歌わない時間

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ピノック『パーセル/ディドーとエネアス, アーサー王』

2008年05月08日 | CD パーセル
Purcell
Dido and Aeneas / King Arthur
von Otter, Dawson, Varcoe, Rogers, Priday, Hall, Leonard, Amps (Dido)
Argenta, Perillo, Gooding, MacDougall, Tucker, Bannatyne-Scott, Finley (Arthur)
Choir of The English Concert
The English Concert
Trevor Pinnock
474 672-2

『ディドー』1988年、『アーサー王』1991年録音。73分53秒/73分19秒。Archiv。もちろん最初はべつべつにリリースされたものですけど、わたしの持ってるピノックのパーセル5枚組BOXでは、この2曲がCD2枚に収まっています。『ディドー』も『アーサー王』もよい出来で、最初に聴く録音として広く勧められる。2CDにこの2曲の組み合せというのは実にぜいたくで聴きごたえ満点です。この2枚組だけでも邦訳つけて国内盤出せばそこそこ売れると思うけどなあ。現在国内盤では『ディドー』のみ、生きています。

『ディドー』はピノックらしくていねいな作り込みようで、演奏者たちもピノックの意図を汲んでしっかり歌えているので、充実した仕上がりになってます。フォンオッターのディドー、ドーソンのベリンダ、それに魔法使いと水夫のロジャーズがすばらしい。フォンオッターは、オペラの女の役を歌うには色気が足りないといつも思うんですが、このディドーっていうのは女王ではあるけれどよけいな色気は要らなくて、毅然とした気品があればいける役なので、フォンオッターの柄によくあっていていいです。魔法使いにベテラン・テナーのロジャーズを起用したのはだれの思いつきか分かりませんけどこれは大成功。あぶらっこい魔法使いを巧く歌い出しています。ピノックは、ほかの指揮者がたいていやるような補作をせずに、いま残っているパーセル協会版の楽譜をそのまま演奏しています。楽譜を見ながら聴くと、第2幕の森の場面がエネアスのアリアで突然終わって第3幕の水夫のアリアにそのまま移るのはたしかにちょっと収まりが悪い感じで、本来はエネアスのアリアの後、合唱なり後奏の合奏曲があってしかるべきです。でもふしぎなことに音だけ聴いているとそれほどの違和感もないんですよねえ。

『アーサー王』もしっかり聴きごたえのある演奏で、ピノックの気合いもじゅうぶんです。『ダイオクリージャン』のときにはちょっと歌いすぎてると感じたけれど、『アーサー王』の場合はピノックの歌わせかたでちょうどいい。聴いているうちにこっちもなんだか高揚してきます。アージェンタ以下のソリストたちの歌いっぷりもいいです。"Come if you dare"のテナー・ソロはジェイミー・マクドゥガルで、ガーディナー盤で歌うポール・エリオットの美声にはおよばないけれど勇ましさはしっかり出ています。アージェンタは"For love ev'ry creature"の高音をソツなくこなすし、"Fairest Isle"もまかされて、あどけなさの残る声で好唱。その"Fairest Isle"の前のどんちゃん騒ぎの男たちも、ガーディナー盤に負けず劣らずいい感じでハメを外してくれます。最後の"Saint George"はパーセル協会版どおりの長いソロで、ジュリア・グッディングが的確なテクニックで歌いきる。合唱はよく歌いこまれていて不安定なところは全然ありません。

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