いつもと同じ時期に,いつもと同じ場所で,いつもと同じように ひっそりと咲く ミズヒキを見つけました。私にとっては,一番秋の訪れを感じさせる大好きな花です。
日陰になる薄暗いところに咲く花なのですが,そのためにより一層鮮やかに 赤い花が目立ちます。一本の茎に 少しだけ間をあけて 連なるように かわいい小さな花が 咲きます。
まどみちおさんの詩では,その咲いている様子を次のように表現しています。
ミズヒキ
まど みちお
だれも しらない なにかが
だれも しらない なにかへ
つげている わかれなのか
さ・よ・う・な・ら・さ・よ・う・な・・・・
と つらなって わたっていく
ゆうやけて
とおい カリに なりながら
まっかな てんてんに なりながら
ふしぎに いつまでも
いつまでも
みえて・・・
今年は,その花の色が 一段と鮮やかで 気品にあふれた赤に 見えるような気がします。
そして私には,さようならではなく こ・ん・に・ち・は と 語りかけているように思えます。
注意して見なければ見落としてしまうような日陰にあって,目を止めその存在に気付いてくれた者に,まるで あいさつをしているかのように 見えるのです。
たぶん秋が深まり,燃えるような夕焼けが美しい季節になったら,きっと まどさんの詩のように さ・よ・う・な・らと 告げているように見えるかもしれません。小花の一つ一つが,夕焼け色に染まったカリの姿に見えてくることと思います。
先日は,中秋の月と十六夜の月を眺めました。昔の人々は,どんな気持ちでこの月を見上げたのだろうか,燈火のない闇夜を照らす月は,どんなに明るく幻想的な光に見えたのだろうか,かぐや姫が,月に旅立って行ったのも,こんな夜だったのだろうか,などと想いながら ゆったりした気持ちで,月に見とれていました。
時には ゆっくりと 立ち止まり, 空を見上げ 花を見つめることの 大切さを感じています。