あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

みをつくし料理帖 を読んで

2014-02-20 10:33:34 | インポート

シリーズの最新刊『美雪晴れ』を読みました。第9巻目となります。澪と澪が母親のように慕う芳に転機が訪れます。芳は、求婚された高級料亭『一柳』の店主:柳吾のもとで新たな一歩を踏み出します。澪は、吉原であさひ太夫となった幼馴染みの野江を身請けするため、卵の黄身でつくった鼈甲球の商いを始めます。この二人の思いを知る『つる家』の主人:種市や奉公人として働く人々の心遣いが、温かく心にふれてきます。苦労を肌で知っている人々の無償の善意が、この物語の世界を人情味あふれる温かい世界にしているように思います。

澪は、料理人として歩む道に迷いを抱きます。『つる家』のように安くておいしい料理をつくる料理人を目指すか、高級食材を使った究極の料理をつくる料理人を目指すか。揺れ動く澪の心を推し量り、町医者の永田源斉が言葉をかけます。

「食は、人の天なり……」 

以下本文より   「食は命を紡ぐ最も大切なものだ。ならば料理人として、食べる人を健やかにする料理をこそ作り続けたい。澪は潤み始めた瞳を凝らして自身の手を見つめる。叶うことなら、この手で食べるひとの心も身体も健やかにする料理をこそ、作り続けていきたい。この命の限り。そう、道はひとつきりだ。」

今回登場した料理は、「味わい焼き蒲鉾」「立春大吉もち」「宝尽くし」「昔ながら」の4品。澪の食べてくれる人々への思いと料理人としての苦心や工夫が生かされた料理です。食する場面では、登場人物の一人となって私も味わっています。レシピが後ろに掲載されているので、この物語のファンの一人でもある 妻か娘がそのうちつくってくれるかもしれません。

澪がどんな料理人になっていくのか、またどんな料理をつくりだしていくのか、さらには野江を身請けするという志を叶えるためにどんな道をたどっていくのか、これからも目は離せません。今回の物語で気になったのは、芳の息子である佐兵衛の行く末です。料理人の道をあきらめたはずなのに、未練を残す心の内が伝わってきました。登場する人物一人ひとりの行く末が幸多いものであることを願いながら、次作を心待ちにしたいと思います。