あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

心が揺さぶられた物語

2018-01-04 17:34:43 | 日記
薬丸岳著『Aではない君と』(講談社文庫)は、心に残る物語でした。

主人公は、建築会社の企画室に勤め、離婚した妻との間に息子が一人います。

元妻が親権を持つ その息子:翼(14歳)が、同級生の殺人容疑で逮捕されます。
翼は事件のことについては、弁護士にも親にも一切語らず、黙秘を続けます。
事件の真相は、どうだったのか?
息子は 本当に同級生を手にかけたのか。
もしそうだとしても、どんな理由や背景があったのか。

この事件を契機に、主人公は父親としてのこれまでの在り方を問い直し、息子の心によりそい
息子のためにできることを行動化していきます。

『物事のよし悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ』

真の父親となることで、頑なな翼の心が少しずつ開かれていき、事件の真相が一つ一つ明らかに
なっていきます。

少年犯罪を題材としながら、親子の関係に焦点をあて、さまざまな心の葛藤を通して、確かな親子
関係が再生されていく物語でもありました。

子どもが加害者・被害者となった時の、親としての子どもへの思い、相手の親への思い。
犯罪を犯した少年の更生した姿とは どんな姿なのか。

息子が、主人公に問いかける言葉
「心と体と、どっちを殺した方が悪いの?」

その答えを 最後に息子は見出します。
そして、父親はだからこそ「もうひとりにはさせない」と心に誓います。

生きることの意味や尊さ、家庭の在り方、子の思いや悩みを汲み取りながら親子や夫婦の信頼関係を
どうつくっていくか、いじめなど 少年犯罪の背景にある子どものSOSを身近にいる親がどう察知し
支えていくか等 いろんなことを考えさせられた物語でした。

タイトルは なぜ 「Aではない 君と」 となったのか?
主人公の我が子に寄せる愛の深さと心の距離を 象徴しているのでしょうか。

是非ご一読を!


コメント
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