あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

風の市兵衛 秋しぐれ を読んで

2015-10-24 13:17:30 | 日記
風の市兵衛シリーズ 16巻 秋しぐれ  辻堂 魁 作  祥伝社文庫

旗本の抱えた借金の交渉役を引き受けた算盤侍の唐木市兵衛。
その仕事を通して、廃業した元関脇の鬼一とその娘お秀と出会います。

鬼一は、離れて暮らしている妻と娘に会いに、15年ぶりに江戸に戻ってきたのです。
土俵の鬼として江戸中の人気を集め、大関昇進を控えた鬼一がなぜ廃業し江戸を離れ
ざるを得なかったのか、そのいきさつは物語の展開とともに明らかになります。
江戸で娘と再会した鬼一は、不遇のうちに母と妻が亡くなり、薬代の借金がかさみ
水茶屋で働くことになった娘の境遇を知ります。その上娘は身ごもっていたのです。
15年の時の重さと家族の幸せを守れなかった後悔の思いを鬼一はかみしめることになります。

鬼一の辛く苦しい胸の内に共感を覚え、涙を誘います。

鬼一は、浪人相撲の一座に加わり、相撲を取り続けていました。
相撲道を歩み、力士として生きることが何よりの心の支えとなっていたのでしょう。
そうやって蓄えた25両のお金を家族のもとに届けることが、江戸行きの目的でもありました。

最後の場面で、47歳の鬼一は江戸相撲の現役関脇と対戦することになります。
相撲道を貫き通した鬼一の最後の晴れ姿でもありました。

雇われ用人でありながら 力やお金のある雇い人に追従せず、弱い立場の人々の心に寄り添い
奮闘する市兵衛は、今回も鬼一とお秀を支える役を演じます。
風の剣の遣い手でもある市兵衛ですが、むやみに剣はふるわず、依頼された仕事や問題を冷静に
算盤侍としての優れた能力を駆使して解決しようとします。

シリーズ物として、これが16巻目になりますが、ますます市兵衛が魅力的な存在となっています。
次回の発刊を待ち遠しく感じます。
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