点し、前半から3-0という展開を見せた。

 
 決定機演出で3アシストの矢部。
 先発起用に応える。

 後半も変わらず、加点していく奈良クラブ。檜山が後半開始早々に矢部のラストパスからシュートを決めると、その直後には左サイドを駆け上がった橋垣戸の折り返しを牧が決めて5-0とする。5分後にはCKから相手のオウンゴールを誘発して6点差に。勝負の行方は完全に決まった。
 しかし、暑さも手伝って運動量が落ちてくると、73分に奈産大のFW井上皓に1点を返される。スピードのある彼にぽっかりと空いた最終ラインのスペースを持ち込まれた。こういう試合で完封こそできれば格別の圧倒感なのだが、これでゼロでは終われなくなる。

 
 ミニ国体では規約上出番の無かった辻村剛。
 2得点と勝利に貢献。

 84分には辻村剛のパスを受けた李が正確なシュートを決めて7点目を奪う。攻撃面ではまだまだ追加点が期待できた。ところが途中出場の辻村隆、浜岡、嶋が何度もチャンスを作るがこの日はこれにて打ち止め。アディショナルタイムに入る直前に奈産大にカウンターから失点を食らう。最後に決められたのはMF橋田。相手陣内のエリア手前まで持ち込んでいながらのカウンターの食らい方は頂けなかった。7-2とスコアだけ見れば圧倒的勝利、内容でも圧倒していたとは思うが、リーグ戦で失点が少ないこともあってか、先週のミニ国体から続く失点場面についつい敏感になってしまう。試合後にNHKのインタビューで吉田監督が快勝にも関わらず、「7点だけという結果だけ見れば…前半から通してちゃんとサッカーしなさいという内容。」と敢えて苦言を呈したのは明らかにこの2失点の後味の悪さも大いにあっただろうと思う。

 
 檜山は大会2試合3得点で調子を上げている。

 これで、天皇杯1回戦は同じく橿原で兵庫県代表と対戦することになった。試合後に分かったその相手はなんと三洋洲本。十中八九、兵庫県の決勝は関学大(関西学生1部)が勝利するだろうと思っていただけにビックリ。リーグ戦で手の内を知るライバルと天皇杯という舞台で対峙することになった。天皇杯特有の“非日常”感この1回戦は薄いが、これに勝利すれば2回戦ではJ1の神戸と対戦することになる。もちろん2年ぶりのJクラブとの真剣勝負の場を目指す意味では絶対に負けられない試合だ。兵庫県の決勝戦のメンバーを見ていると、三洋洲本は先週のミニ国体にもその姿がなく、おそらく負傷の影響だろうか、リーグ戦でも出番がほとんどなかったGK浅野、MF成瀬(関西リーグ2年連続MVP)の2人が出場している。ここに中盤の村上、稲垣、沈、前線で主砲となる梅川(関西リーグで2年連続得点王)という陣容はリーグ屈指で、昨季の地域決勝で奮闘を見せ、JFL入替戦まで進んだ強い三洋洲本のまさにそのもの。5月に五色で2-0と勝利を収めた三洋洲本、先週ミニ国体でPK戦の末に退けた兵庫県選抜という名の三洋洲本(正確には姫獨大の河野が加わっていたが)とは違うと思わなければいけない。なんと偶然にも天皇杯1回戦の翌週には、同じく彼らと優勝に王手のかかったリーグ戦で対峙するのだ(9/11@三木防災)。この2週は彼らも相当な覇気で挑んでくるはず。昨季の王者に挑む“挑戦者”の心意気で臨みたい。

 とにかくこの決勝戦では、これまで以上に県内における奈良クラブの存在感を見せつける試合で、観客には大いにインパクトは与えられたはず。この日は思っていた以上にスタンドには観客が訪れたが、天皇杯は有料試合。同じように1回戦でも有料試合に見合う試合ができるかしっかりその点をアピールしたい。来季昇格を目指すJFLは基本的に有料試合、この日の試合より一歩進化したサッカーを見せて欲しい。天皇杯はもうすぐ今週末の日曜日だ。

西京極3連勝、じわじわ進撃 -京都vs千葉-

2011年08月28日 | 脚で語るJリーグ
 J2は第26節、15位の京都が4位の千葉をホーム・西京極に迎えての一戦。試合は京都がオウンゴールで先行すると、後半一時は千葉に同点に追いつかれるものの、期待のエース・宮吉の今季リーグ初得点で勝ち越し。2-1と勝利した。これで京都はホームで3連勝。対する千葉は3戦連続で勝ち星に見放された。

 

 ここまで7/31の鳥取戦、8/14の北九州戦と西京極で今季の京都を見てきた。すると2連勝でホームではすこぶる調子が良い。現にその鳥取戦から4試合で2勝1分1敗。前節こそアウェイで札幌に1点差で敗れたが、どうも個人的な印象だとヤングパワーで押せ押せの京都はまだ順位を上げられるはず。しかしながら、今節の相手はJ2優勝候補の千葉。延期の影響で京都と千葉の対戦は今季初。どちらもJ1復帰を目指すチームの対戦。注目される一戦となった。
 京都は、布陣として前回観戦した北九州戦とほぼ変わりなし。A契約条件をクリアし、5年契約が濃厚と言われる久保を筆頭に、宮吉、伊藤が3トップを組み、中山がトップ下の位置、左右に安藤、駒井、そしてチョン・ウヨンがアンカーとして森下、秋本、酒井という3バックの前の鎮座する。そして、開幕前に大怪我を負っていた工藤が古巣との一戦で初のベンチ入りとなった。
 対する千葉は、ここ2戦無得点で未勝利と、J1昇格へ向けて踏ん張りたいところ。既に3試合もオーロイと深井を負傷で欠いており、この試合ももちろんメンバー外と苦しい状況。坂本、青木良というお馴染みの両サイドバックに、センターではマーク・ミリガンと竹内がコンビを組み、ボランチにはファンゲッセル、佐藤、米倉がトップ下の位置に入り、村井、太田がウイングとして左右に配置。トップは青木孝が入った。

