あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

すべきでないことを知るということ

2015-12-14 18:19:09 | 日記
先日の天声人語に、印象的な言葉がありました。

何をすべきかはすぐ分からなくても、何をすべきでないかは歴史が教えてくれる

全米日系市民協会の幹部が、フランスやアメリカで起きたテロ事件によってイスラム系移民に対する敵意が
アメリカ全土で吹き荒れていることを憂いて述べた言葉です。
真珠湾の奇襲で始まった太平洋戦争によって、日系のアメリカ人は敵国人と見なされ、砂漠や荒れ地にある
強制収容所に12万人を越える人々が送られ、過酷な収容生活を強いられました。
その経験の中で実感した敵意が、イスラム系移民に今向けられる状況を心配しての思いでもあります。

歴史は繰り返すと言いますが、テロリストに向けられた敵意が、すべてのイスラム系の人々に向けられてし
まうことに、感情が理性的な判断を越えてしまう危険性を感じてしまいます。
移民問題が政治課題になっているドイツやフランスでも同様な動きがあり、愛国的な政党が移民の排斥を訴
えて支持を拡大する傾向にあるとのこと。

人種や信じる宗教は、人間の表面的な一側面でしかないのに、その見分けが同じ人間であるという共通の認
識以上に重要視されることに大きな疑問を感じてしまいます。
愛国心をあおることで○○国人しての絆を強調し、他国からの移民を異端視し排斥する。
感情に訴える手法は、過去の戦争の歴史の中でも繰り返されたことだったのではないでしょうか。

歴史から学ぶことの多くは、何をすべきかではなく何をすべきでないかを確認することなのかもしれません。

過去の歴史の中で、日系人が体験した痛みを イスラム系の人々に負わせてはならない。
侵略の歴史の中で、日本が他国民に負わせた痛みを 繰り返してはならない。
ヒロシマやナガサキの悲劇や福島の原発事故を 繰り返してはならない。

先日、精神科医の香山リカさんの講演会がありました。
その中でも、香山さんは震災で被災された人々への過剰なケアが、心の傷を増幅させる行為となる危うさを
指摘していました。
被災者の心によりそうことは、土足でその苦しみや悲しみに踏み込むことではなく、何もしないで見守るこ
との方が必要な場合もある。大切なのは、被災者がしてほしくないことをしないこと。阪神大震災や東日本
大震災の経験から学んだそういった心遣いが 真によりそうケアなのではないかという指摘だったのではな
いかと感じました。

何をすべきか以上に何をすべきでないかという問いの方が、感情に左右されない大切な答えを指し示してく
れるのかもしれません。