瑛九展に行ってきました。
今回の展示は埼玉県近代美術館とうらわ美術館の二館同時開催。
まずは埼玉県近代美術館から。
瑛九ってこれまでに見てるのは数点でどちらかといえばコラージュやレイヨグラフのイメージが強くって絵画は正直きちんとみたという記憶が朧げ。
今回見て痛感したのはやはり瑛九についてはこういった活動を網羅した展示を見なければ理解出来ないなあと。
今回の展示は構成が8つに分かれておりその半分を埼玉県立近代美術館とうらわ美術館とで以下のように分かれています。
1.文筆家・杉田秀夫から瑛九へ (うらわ美術館)
2.エスペラントと共に (埼玉県立近代美術館)
3.絵筆に託して (うらわ美術館)
4.日本回帰 (うらわ美術館)
5.思想と組織 (埼玉県立近代美術館)
6.転位するイメージ (埼玉県立近代美術館)
7.啓蒙と普及 (うらわ美術館)
8.点へ・・・・・・ (埼玉県立近代美術館)
5.思想と組織
☆旅人
架空の森の中。旅人と思しき人物の姿。
カラフルだけど色調は落ち着いているのだけどこちらを引きつけて離さない感じがある。
このコーナーに登場するものの大半は抽象なのですが時期によってその度合いがまるで違っててそのことが比較できました。
パターン的なのも好きですがそういうところから抜け出た単調ではない「窓」のほうが深みがあるように思います。
2.エスペラントと共に
こちらのコーナーは瑛九が関心を持っていた世界共通言語のエスペラント語について。
どちらかというと資料がメイン。
エスペラント語で書かれた手紙はさすがに読めない。もちろん何て書いてあるかの註はあるのですが。
緑で★の描かれたエスペラントの旗は初めて見ました。
6.転位するイメージ
☆作品(13)
ガラス棒を印画紙の上に直接乗せて感光させたフォトデッサン。
ガラスの表面に細かい傷?みたいのが見てとれてその様がどことなく竹のよう。
☆踊り子
型紙を使ったフォトデッサン。
光のグラデーションが美しい。柔らかく優しいんですよね。
☆シルク
仲間に使った型紙を使ってその上から吹付けで制作した作品。
手法のクロスオーバー!
異なる印象。でも、シルエットは同じ。
こんなことやってた作家が居たんだ!軽い興奮を覚える。
で、この同じイメージの別手法がよくわかるように何点か同モチーフのが並んで展示されています。
自転車はこれでもかというくらい。
リトグラフ、油彩(紙)、油彩(ガラス)、エッチング、フォトデッサン。
ここまで異なる手法を互いにフィードバックさせてる作家は珍しいと思います。
8.点へ・・・・・・
☆雲
じーっと見ているとそう見えてくる。
点描なのだけども小さな点がその画面の流れる方向を示しててフラクタル的にも見えてくる。
なんとも不思議な絵。
☆田園
点描だけどもその連なる塊が太陽に、その光の降り注ぐ田園に見えてくる。
点描シリーズの中では一番そのタイトルのものがふっと浮かぶ感じが強いように思いました。
この点描作品コーナーは特に時間をかけてゆっくりと噛み締めるように鑑賞してきました。とても満たされました。
そして、うらわ美術館へ。
ここのエレベータが素敵!
もう一基も!
ただし、作品リストがないのが残念でした。せっかく、埼玉県立近代美術館がカタログからのコピーとはいえリストを作ってるのだからこちらも頑張って欲しかったです。
1.文筆家・杉田秀夫から瑛九へ
実はこのコーナーでいいなあと思ったのが彼が評論などの分泌を活動の中心にすえていた時代に雑誌に掲載されたポートレート。
被写体は姉と妹。
モノクロでとてもシャープな表現。
なんか惹かれるんですよね。
どいうしても瑛九というとフォトデッサンのイメージが強いのでこいうストレートな写真を見るととても新鮮な感じがしました。
このコーナーはどちらかというと資料が中心。
3.絵筆に託して
このコーナーはちょっと範囲が広すぎました。
絵画というくくりではあるものの初期の実験的なものから晩年の点描にいたるまで。
埼玉県近代美術館を先に見ているとちょっとあれれってなってしまいます。
いいなと思ったのはガラスに油彩で描いた「よいどれ心理」シリーズ。
戦時中、灯りをしぼって制作して疲れると、街に出て酒を求めたとありました。
まどろみほどけた気分が出ているように思いました。
瑛九はどうも自分の好きな作家の影響を受けやすいようです。
自作と交換してもらった三岸好太郎のデッサンを大切にしていたとのこと。
なるほど、展示されていた三岸好太郎の版画を瑛九の描いたのを比べるとその影響が見て取れますね。
4.日本回帰
正直、このコーナーはちょっと微妙でした。
それでも、書だか絵画だかよく分からない墨で描かれた無題のは面白いなあと思いました。
エスペラントに傾倒していた彼が日本的なものにまた引かれていたというのは疲れてしまったのでしょうか。
7.啓蒙と普及
☆母
リトグラフも制作していた瑛九。
ここまでいろんな手法に精通している作家も珍しい。
緻密な線から繰り出されるイメージは繊細で重く鋭い。
フォトデッサンのぼやけた輪郭の丸さとは対極の表現。
そして、このコーナーには実際に瑛九の使っていたプレス機もありました。
フォト・デッサン、油彩、エッチング、板への吹き付けなど、これでもかと表現を探求する姿勢は素晴らしいなあと思いました。
11/6まで。
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