 
 8月最後の土曜日。
 アウェイ席には多くの千葉サポーターが。

 ゲリラ豪雨の襲来を上手くかわした西京極。雨がパラつく中で試合はスタートする。序盤から千葉が果敢なプレスで京都からボールを奪おうとする。8分にチョン・ウヨンが千葉のゴール前で際どいFKを見せてこの試合のファーストシュートとなる。京都は駒井、伊藤の右サイドのコンビで仕掛けたいところだが、千葉のプレスの網はここを警戒しており、なかなかその形が作れない。久保に至ってはなかなかシュートのために前を向かせてもらえなかった。
 ところが千葉も我慢の時間帯が長く続いた。ボールを奪ってもなかなかシュートチャンスを作れない。19分に佐藤から絶好のスルーパスが出されたが、これを米倉が決められない。千葉のチャンスはこれがほぼ初めてだったが、この大きな決定機を千葉は決められなかった。

 
 京都は安藤が若い中盤を中山と引っ張る。

 
 佐藤は古巣のサポーターから強烈なブーイングを受ける。
 19分には米倉に絶好のスルーパス。

 
 眼光鋭くゴールを狙う久保。
 期待はかかるが、11試合連続無得点と沈黙中。

 27分には、千葉が太田のサイドチェンジを右サイドで受けた竹内がエリア内でシュート。これを至近距離で京都・GK水谷が身を挺してセーブする。徐々にサイド攻撃が効いてくる千葉に対して、攻撃で低調の京都は守護神を筆頭に守備で魅せた。32分にもファンゲッセルの落としを受けた米倉のシュートを水谷がきっちりセーブして京都は先取点を許さない。
 するとその直後、34分にチョン・ウヨンの左CKから千葉のファンゲッセルが頭に当ててしまいオウンゴール。京都がラッキーな形で先制点を奪う。このCKの場面、どう考えても競り合いすら許されないほどの身長差で京都・DF秋本はマークされていたが、秋本のヘッドに見えて、その高さが仇となったのは千葉・ファンゲッセルの方だった。

 
 
 まさかまさかの千葉、オウンゴール。
 高さが裏目に出たか。

 
 激しくボールを奪い合う京都・中山と千葉・佐藤。
 一昨年まで同じ京都でプレーした仲。

 
 37分、伊藤のドリブルでチャンスを作る京都。

 1-0と京都リードで折り返した後半、千葉が立ち上がりから猛攻を仕掛ける。よっぽどドワイト監督から叱咤があったのか、京都は劣勢に縛られる展開。59分には太田に代わって投入された元京都の林に更に前線で苦しめられる。すると、62分には千葉がスローインからボールを受けた佐藤が一気に左サイドを駆け上がった村井へ絶妙なロングパス。村井はこれを左足でトラップして京都のDF酒井をかわすと、そのまま右足でシュート。これが決まって千葉の同点弾となった。

 
 
 
 
 後半から積極的に仕掛けていた千葉・FW村井。
 62分に佐藤からのアシストを見事に同点ゴールに。

 まだまだ京都もここから。64分には千葉陣内の左サイドからチョン・ウヨンのFKに走り込んだ秋本がヘッド。わずかにゴールには及ばないものの、すぐにセットプレーでこのように決定機を作れた京都が諦めずにチャンスを作ろうとする。73分には千葉の一瞬の隙を突いた。京都陣内でチョン・ウヨンが青木孝を倒してしまい、千葉のFKで始まったが、これが軽率だったか、すぐさま京都がマイボールにして速攻。センターサークル付近で伊藤がボールを受けると、上手く反転して前方へロングパス。すると、オフサイドギリギリで宮吉が飛び出す。この絶妙な飛び出しから宮吉が選択したのは長距離からのループシュート。千葉・GK岡本が飛び出しているのも見て、宮吉は足を攣りながらも30mはあるとかというロングループシュートでネットを揺らした。

 
 値千金の勝ち越し弾を決めた宮吉。
 得点を決めた後は足を攣ったのかご覧の通り。

 
 守備では固く、攻撃ではチャンスを作った秋本。

 
 今日はなかなか攻撃機会がなかった駒井。
 我慢して守備で貢献。

 勝ち越しても守りには入らない京都。宮吉、久保に代えて、内藤、ドゥトラを投入。ロングボール主体に切り替えて千葉から逃げ切りを図る。千葉も最後まで攻め抜くが、京都の集中した守備の前に同点弾ならず。試合は京都がこのまま逃げ切った。

 
 林を途中から投入するが、千葉は及ばず。
 オーロイ、深井の離脱が大きそう。

 
 かつてG大阪でプレーしていた青木良。
 千葉も4年目ですっかり中心選手に。

 京都は先制点こそ前半唯一のCKから相手のオウンゴールというラッキーな形だったが、まさに後半の千葉の猛攻を凌いでの守り勝ち。少ないチャンスで宮吉が決められたのは大きかった。これで7勝目となり、10位台突破も見えてきた。J2は中位の各チーム勝点が団子状態の混戦。まだまだ京都の順位はこれから上がってきそう。
 対する千葉は、オーロイ、深井と個人的に見たい前線の選手が出ておらず、攻撃面で詰めが甘かったか。直近の戦績を見ても芳しくなく、長丁場のJ2で明らかに我慢の時期が続いている。勝点1ポイント、2ポイント差で追うFC東京、徳島、栃木は明日試合を残している。その差を開かれると厳しいだろうし、背後には札幌、北九州の足音も確実に近付いている。

監督も跳んだ、首位決戦を制す -G大阪vs柏-

2011年08月25日 | 脚で語るガンバ大阪
 J1第23節は前節から中3日、万博では土曜に川崎を6-3で下して首位に立ったG大阪が同勝点で並ぶ2位・柏を迎えて対戦。後半に大塚、平井の得点で2-0と勝利した。これで柏には勝点3ポイント差をつけ、名古屋、横浜FMも勝点差1ポイント離して単独首位となった。

