歌わない時間

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ヒコックス『パーセル_ダイオクリージャン』

2010年07月03日 | CD パーセル
Purcell
Dioclesian & Timon of Athens
Pierard, Bowman, Ainsley, George
Collegium Musicum 90
Richard Hickox
CHAN 0569/70

1993,94年録音。46分18秒/65分34秒。CHANDOS/Chaconne。この『ダイオクリージャン』は思いのほかよいですよ。ピノック盤のような歌いすぎてる感じもなく、かといって物足りなさも感じさせず、ほどのよい爽やかさと活きのよさでパーセルの音楽の魅力が横溢している。パーセルのツボをしっかり押さえた満足度の高い演奏を聴かせてくれます。ヒコックスのパーセルはこのほかに『ディドー』があるくらいですが、もっと録音してほしかった。

ケースにはソリストが4人しか書いてないけど、4人以外にも何人か出てきます。テナーではマーク・パドモアとイアン・ボストリッジがチョイ役で歌ってます。Act Vの〈Oh, The Sweet Delights Of Love!〉は、ガーディナーやピノックのではソプラノの二重唱ですが、ここではエインズリーとボストリッジで歌ってます。あらまあこんな地味なところで豪華共演。

おもなソリスト4人の中ではエインズリーの出番が多く、またその歌もすぐれています。このころ、エインズリーはしだいに声が太く暗くなりつつあった時期だと思いますが、ここではうまく声をコントロールして、パーセルから逸脱せずにさらりとまとめている。ソプラノのCatherine Pierardという人は地味ですが、致命的な傷にはなっていない。また『アセンズのタイモン』では成人ソプラノではなくてboySを2人つかっていますが、これは感心しませんね。歌えてないんだもん。boySをつかうという発想そのものは悪くないけどね。もっと歌える男の子がいるはずなんだけどね。まあ『アセンズのタイモン』はおまけみたいなもんだから、これは我慢するかなあ。

CD1はAct IVまでにして、CD2にAct Vのマスクと補遺のエア2曲、それに『アセンズのタイモン』の音楽を収めている。これも好ましい。ガーディナーのもピノックのも、既出盤は幕の途中でCDを入れ替えないといけなかった。厳密に筋を追う音楽ではないわけだけれど、CDを入れ替える一手間で音楽の流れを断ち切られるのはあまり気分のいいものではない。ただ『ダイオクリージャン』補遺の2曲は、ガーディナーやピノックのように全曲のしかるべきところに組み込んでくれたほうがよい。

『ダイオクリージャン』の演奏に関しては、ガーディナー、ピノックの2種よりも総合点で上を行きます。歌手の出来に不満を感じさせるところがまったくない。ただ、ソプラノが1人しか出てこないので地味なのと、『アセンズのタイモン』のboySが未熟なのをどう評価するか。

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