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アートネタなど日々のあれこれ

輝く日の宮

2019-11-05 19:01:04 | 
丸谷才一「輝く日の宮」を読みました。

以前、米原万里さんがエッセーで絶賛していたのを読んで買ったのですが、その後、積んどく状態のまま長い年月が経過しました。いや、正確に言うと、最初の方で挫折していたのですが、ふと小説らしい小説をひさびさに読んでみたくなり・・・(以下、ネタバレ気味です)。

さすがに本読みの米原さんが絶賛されていただけのことはあり、“ザ・小説”という感じの読み応えのある作品でした。かなり実験的な作品でもあります。独特の旧仮名遣いの文体で前半は読み進めるのがちょっとしんどかったのですが・・・私がもっと国文学に造詣が深ければよかったのですが・・・とはいえ、松尾芭蕉はなぜ東北に行ったかの推論とか、興味深かったです。そして、後半、源氏物語の話になってからは、けっこう夢中になって読んでしまいました。不肖わたくし、源氏に関しては「あさきゆめみし」は熟読、田辺訳と村山訳は一通り読み、円地訳と谷崎訳は途中で挫折・・・という程度でしかないのですが、それでも十分楽しめました。源氏の冒頭「桐壺」と「帚木」の間に「輝く日の宮」という章があったのかなかったのか、あったとすれば何故失われたのかを、女性国文学者の杉安佐子が解き明かしていくという話なのですが、半ばミステリーのような趣もありました。源氏の成立過程、引き算の美学といった話についても語られていました。後世の人々に議論の余地を残しておくのが名作、という言葉に思わずうむむ、と唸ってしまいました。紫式部と藤原道長の関係についても考察というか想像というかが加えられています。ストーリーでは、杉安佐子は行きがかり上、「輝く日の宮」の再現に挑むことになるのですが、その結果はいかに・・・。

そんなわけでひさびさに充実した読書体験でした。源氏物語の奥深さについてもあらためて眼を開かされました。いつの日か、時間ができたら挫折した円地訳や谷崎訳にも再挑戦してみたいものです。いったいいつのことになるのでしょう・・・。
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