 

 
 ゴール裏主力団体「太陽工務店」が解散となった柏サポーター。
 しかしながら、平日の万博には多くのサポーターが詰めかけた。

 G大阪は、前節ベンチスタートだった明神が2試合ぶりの先発出場。警告累積で出場停止の加地に代わって右サイドバックを武井が務める。個人的に注目だったのは、初めて見ることになるラフィーニャ。G大阪加入後6試合で7得点。草津からの完全移籍も決まった新エースとイ・グノの強烈な2トップだ。アウェイで甲府に負けて以来、8試合で5勝3分と絶好調。失点数も41と首位とは思えぬ豪快なものだが、それ以上にアドリアーノという主砲が抜けながらもラフィーニャを補完して、総得点55得点とリーグでも突出した数字を誇っている。まるでリーグ優勝を果たした2005年シーズンを彷彿とさせる夏場の強さは今日も続くのか。8月4度あった万博での試合もこれが最後。万博はそのG大阪の豪快なサッカーを平日ながら12,635人もの観客が見守った。
 対する柏は、前々節の磐田戦に1-6と衝撃的な大敗。前節こそ3-2と福岡を振り切ったが、どうも負ける時の大量失点が目立っている様子。それでも得点力は主砲のレアンドロ・ドミンゲス(ここまで10得点)を筆頭にリーグ3位を誇るだけに、この試合はノーガードの派手な撃ち合いになるかと思えた(前回対戦時は4-2でG大阪の勝利)。

 試合は立ち上がりから、両チームチャンスを作った。G大阪は山口がミスを連発。まずは、2分に山口のクリアミスを相手に拾われると、茨田が右サイドを走り込んだ酒井に回され、レアンドロ・ドミンゲスめがけてのグラウンダー気味の折り返しを食らう。GK藤ヶ谷が処理するが、ニアをカバーしていた山口がこれもクリアミスしてスルーしてしまったところは非常に気になった。6分には遠藤がFKをバーに当ててG大阪が惜しいチャンスを逃す。点の取り合いになるかと思われた試合は、この後膠着した前半戦となった。20分には柏・橋本のシュートを藤ヶ谷がナイスセーブ。23分にはG大阪が左サイドのゴールライン際からラフィーニャが相手DFに倒されながらも粘って折り返す。イ・グノのシュートはGK正面だったが、この場面で倒れながらも鋭い折り返しを見せたラフィーニャの体の強さは素晴らしかった。30分にはG大阪にビッグチャンス。武井の右からの折り返しをキム・スンヨンがフリーでボールを受けたが左足でのシュートは力なく得点にならない。39分にはレアンドロ・ドミンゲスが橋本のパスにミドルシュートを放つ。両チーム決定機を作るも、あと一歩でゴールがこじ開けられない前半だった。

 
 ジョルジュ・ワグネルを阻む武井。

 
 立ち上がりの山口のミスの多さはG大阪にとって一抹の不安。

 
 
 30分、キム・スンヨンの決定機。
 武井の折り返しをミートできず…

 
 アン・ヨンハッと競り合うイ・グノ。
 イ・グノは前半でベンチに下がることに。

 後半開始と共にG大阪はイ・グノを下げて平井を投入。立ち上がりに柏がレアンドロ・ドミンゲスのシュートで勢いに乗ると、何度も左サイドを起点にG大阪陣内へ攻め込む。ここでリズムを変えるべく、G大阪は53分にキム・スンヨンに代えて大塚をピッチへ。正直なところ、後半に入って明らかに精彩を欠くキム・スンヨンのプレーにベンチの西野監督もおかんむりのリアクション。これは早々に交代があるなと思っていれば、代役は大塚でかなり期待感の持てるカードの切り方だった。51分に攻め上がった下平が左サイドから強烈なシュートで柏ゴールを強襲すると、このクリアボールを拾った遠藤が折り返して、最後は二川の右からのクロスに山口が飛び込んでヘディングシュートを放つ。明らかに大塚の投入で左から下平とリズムを作れるようになってきた後半、ゴールへのイメージはかなり見えてくるものの、なかなか待望の先制点とまではいかない。58分には遠藤のスルーパスに抜け出した平井がGKとの1対1を決められず、スタンドからは大きなため息が漏れる。

 
 58分、このチャンスを平井が決められない。

 
 大塚は最初ミスこそあったが、ミドルシュートでチャンスメイク。

 61分には、下平のフィードに走り込んだラフィーニャがゴールを陥れたが、ここは微妙だったがオフサイドの判定。しかし、徐々にライン裏に効果的なパスが出てくるようになるG大阪。63分には、ショートコーナーからボールを受けた大塚がゴールを狙い澄ましたミドルシュートで牽制。大塚は完全にこれで試合のリズムに入り込み、直後には自身を中心としたダイレクトパスの連続で平井のチャンスを作るなど明らかにプレーの精度が研磨された。69分には、この大塚の右からのクロスを平井がボレーで狙うも枠にはいかない。まるで西野監督のため息がこちらまで聞こえてきそうな展開。試合は、G大阪にしては珍しく0-0という展開も…と頭が過ったが、81分に高木がエリア左で相手DFのクリアボールを拾うと、これをエリア手前で受けた大塚がシュート。なんと柏DFの頭に当たったボールはそのままゴールに吸い込まれた。

 
 
 オウンゴールとも取れるラッキーな先制点は大塚の得点に。
 誰よりも喜びを体で表したのが西野監督だった。

 思いがけない形で先制点を奪ったG大阪は、この直前にアフォンソを投入していた。この大塚の得点が生まれた直後に彼が魅せてくれる。82分、カウンターでドリブル突進するアフォンソに柏・DF近藤が一度は体で競り勝ちボールを奪うも、ゴールライン際でそのボールを強引に奪ったアフォンソは、そのままフリーの平井に折り返す。さすがにこれはシュートを打つだけ。Gkに弾かれながらもボールはゴールへ。一局集中、G大阪が途中出場トリオの活躍で一気に2点のリードを獲得した。

