企業・組織再生現場からの独り言

仕事の中で、覚えていったこと。感じたことなどなどを記していきます。我以外皆我師也。あと、読んでいる本を簡単に紹介。

呉服小売の適正規模とは・・・

2006年09月05日 | 和の話(呉服業界など)
特に、たけうち関係記事へのアクセスが集中している。それだけ、関係している人が多いということなのか。愛染蔵の場合は、店舗数が限られていたため、従業員にネット世代が少なかったのだろうか。たけうちの場合は、店舗に若い従業員の方もたくさんおられた。今回解雇された5300人以外にも、一度は籍をおいた人が、それこそ多数おられることと思う。そうした方々も含めて、かなり多くの人にお越しいただいているのだろう。
残念ながら、メディアに出ている内容以上には私も知るところがない。ずいぶん昔に、店頭できものの紐を買った程度。紐を買うだけなのに、名前と電話番号を取られるとは・・と思ったものだ。案の定電話がかかってきて催事の案内だった。
その時は、稚拙な営業だなぁ、と思ったよ。日々、コンタクトを取りながら、催事へ案内するならばわかるのだが、催事の直前になって名簿をめくってとにかく電話する、というやり方ではうまく行くわけがないと思う。お客様に嫌がられない程度に、健康を伺ったり、来店を促したりするような電話を積み重ね、また面会を積み重ねて、呉服催事(店頭含む)を紹介していく。それは、たけうちであろうと、なかろうと、呉服という高級でかつ、圧倒的なブランドが少なく、よく知らないような商品がたくさんある市場では、顧客との関係作りが重要となるのは当然だからだ。
小売店の呉服の原価が5割とか3割とか言われているが、それだけを持って儲けすぎ、というのは商売を知らない人なんだろう。薄利多売の激安スーパーで2割弱。普通のスーパーで25%程度。コンビニでも2-3割の荒利は稼いでいる。商品によっては、4-5割は当然である。それだけ在庫が回転するからこそ、荒利が低くてもなんとかやっていけるわけだ。
食品サービス業なんかの場合は、原価率が2-3割は当然なんだけれどね。それを持ってだれもおかしいと言わないのに呉服だとおかしい、という人が多いのは。。。やはり金額が高いからだろうか?

よく言われるのは、メーカー、作家が作ったときは、問屋に数千円でおさめたのに・・それが小売店では数万円になっているという話し。それが嫌なら、問屋を抜けばいい。でも、全国にある呉服店への物流コスト、そして与信リスクは誰がとる?自分で取れないわけだ。大島の産地から北海道の小売店に直接、1反売りに行って、手形でもらって、その小売店が倒れたら・・・なにもしようがない。
皆が飲んでいる缶ジュースだって、原価ってどれくらいかすぐに理解できそうなものだろう。国産果汁100%とかの一部の商品を除き、内容物の原価は安いものだ。そこに問屋が入り、物流があり、店頭にならべてもらってはじめて買うことができる。

呉服に限った話ではなくて、今の日本では、そうした中間流通が果たしている機能は相変わらず大きい。中抜ができるのは、小売とメーカーのどちらか、もしくは両方がある規模以上になってから、と言える。(単発で中抜はいくらでもできるが、構造的にそれを実施しようとすると規模が必要。もしくは始めからSPAを意識した事業モデル作りが前提になる)
零細メーカーと零細呉服店が多い現状では、やはり問屋の存在は重要なんだろう。ということは、価格は下がらない。そして価格が下がらないのが当たり前に思うからこそ、少しでも安く仕入れられる立場にある企業が、高い荒利をもって、他店舗展開をどんどん進めていくのだろう。
もともとが、固定費が非常に高いビジネスであること、また呉服自体は決して必需品でもないことから考えると、事業規模自体は、それほど大きくはできないものだろう。無理に大きくすると、売上のプレッシャーが強くなり、長続きしない。
急成長している呉服小売は、そういうところを気をつけなければならない。(たいてい、そういう企業のトップは自信家だから、言うことを聞かないけれどね)
問屋は別として、小売店は、会社の内部留保とオーナーの資産とをあわせて、たとえば6か月くらいは売上がなくても維持できるくらいの資金余力が欲しいのかも。
資金繰りに苦労するようでは、問屋にも相手にされないし、まぁ、持たない。それくらい波のあるビジネスだと思う。
それだけのリスクを負った呉服店に対して・・・、さて、荒利5割が高いのかどうか。たけうち批判も大いに結構だが、普通の呉服店もいっしょにして儲けすぎというのはどうか、と思い、長々記してしまった。
コメント (1)
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