あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

青木世一 AOKIT 展 -箱の中の名画たち(栃木県立美術館)

2011-10-30 12:07:03 | アート系

昨日からスタートした「青木世一 AOKIT 展 -箱の中の名画たち」に行ってきました。

会場は栃木県立美術館。石川寒巌 展と同時開催。

実はチラシのとおり、今回のタイトルの前にはこう入っています。<とちぎアートドキュメント>。

青木世一さんは栃木在住の作家さんで高校の美術の先生でもあるのです。

以前にも青木さんとお話させて頂いたこともあり、その作風も唯一無で好きでしたのでこれは行くしかないなあと。
(参考記事:青木世一さんと語る会に行ってきました

AOKITがいくつも並んでる光景というのは想像するだに楽しそう。

実際に視界に入るなり駆け寄りたくなる展示でした。

青木さんのトークを聞きつつ鑑賞がスタート。


■日本美術史シリーズ

1.光琳キット「燕子花図屏風」

こちらはベニヤによるキット。

ここで青木さんの考察が聞けたのが面白かったです。

光琳は画家というよりもデザイナーなのではないかと。

「燕子花図屏風」はよく見るとパーツは同じでコピーや反転で増殖させて画面が構成されている。

そこで、キットのほうも同じパーツを作って茎の長さと折り曲げ方でバリエーションを表現していると。

プラモのランナーにあたる、作りかけのパーツの残ったボードを見ると一目瞭然。ほんとに同じパーツがいくつも並んでる!

なんでも光琳は描くときに最初に花を書いてから茎などは後から書いたのではないかとのことでした。

なるほど!

その絵画を分析する力とこれをいかに再構成するかが鍵なのですね。

ちなみに以前、群馬県立美術館での展示ではこの光琳キット、横の長さが10メートルにもなったとか。

これは見て見たかったなあ。


2.石川寒巌キット「蓬莱仙境」

同時開催の石川寒巌展。「蓬莱仙境」の実物と向き合う場所に設置。

ここでひとつ面白い話を聞くことが出来ました。

AOKITの制作はまず箱から作るのだそう。

そうすると中のパーツはその中に入る段ボールに割り振らなくてはならない。

自然と割付が決まっていくのだそう。



3.蕪村キット「夜色桜台図」

こちらは以前に美の巨人で出てきたものの実物。

点在する小さなミニチュアの家は200軒以上!

しかも見ると分かるですがどれも視覚にあわせてるので角が90度できっちりと曲がった直方体ではなくってひしゃげているのです。

左の手前の部分を指して、青木さんは言います。たぶん、蕪村はこの辺りからの書いたんではなかろうかと。

水墨ベースのモノトーンのAOKITはちょっと他のとはテイストが違っています。


4.御舟キット「洛北修学院村」

以前にも制作してそう。

でも、その時よりもサイズが大きいので拡大するにあたって樹木を増やしたのだそう。

単にスケールアップしただけで見え方が違ってくるのですね。

これってとてもトリッキーな技術だと思いました。



■記念写真シリーズ

5.記念写真キット「入学式」
 記念写真キット「修学旅行・鎌倉」
 記念写真キット「修学旅行・沖縄」

なんとついにオリジナルの絵画に着想をえていたシリーズから一歩踏み出しました!

さすが学校の先生です。

生徒さんの入学式の写真をAOKIT化。

なんとこの作品に参加してくれた生徒さんにはこの小さいバージョンを配られたのだそう。これは喜びますよねー。

そして、修学旅行。

なんと修学旅行がインフルエンザで中止になってしまったのだそう。

そこで行く予定だった沖縄の幻の集合写真を記念写真キットで!

なんなら鎌倉に行くことも出来るよってことでもうひとつ。

楽しいし愛があるなあ~。

ちなみにルソーの「田舎の結婚式」なる作品を参考にされてるようです。


■西洋絵画シリーズ

6.ルソー・キット「ルソーのジャングルボックス」

これはサイズがでっかいです。

中にはモニターがあって、青木さんをモチーフとした演劇「ヒミツきち」が上映されています。

オリジナルは「大豹に襲われる黒人」と「夢」。


7.セザンヌ・キット「リンゴの籠のある静物」

この造形はちょっとすごいです。

リンゴなんて円に切ったベニヤ2枚に切れ込みを入れて十字にくんでいるのです!

瓶もやはり十字に組んでててっぺんと下に水平に円がついてるくらい。

最初に青木さんが作られたのがせざんぬの玉ねぎだったそう。

作って夜な夜なニヤニヤしていてこれは何かに似ているなあ。
>プラモデルを作ってるのと同じ感覚。
>>だったらプラモデルと同じくパーツを切り取った後の残骸も使っちゃおう
>>>箱も必要、マークも必要

なるほど、こうやって現在のAOKITの形態へと至るのですね。


8.ルソー・キット「女蛇使い」(ペーパークラフト版)

これは小さいのだけ作ってて大きいのはまだないのだそう。

「フットボールをする人々」を作って満足してえしまったとのこと。

でも、これはすごく好きな絵なのででっかいサイズのが見てみたいところです。


9.ゴッホ・キット「ゴッホの部屋」(ペーパークラフト版)

ゴッホキットは3回くらい作り直したのだそう。

これも縮尺に応じて間口の開き具合を変えたりしてるのだそうです。さすがです。

なお、このゴッホキットのミニ版はショップで購入できますよ。



10.ルソー・キット「フットボールをする人々」

わたしが初めて見たAOKIT。
(参考記事:「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」(世田谷美術館)

これは衝撃でした。

ルソー展は至極まじめな展示の中にいきなり出てきて、あのパッケージと木枠の散らかり加減が素敵な印象として残っています。

これは迷わずに作られたそうです。ちなみに出番が多いとのこと。


11.<1点透視図シリーズ>
ダ・ヴィンチ・キット「最後の晩餐」
ラファエロ・キット「アテナイの学堂」
マサッチョ・キット「三位一体」

となっていますが3点分あるのは箱のみで中身まで作ってあるのは「最後の晩餐」のみ。

聞いててびっくりしたのがワイングラスは13個あるのに、取り皿が12枚しかないのだそうです。

実際に青木さんの教え子さんたちが数えてたのがかわいかったです。


12.モネキット「積みわら」

ついに立体!!

段ボールで作られた積みわら2つ。

そして、異なる方向に背景が2つ??

なんとこれビューポイントが2つ設定されています。

床に案内のシートがあるのでその場所で見るとその仕掛けがわかります。

「2つの積みわら、日暮れ、秋」の秋と「積みわら、雪の効果、曇天」の冬と二つを別の視線からで共有するというもの。

絵画を分析するするどい洞察、にもかかわらずどこか可笑し味のある作風。

なによりも見て楽しめて、絵画を知るともっと楽しくなる展示です。

12/25まで。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 瑛九展(埼玉県近代美術館、... | トップ | イタリア古寺巡礼―フィレンツ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

アート系」カテゴリの最新記事