 
 
 
 
 一度はボールを取られたアフォンソがライン際で粘った。
 お見事アフォンソ、ごっつぁん平井。

 結局この2点を守り切ってG大阪が首位決戦を制した。結果的に見事なまでの監督采配。途中出場の大塚、アフォンソは運動量の落ち込む柏を蹂躙する予想以上の活躍を見せた。特にこの2人は今季ほとんどプレーを見たことがなかっただけに、衝撃度もそれ相応。改めてG大阪の選手層の厚さとその質を見せつけた試合になった。しかも今季2度目の完封試合という貴重なおまけ付きだ。また、この日が初見だったラフィーニャに関しても、得点こそなかったが迫力十分。特に中盤まで下がって守備に勤しんだり、最後の最後まで諦めないプレー姿勢がフォアザチームを感じさせる。体幹が強いのか対人面で予想以上にフィジカルが強く、かつこれだけ得点が取れるのだから、下手すれば史上最速で恒例の中東行きを果たすのではないだろうか(冗談として)。それほどまでに良い選手だった。
 柏は、前半こそ首位に立っていた強さを見せたが、カードを仕掛けてくるのが遅かったかもしれない。それでも隙あればシュートを狙うジョルジュ・ワグネル、シュートセンスと速さを見せるレアンドロ・ドミンゲスと実力のある外国人選手が揃っているだけに、失点が増えてきているのが懸念事項かもしれない。久々に見たパク・ドンヒョクとラフィーニャのマッチアップは迫力があった。

 
 古巣相手に見事な采配、西野監督。

 
 中継で見るよりも迫力十分、ラフィーニャ。
 今からあといくつ得点を量産するのか。

 失点は最下位レベルながら、その失点さえも許さず、その強さを見せたG大阪。得意の夏場所は終わりを告げるが、どこまで無敗試合を続けられるか。

厚し、京都の壁 -京都府成年男子vs奈良県成年男子-

2011年08月21日 | 脚で語るその他国内
 「ミニ国体」と称される国民体育大会(国体)への出場権を懸けたサッカー競技・成年の部の近畿ブロック大会が21日に三木防災総合公園陸上競技場で大会2日目の代表決定戦を迎えた。兵庫県を打ち破った奈良が全国優勝5回を誇る強敵・京都と対戦。JFL・佐川印刷の単体チームである京都を相手に最後まで奮闘するが、0-2で敗れ、奈良県成年男子チームのわかとり国体以来26年ぶりの国体出場はならなかった。この結果、京都府成年男子チームが近畿ブロック代表の1チームとして10月に山口でおこなわれる「おいでませ!山口国体」に出場する。また、第2試合で行われた滋賀県成年男子と大阪府成年男子の試合は3-0で大阪府成年男子が勝利。同じく近畿ブロック代表としての本大会出場を決めている。

 

 JFLの壁は厚かった。連戦となるが昨日と変わらないメンバーで臨んだ奈良に対して、京都はGK1大石 DF3高橋、4佐伯、15及川、7金井 MF10吉木、18姜、8大槻、13中野 FW9平井、19桜井という先発メンバー。自分の知る限りでは、今季の佐川印刷のほぼベストメンバーであり、昨季の天皇杯1回戦(@西京極1-3)の対戦時と違って、本気の佐川印刷にリベンジする機会が与えられたということであった。
 しかし、前半からパス、シュート全てのプレーで正確な京都に対して、奈良は相手のプレスの速さの前になかなかボールを相手陣内深くまで運ぶことができない。相手に取られると、アーリークロスを放り込んで手っ取り早く点を取ろうという京都の速攻を食らうことになった。特に左の姜、前線で長身を活かす桜井の2人は昨季までJ2・カターレ富山で活躍していたコンビ。18分にはその姜のアーリークロスを桜井に綺麗に頭で合わされて先制点を許してしまった。

 
 相手陣内へ攻め込んでも、このようにエリアを切られる。
 なかなか中央の深いところまでボールを持って行けず。

 
 京都のFW桜井は速さと高さを兼ね備えた選手。
 柏ユース出身で昨季まで富山でプレー。

 前半は、ほとんどシュートチャンスも与えてもらえないような劣勢ぶりで、0-0で折り返したかったところだが、1点のビハインドで終了。特に前線の檜山や牧がボールに絡めなかったのはシュートまで持ち込めない要因として大きかったが、何よりも相手の覇気に押されている感じだった。

 
 ボールキープに優れる李も厳しいマークに遭う。

 
 京都・FW平井のプレスをかわすDF橋垣戸。
 奈良は最終ラインでボールを回す時間が多くなった。

 後半、昨日のような盛り返しを。と期待を抱いて臨む。41分に京都・FW平井がこの日2枚目の警告で退場処分となり、奈良は数的優位に立つことになった。いつもの後半からのギアの入れ方なら何とかなるかも…と思わせてくれる展開。確かにその平井の退場から徐々に攻勢に転じられるようになった。47分に京都は、FWの桜井に代えて、同じくFWの中筋を投入。フレッシュな選手を入れて数的不利を顧みず、とどめの追加点を狙いに来た。53分には、奈良も黒田に代えて、昨日劇的な同点弾を決めた嶋をピッチへ送り出す。なんとか昨日の再現を見せてくれれば、まだまだチャンスは見出せると思っていた。
 ところが、京都の守備陣は無理をせず、しっかり引いて奈良の攻撃陣を封じる。それどころか、前がかりになって中盤と守備ラインのスペースを突いてこられる場面すら目立ってしまった。67分には途中出場の京都・MF葛島に左サイドを突破され、折り返されたところを大槻に頭で追加点となる得点を決められた。人数が1人少なくても「佐川印刷」の強さを見せつけられる。結果、惜しい場面は作るものの、最後まで1点が奪えず0-2でミニ国体のチャレンジを終えることになった。

