台風12号による死者・行方不明者の数は,合わせて100人を超えたとのことです。亡くなった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
台風の進路がある程度予想される中で,なぜこれほどの犠牲者が出たのか疑問に感じたのですが,当初の想定と異なることがいろいろ生じたために被害が拡大したとのマスコミの解説がありました。
それによると,○台風の進路が当初の予想より南側にずれ,大雨が降りやすい気候条件が重なったため,記録的な豪雨となった ○進むスピードが予想よりゆっくりしていたため影響を受ける時間帯が長くなった ○避難勧告を出すタイミングが遅れたり,出せなかった ○避難勧告を出しても,老人世帯が多く自主的に避難することが困難な面があった ○特に被害が大きかった和歌山県は,山あいに点在する集落が多く,大雨になると土砂崩れ等が起きやすく,小さな河川が増水しやすい環境だった とのことでした。
先の震災では,想定を超えた出来事が重なり,2万人近くの人が亡くなったわけですが,今回も想定を超えたことがいくつか重なり,多くの犠牲者が出ました。想定を超えることがあり得るということは,先の震災で学んだことでもあります。その教訓が今回は生かされなかったのだろうかと思ってしまいます。
台風の進路にあたる地域では,早め早めに避難勧告や指示が出され,被害の拡大を防いだところもあったようです。最悪の事態を想定し,最善の防災対応に努めることの大切さを改めて痛感します。どうすれば被害の拡大を防ぐことができたのか,その原因を検討し,最善の対応策を工夫していくことが必要になって来ると思います。
これからも,予想のできないことや予想を超えた想定外の出来事に直面することがあるかもしれません。
昨日の河北新聞には,石巻・大川小学校の惨事を取り上げさまざまな証言をもとに検証する記事が掲載されていました。地震発生から津波到達までの51分間を時系列に沿って振り返る紙面を読んでいると,改めてその当時の緊迫した状況がひしひしと伝わってきました。愛する子どもを失った保護者にとっては,なぜ裏山に避難することができなかったのか,待機していたスクールバスに乗せて避難する方法をとれなかったのかと,51分間の中で救える手立てをこうじることができなかったことに無念の思いをかみしめているのではないかと思いました。それはまた,二度とこんな惨事が起こらないよう,子どもの命をしっかりと守ることのできる防災対策に取り組んでほしいという願いを込めた思いなのではないかと思いました。
教育の場に身を置いた自分として,この保護者の心の痛みがずっしりと重く伝わってきます。自分が現場にいたとしたら,51分間の中でどういう判断や行動がとれたのだろうかと考えてしまいます。子どもの大切な命を預かっているという学校としての責任の重さを改めて感じます。最悪の事態を想定し,最善の対策や対応を計画し実践していく中で,確実に子どもの命を守っていくことが必要なのだということを痛感します。
石巻市教委では,改めて行った調査結果をもとに保護者への説明会を開催するとのことでしたが,その中でも今後の具体的な防災対策についての説明があることと思います。
原発の事故も想定外の事故として語られていましたが,それは想定した事態がもっとも最悪の事態を考えた想定でなかったということを裏付ける言葉でもあると思います。
人間は動物と違い,豊かな想像力を身につけています。災害に対しても,この想像力を駆使し,最悪の事態を想定した最善の対応策を考え,備えることができるはずです。
2万人もの尊い命が失われた事実から学んだことを生かし,しっかり命を守ることのできる防災対策・対応の実現を望みます。
これから想定外の出来事に直面しても,自由に,柔軟に,現実を見つめ,広く未来を見通し,かんじんなものを守り・大切にすることができる 真に豊かな想像力を,身につけていきたいものだと思います。