ルオーとマティス。
こういうくくりで展覧会というのは正直、想像がつきませんでした。
この二人、ギュスターブ・モローのもとで一緒に絵を習っていたとのこと。しかも50年もの間、手紙でやりとりをしていたのです。
今日よく知られた二人の作風からは同じ根っこで繋がってるとは正直考えられませんでした。
ところが冒頭から進んでくとモローに習ったんだなあというのがよく分かります。
特にルオーのはすごくモロー色が強かったですね。
試行錯誤を重ねいったのでしょう。
徐々にそれぞれ独自の作風になっていきます。
ルオー「娼婦ー赤いガーターの裸婦」
水彩で描かれた青。迫力があって見入ってしまう。力のある絵だなあと思いました。
あと、ルオーだと陶磁器に描いたのが何点かありましたがそちらもよかったです。
マティス「田園風景」
やはり色彩のひとですよね、マティスって。
現実的にはあり得ない配色なのに見てて気持ちいい。
木に紫を使っててちゃんとハマってしまってる。
さて、会場を先へ進んでくとサーカスというくくりのコーナーがあってなかなかいい内容でした。二人それぞれの版画での連作がまとめて見られます。
ルオー<気むづかし屋> 「流れる星のサーカス」より
「流れる星のサーカス」という版画集。
なんかいいでしょ、この表情。
なんかルオーの描く道化師とかってお地蔵さんに見えるのはわたしだけですかね。
かわいらしさ含めてなんとなくそう思うんです。
マティス「馬、曲芸師、道化師」ジャズ5/s.d.
こちらも版画集です。作品集「ジャズ」として出版されましたが、当初は「サーカス」というタイトルになる予定だったそう。
グワッシュ切り紙絵をステンシル版画にしたもので、このはさみで切ったラインがいい味を出しています。
あと素晴らしいのはシンプルな色彩。
今回、特に印象的だったのは赤紫。すごくエネルギーを感じました。
実はこのジャズのシリーズ、これまで何点か抜き出して見てた時にはあまり好きではなかったのですが、今回大好きになりました。
いいんですよ。点数がきちんとあって、これまでのマティスの歩みの中で登場してきたという流れで見ると。
会場ではこの前にイスがあってゆっくりと見られます。今回、一番好きな場所でしたね。
全体の構成がよく練られてていい内容だったと思います。
さて、今回初日の朝に行ってきました。
理由は記念講演会に出席するためでした。
なんとルオー財団の理事長であるジョルジュ・ルオーの孫であるジャン=イヴ・ルオーさんのお話を聞くことが出来たのです。
もうお一方、ジャックリーヌ・ムンクさんというパリ市立近代美術館の学芸員の方のお話も伺えました。
お孫さん(といってもかなりの年齢でいらっしゃいますが)のお話はプロジェクターの画像に合わせてジョルジョ・ルオーの生い立ちから追って進んでいきまいた。
印象に残ったのは、子どもに読み聞かせをしていたという話。さらに自作の詩も読んであげていたとのこと。
とても優しいひとだったんでしょうね。こういう話を聞くと思い描いてたイメージとまた違ってくるから楽しいのです。
ジャックリーヌ・ムンクさんのお話はルオーとマティスの手紙のやりとりとそれに繋がるひとびととの交流について。
アンリ・マティスの息子で画商のピエール・マティスが、ルオーにヴェルヴ誌のテルヤードと一緒に企画することを勧めて表紙の絵を描いたり、「気ばらし」という本を出した話はよかったですね。
2時間以上の長丁場だったのですが通して拝聴することが出来ました。
(ちょっと蒸し暑くて眠ってしまうかもって懸念があったんですが)
5/11まで。