 
 本職でない左サイドバックで奮闘した谷山。
 機を見てよく攻め上がった。

 
 矢部も的確なロングパスで前半から奮闘。
 嶋の投入後は右サイドバックに。

 
 後半は最後まで京都ゴールに迫るが、1点は奪えず…

 昨年の1回戦敗退から比べると、結果を見れば1歩前進した感もある。しかし、まだこのJFLのカテゴリーとの差は歴然。攻守両面全ての面で後れを取った試合だった。全社出場を逃しているために、今季の全国大会への出場の道はこれで閉ざされた。この経験を深く胸に刻み込んで、来季同じカテゴリーでリベンジのチャンスを得られるようにしていかなければならない。リーグ戦が終わってからは、極端に実戦の機会が少なくなるために、難しい秋を迎えそうだが、来週末の天皇杯予選決勝、そして残りのリーグ戦にまずは邁進。切り替えて臨んで欲しい。
 一方の京都は、貫禄の安定感があった。特に印象に残ったのは、70分間(35分ハーフ)絶えずほとんどの選手が声を出し続けていたということ。どこにそんな元気が残っているんだ?と思わせるほど、彼らによる互いのコーチング、互いの鼓舞のためはラガラのスタジアムに響き続けた。またもや立ちはだかった「佐川印刷の壁」。しかし、学ぶところは多い。京都府選抜の本大会での健闘を祈願したい。

 
 リーグ戦へ切り替え。
 得点こそなかったが檜山のチャンスメイクは冴えていた。

 
 ルーキーの辻村隆にとっては大きな経験のはず。
 残りのリーグ戦、天皇杯予選でも期待。

強敵・京都への挑戦権獲得 -兵庫県成年男子vs奈良県成年男子-

2011年08月20日 | 脚で語るその他国内
 「ミニ国体」と称される国民体育大会(国体)への出場権を懸けたサッカー競技・成年の部の近畿ブロック大会が20日に三木防災総合公園陸上競技場で開幕。第1試合では兵庫県選抜と奈良県選抜が対戦。試合は兵庫が2点を先行する試合だったが、後半に奈良が1点を返すと、アディショナルタイムに追いつき延長戦へ。延長戦では決着がつかず、PK戦の末に奈良が4-3で勝利した。GK日野は4人目、5人目をストップする大活躍を見せた。

 

 都道府県リーグ、地域リーグカテゴリーの社会人チームからそのメンバーが選出されることが多い国体選抜成年男子チーム。兵庫県は、三洋電機洲本(関西1部)の選手たちに加えて、バンディオンセ加古川(関西1部)から平田、小山、松上の3人、そして姫路獨協大学サッカー部(関西学生1部)からアルビレックス新潟・シンガポールでもプレー経験のある河野(4年)が選出されて構成されていた。先発メンバーはGK1松浦 DF3太田、4平田、5森田、6村上、16友定 MF7沈、13稲垣、17小山、FW11河野、14梅川という面々となった。
 対する奈良県は、昨年に続いて奈良クラブ(関西1部)のメンバーで全員が構成。吉田と辻村剛は他府県での2年以内に他府県で選抜されていたため、規約上登録外となったが、GK1日野 DF15黒田、6橋垣戸、18眞野、20谷山 MF16矢部、4三本菅、10李、14辻村隆 FW7牧、19檜山という先発メンバーでほぼリーグ戦でのメンバーが基盤。左サイドバックに本職でない谷山が入ったが、この点に関しては事前の練習試合でも調整済みだ。日頃とユニフォームこそ違えど、奈良クラブのサッカーを完遂すれば自ずと勝利はついてくるはず。

 ところが、前半から乗れないのがこのチームの悪癖。序盤こそ檜山が何度かゴール前でシュートチャンスを得るが先制点には繋がらない。次第に兵庫が村上のゲームメイクを軸に、サイドから友定、稲垣といった選手がスピードある攻撃を仕掛け、試合のペースを握るようになった。27分には、その稲垣のクロスから関西リーグ2年連続得点王の梅川がヘッド、その1分後にも再び梅川がヘッドで奈良ゴールを脅かすものの、奈良・GK日野がファインセーブでこれを許さない。しかしながら、完全にサイドからやられっぱなしで、ボールの取られ方も悪く、奈良がリズムを奪われるのも当然の展開だった。

 
 
 兵庫は稲垣のサイドからの攻撃で奈良ゴールを脅かす。

 
 村上が展開を作るのは三洋洲本と同じパターン。

 
 
 27分の梅川のヘッドの場面。ここは日野が止めた。

 嫌な流れははっきりと形として現れた。前半終了間際の35分(35分ハーフ)にCKから平田が頭で決められて兵庫に先制点を許してしまう。1点のビハインドぐらいならば、幾度かリーグ戦でも跳ね返して来たが、この試合の前半の出来は予想以上に悪く、どうも不安感は拭えなかった。

 
 
 前半終了間際にCKからゴールを破られた。
 完全にフリーを許した。

 後半からいつものようにギアを上げて攻勢に出る奈良。39分には李がワンフェイントでDFを抜いてシュートを放つが大きくバーの上。41分には、矢部が絶好の位置からFKを狙うがこれも枠を捉えられない。43分には、李のパスを受けた檜山が絶妙なシュートを見せるものの、わずかにゴール左に逸れる。44分には三本菅のヘッドがバーの上に逸れてしまい、45分、46分には牧が決定的なシュートチャンスを決められない。このように「決める時に決められない」場面が多発すれば、より劣勢に立たされるのは当然。48分には何でもない相手の突破からクロスを放り込まれ、これを河野に頭で決められる。

 
 再三、兵庫ゴールに詰め寄るも1点が遠い。

 
 
 追加点は姫獨大の河野に頭で決められた。
 関西学生リーグでも異色のキャリアを持つ元社会人プレーヤー。

 0-2という状況。さすがに7月の全社関西大会での敗戦が頭を過る。なぜ、いつも通りの力が出せないのか…50分にはDF黒田に代えてFW嶋を投入し、攻撃の枚数を増やしにかかる奈良。対する兵庫も運動量の減少を保つためにボールのキープできる井上を投入する。58分には途中交代の嶋が絶妙な飛び出しで、檜山のループパスにGKと1対1の場面でシュートを見舞うが決められない。59分には辻村隆がドリブルからミドルシュートを狙うもののボールはゴール左へと転がっていく。
 しかし、チームは0-2というスコアを甘んじて受け入れてはいなかった。64分に牧がエリア内へ持ち込んで冷静にシュートを決める。これで1点差。何かこの瞬間沸き立つものがピッチから伝わってきた。

 
 
 
 関西リーグ得点ランクトップのこの男が意地を見せる。
 牧のシュートで1点差に。

 徐々に雨が強くなってきた試合終盤。兵庫は引き気味に逃げ切りを図り、奈良は1秒でも前にボールを進めたい。必死の攻防戦が続く。67分には李のシュートを兵庫のDFがゴールライン上でかろうじてクリアするなど極限の戦い。アディショナルタイムに差し掛かった頃、新たにアタッカーの蜂須賀を投入した奈良は、遂に兵庫の集中力が一瞬切れたところで右から走り込んだ嶋が豪快にシュートを突き刺して遂に同点とした。

 
 
 GKともつれながら李がシュート。
 これを相手DFがライン上でギリギリのクリア。

 
 
 アディショナルタイムは3分。
 その2分に嶋が強烈なシュートを決めてくれる。

 
 試合は延長戦(10分ハーフ)に突入。
 全員で勝利を目指す。

 延長戦もペースを落とさず、押せ押せの展開を見せる奈良。76分には李のパスを受けた矢部がエリア左からシュート。これはGKに阻まれたが、78分にも同じような形からゴールを肉薄。80分には、嶋の折り返しに牧が飛び込んでヘディングシュートを放つがここもGKにセーブされる。

 
 牧の決定的だったこのヘッド。惜しかった。

 延長戦の20分では決着がつかず、試合はPK戦へ。こうなれば、確信はないが勝利はグッと近づいた気がした。何せGK日野は今季の公式戦、練習試合問わず、ゴールを許したPKは1本(関西リーグ第11節アイン戦)のみ。何かしら活躍をしてくれるだろうという予感はあった。すると、案の定、奈良が4人目まで全員決めたのに対して、兵庫の4人目、5人目を立て続けに日野がストップ。奈良がPK戦を4-3で制した。

 
 
 
 
 恐るべし、PKストッパー日野の実力。
 この勝負強さは何物にも代え難い。

 息をもつかせぬスリリングな試合だった。あまりに心臓に悪い展開。しかし、その分勝利の味は格別だ。厳しく指摘すれば、後半の決定機をきちんとどこかで決めていればもう少し楽に試合をひっくり返せていただろう。どうにもこうにも試合の2/3ほどを消化したところで本領発揮というペース配分はそろそろ遠慮願いたいものだ。連戦は厳しいが、全社を経験できない分、この国体にはこだわっていきたい。
 奈良はすぐに明日21日に行われる代表決定戦に挑む。相手は京都府成年男子。例年JFLの佐川印刷の選手たちで構成され、これまでに国体サッカー競技・成年の部では5度の優勝を誇る全国屈指の強豪だ。しかし、今回PK戦まで体験できたのは、年末の地域決勝を考えれば良いシミュレーションになったはず。来季目指すべきはJFL。佐川印刷と互角以上に渡り合って、山口国体出場を目指したい。

 14:00から行われた第2試合では、和歌山と滋賀が対戦。TOJITSU滋賀FC(関西1部)を構成メンバーの大半とする滋賀が、上田のロングシュートで先制点を奪い1点を前半から先行する。一方のアルテリーヴォ和歌山(関西2部)の選手たちを主体にした和歌山は、エースの上赤坂を含めた3選手を後半開始から起用し、後半は果敢に攻め立てたが、GK内野を中心に和歌山に同点ゴールを与えなかった滋賀がそのまま1-0で逃げ切った。滋賀県成年男子チームは、明日21日の14:00からシードの大阪府成年男子チームと対戦する。

いざ、目指せ山口国体

2011年08月18日 | 脚で語る奈良クラブ
 今季、関西リーグDiv1を首位で独走する奈良クラブ。彼らが目指すべきコンペティションはこのリーグ戦、そして全社、天皇杯、リーグカップと大きく4つに分けられるが、奈良クラブにとってもう一つ重要なミッションがこの週末に近づいている。
 それは、奈良クラブが単体で奈良県選抜の成年チームとして出場する第66回国民体育大会近畿ブロック大会、つまり国体予選だ。

 
 国体へ向け、今週は2試合の練習試合を敢行。
 16日には中央学院大と対戦した(4-1で勝利)。

 今年の国体は、昨年の全社が行われた山口(全社は国体のリハーサル大会として催行されている)で行われる。昨年も今年と同じように全社予選の初戦で敗退した奈良クラブにとっては、もう一度山口を目指す戦いが待っているという訳だ。近畿2府4県による2チームの代表を決める近畿ブロック大会(通称:ミニ国体)でその挑戦権は決められる。

 
 ベテラン勢の経験は大きなチームの原動力。
 三本菅の存在は大きい。

 全社出場という貴重な全国大会における腕試しの機会を2年連続で逸している奈良クラブにとっては、このチャンスを大事にしたい。何せ今年はこのままリーグ優勝すれば、全国地域リーグ決勝大会が待っている。是が非でも全社に出ておきたかったことを考えれば、国体をその地域決勝へのデモンストレーションにしたいところ。もちろん、各都道府県の選抜チーム構成はまちまち。奈良県や京都府(佐川印刷が例年単体で挑む)などクラブチーム、企業チームが単体で臨むところもあれば、各社会人、大学チームなどから選抜してチームを送り出すところもある。レベルは全社に劣る部分もあるだろう。しかし、この全国大会の機会に挑んでいきたい。

 
 今季、関西リーグでは得点ランク単独トップの牧。
 いざ、全国の舞台へ。

 しかし、奈良県選抜成年チームに関しては、1985年のわかとり国体(鳥取県開催)以来、国体への出場を果たせていない。代表2チームを選出するこの近畿ブロック予選が非常に難関でもある。今年も初戦は兵庫県(20日11:00キックオフ@三木防災)、そしてその1回戦を突破すれば次戦はシードの京都府との対戦(21日11:00キックオフ@三木防災)が待っている。京都府は2008年の第63回大会でも優勝し、これまでの成年の部で5度の優勝を数える全国屈指の強豪で、言わずもがな優勝候補の最右翼だ。ここで京都府と対戦できることになれば、昨年の天皇杯1回戦で敗北した佐川印刷へのリベンジということにもなる。21日の代表決定戦へ何とか駒を進み、金星を狙うしかない。

 
 若きチームの司令塔は辻村隆。
 出れない兄の分まで頑張って欲しい。

 そんな今大会には登録上の規約で、2年以内に他都道府県で国体にエントリーしていた吉田(福島)、辻村剛(大阪)がこの奈良県選抜の一員として出場できない。リーグ戦で戦っているベストメンバーが組めないのは痛いところだが、なんとか乗り切りたい。初戦で対戦する兵庫県選抜は、三洋電機洲本のメンバーを主体にバンディオンセ加古川の選手が3人ほど加わるという構成だ。京都府への挑戦権をもぎ取るためにも負けられない。昨年は大阪府を相手に1回戦負けを喫してしまった。今年は是非とも国体出場を叶えたい。

 
 奈良県を代表して選抜チームとして国体へ。
 日頃以上の心意気で臨みたい。

魅惑のカルテット -京都vs北九州‐

2011年08月16日 | 脚で語るJリーグ
 J2は第24節を迎え、京都・西京極ではホームの16位・京都が今季好調の5位・北九州を迎えて対戦。3連勝と波に乗る北九州を京都が伊藤の得点で1-0を破り、今季6勝目を挙げ、14位へと順位を上げた。

 

 18時キックオフということもあり、まだまだ暑い京都。しかし、昼間に奈良でデイゲームの天皇杯県予選を終え、直行した形ではあったが、13分ほど遅れてスタジアムに駆け込むと、先制点が決まったまさにその瞬間であった。その先制点は京都の若手注目株・伊藤。前回の鳥取戦を観戦した際に、この伊藤を含めた宮吉、駒井、久保のU-18出身組が面白いことは十分実感しただけに、やはりこの試合でも注目は彼らカルテットの存在だった。

 直近5試合で1敗しかしていないものの、前節の東京V戦を含め勝ち切れない試合も見られる京都。しかし、この試合では3連勝中の北九州を相手に積極的に攻め込んだ。京都は前節からドゥトラをベンチスタートにし、宮吉と久保、伊藤のトリオで3トップを形成。この3人がスピードを活かして勢いある攻撃を披露。特に久保は高校3年生とは思えない思い切りの良さで守備の固い北九州を再三破る。13分の先制点も久保のミドルシュートを北九州GK佐藤が弾いたところに伊藤が詰めるという形だった。

 
 2種登録ながら久保の存在感は圧巻。
 今季ここまで5得点でチーム得点王。

 
 京都は宮吉が先発出場。
 意外なことに彼は今季まだゴールがない。

 
 右サイドはおまかせ、スピードある駒井。

 この順位が嘘かと思わせてくれるような京都の攻勢に、北九州は苦戦。点差はわずか1点差だが、前節ポカスタで見たような速攻で脅威を感じさせるものの、ゴールを割れない。それよりも京都の若手選手に守備陣が振り切られる場面が多く、特に京都の伊藤、久保をマッチアップに回す両サイドはかなり苦戦を強いられていたように思う。これに起因して前半からエリア近くからの京都のFKのチャンスが多かった。22分にはエリア右サイドからのチョン・ウヨンのFKにファーで宮吉が合わせるが、惜しくもゴールラインを割るかというギリギリのところで北九州DFのクリアに遭う。直後には宮吉のクロスを安藤がヘッドでゴールを肉薄するなど、チャンスメイクは試合を先行する京都の方に分があった。33分には、再びチョン・ウヨンのFKが相手DFのクリアミスも誘ってバーを叩く。39分には宮吉と久保のワンツーから突破した後、北九州守備陣が狭いところでクリアミスしたボールを拾って伊藤が抜け出し、GKをかわしてゴールを狙うも、シュートはポストに嫌われるなど、京都は幾度となく追加点のチャンスを作り続けた。対して北九州はほとんどシュートを打てないまま前半を折り返すこととなった。

 
 正確なプレスキッカー、京都のチョン・ウヨン。

 
 前節の徳島戦でも光っていた北九州のDF宮本。
 この日は全体的に守備陣が鈍重だった。

 後半に入って、北九州もレオナルドを開始から投入。安田、木村を介して攻勢に転じるが、GK水谷を中心に集中した守備を見せる京都を崩せない。下手にボールを奪われると、駒井、伊藤のスピードある攻撃で反撃を食らう。京都の運動量が落ちてきたところを攻め込んだが、最後の最後までゴールを陥れることはできなかった。

 
 先制点を含めて、何度もチャンスを作った伊藤。
 今Jで、最注目すべき若手かもしれない。

 
 北九州は後半開始からレオナルドを投入。
 何度もサイドの深い位置へ攻め込んだが、1点が遠い。

 
 水谷の再三のセーブで後半逃げ切った京都。

 前回観戦した鳥取戦も1-0で勝利している京都。冒頭にも書いたように、たった2試合しか観ていないが、この2試合だけでも14位という順位が嘘のよう。もう駒井、伊藤、宮吉、久保の4人を見るだけでも価値を見出せる攻撃面での面白さがある。この試合、一体何度伊藤にゴールのチャンスがあったことか。負け試合を見れば印象は変わるのかもしれないが、ここまで元気の良い下部組織上がりの選手たちは他にいない気がする。今季はスタートダッシュに失敗した京都だったが、伊藤や久保が活躍してから明らかに結果がついてくるようになった。開幕前の改革はじわじわ結果を導いているのではないだろうか。
 対する北九州は、1点が最後まで遠く、4連勝のチャンスを逃してしまった。直近10試合で6勝を挙げているものの相手をゼロに抑えて1点差、2点差で逃げ切る試合が多いだけに、ビハインドを負った際にいかに試合をひっくり返せるかが課題なのかもしれない。守備陣が再三サイドを取られていたのが気になったが、今季先制されてからの逆転勝利が富山戦しかないことを考えれば、守備陣が踏ん張れずに失点を喫した際にもう少し計算できる得点力が欲しいかもしれない。

 
 北九州の俊足エース・池元。
 ここまで6得点、今後に期待。

 
 京都は今後楽しみなチーム。
 残り18試合でどこまで勝ち星を積み上げられるか。

3年連続の天皇杯へ王手 -vs天理大‐

2011年08月15日 | 脚で語る奈良クラブ
 天皇杯全日本サッカー選手権大会の奈良県代表としての出場権をかけた天皇杯奈良県予選は準決勝を迎え、社会人代表の奈良クラブ(関西1部)が天理大(関西学生2部)を3-0で下して決勝戦進出を決めた。決勝戦は28日に奈産大を相手に橿原公苑陸上競技場で行われる。

 

 全社関西大会の初戦敗退から3週間ぶりとなる公式戦。この間奈良クラブは1試合も練習試合すら組まずにやってきた。シーズン開幕前から隙間なく続く練習試合とリーグ戦の数々、毎週末にコンスタントに試合があったことを考えれば少し休暇にはなったかもしれない。しかしながら、この過密日程だからこそプレッシャーが上手く作用し、チームの団結力や集中力が持続できているのでは、ということも頭の片隅にあり、久々の試合に選手たちの試合勘が心配になっていたりもした。このインターバルのトレーニングでチームが更にリファインされているのか、それとも苦戦を強いられるのか。どうしても直近の全社関西大会での敗戦が脳裏を過る。

 試合に臨んだのは現状でのベストメンバー。守護神・日野を最後尾に左右のサイドバックに吉田、黒田が入り、中央を眞野と橋垣戸が固め、中盤では三本菅と李のセントラル2人に、左の辻村剛と右の辻村隆、そして絶好調の牧と檜山の2トップ。試合は運動量で勢いのあるであろう天理大が序盤からアグレッシブに来るかと思われたが、前半から奈良クラブのペース。ミスこそ多かったが、パスを繋いで再三天理大陣内へ攻め込む。なかなかフィニッシュが枠内にいかないが故に先制点が取れないのはジリジリさせられたが、42分に檜山が李からの浮き球のパスをヒールで流し込んで先制すると、後半からはリズムが生まれた。
 後半に入って、天理大も一層中盤のプレスに今一度注力してくるが、今季ここまでの戦いぶりを見ていると、奈良クラブは完全に「後半から」のチーム。徐々にパスワークが噛み合い、左サイドの吉田、辻村剛、右サイドの辻村隆の突破を有効活用して押し続けた。何度も決定機を潰し続けて追加点の遠い後半戦だったのは誰の目にも明らかだったが、橋垣戸が治療のためピッチを離れていた69分、天理大に食らったカウンターからの決定機(これは一番ヒヤリとした…)を何とか凌ぐと、82分に辻村剛とのワンツーで突破した辻村隆のパスを受けた牧が流し込んで追加点。87分には、途中出場の嶋がエリア右付近からシュートを決めて3-0と試合を決めた。

 この3点目の嶋の今季初得点は感慨深い。チームスタート時から在籍するきっての古参選手になってしまった彼だが、仕事柄、平日午前のトレーニングになかなか参加できないながらもチームに尽力してくれている。昨季はリーグ戦で5得点を記録して得点ランキングでも5位タイに名を連ねた。かつてはJクラブの練習生経験もある実力派。吉田監督下の今季はラスト10分程度での途中投入が多いが、その持ち前のスピードとシュート力は間違いなくチームの大きな力。その嶋が今季初得点を決めてくれたのは嬉しかった。

 これで、3年連続の県代表獲得まであと1勝となった。久々の90分間の試合ともあって、守備面では不安定なところもあったが、無失点で切り抜けてほっと一息といったところ。ある程度理想のサッカーを体現できていたのではないだろうか。ここからは再び連戦の日々が訪れる。昨年に続き、奈良県国体選抜の成年チームとして20日から行われるミニ国体(国体近畿ブロック予選)に臨まなければならない。今週は2度の練習試合が組まれており、どこまでチームが仕上がって結果が残せるか。国体出場を決めて、天皇杯県予選の決勝へと繋げたい。
 決勝戦の相手はこの日の第1試合で高田を破った奈産大。毎年のように天皇杯予選では顔を合わせるが、決勝戦では2年ぶりの対峙となる。2年前は1-0で彼らを何とか退けて初の天皇杯出場を決めることができた。これまで何度も奈良県代表として天皇杯出場を果たしてきた県内の強豪サッカー部。3連敗だけは避けるべく必死で戦ってくるに違いない。激しい決勝戦になりそうだが、8月最後の日曜、この夏最も充実した一戦になるかもしれない。3年連続で天皇杯出場を勝ち取ろう。