あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

石川雲蝶(永林寺、西福寺開山堂、穴地十二大明神、龍谷寺、長恩寺)

2011-09-24 21:34:24 | アート系
というわけで新潟に行ってきました。

久々の大人の遠足。

越後湯沢へ出てそのあとレンタカーで魚沼市~南魚沼市にかけて石川雲蝶の作品を見て回ってきました。


駅にはこんなパンフが配布されていました。かなり気合い入ってます。

回ってみた順番に書いてみたいと思います。



○永林寺



雲蝶の遺言により死後100年公開するなと言われていたのだそう。

それだけあってどれも状態がよい。

まず驚くのが堂内そのものが雲蝶のインスタレーションになっているところ。

木の柱に描かれた金色のラインなどとても決まってる。

もちろん個々の欄間(というにはあまりに豪勢、かつはみ出んばかりのボリューム)が圧倒的によいのは間違いありませんが、


欄間なのに↑こんなにカラフル!こちらは天女。

彫刻による造形+彩色でこんなにも派手になるのかと。

まずは本堂正面の上部にある雲水龍。

うねる水の波しぶきの中の龍。この波の表現はぐっときます。

並居る絵師がこれでもかと書いた平面の波頭の表現は見慣れていますがこういう厚みをもった立体の表現というのはなかなかにお目にかかれません。

しかもただの立体ではなくあくまで平面のパネルで厚みを持たせた表現として納めるという大前提があるため、あまりない表現になっていると思います。

少しだけ色の落ちた色彩はどことなく古びた遊園地のアトラクションを想起しました。屋外だったら、当初から公開されていたらもっと色あせてしまっていてまた印象が違っていたかと思います。

そして前述の天女。パンフの画像のとはまた別なのですが、そちらの造りが秀逸。

表はもちろんなのですが、裏面にも造形がなされてる。

しかも、セクシーな後ろ姿は背中がばっちり見えているというもの。

おそらくどうしても造りたかったのでしょうね。ものすごく手間がかかるのをこの一箇所だけやっているのですから。

そして更に気になる造形が。

小夜之中山蛇身鳥「仙人の図」。

この立体表現がよく出来てる。パースとしておかしいのだけども下から見上げるにはばっちり決まって見えるのがすばらしい。

ちょっと厚ぼったい感じもするけども魅力のほうが十分に勝ってる。


そして建物のさらに奥の金堂には小夜之中山蛇身鳥「頼政蛇身鳥射止め場」。

板に描かれた平面の絵んまのですが、周りを囲む波の部分は立体造形。

この他にも板絵、当時としてはちょっと進み過ぎてるデザインの書院障子「月に群雲」など見所はたくさんありました。


さて、ひととおり見終わってから再び外へ。

本堂の外の造形も素晴らしい出来です。


奥へいきつつ上を見上げると、、、


あれ?

なんと見覚えのある絵が!

小夜之中山蛇身鳥「頼政蛇身鳥射止め場」を模写したもののようです。

オリジナルがもともとはここにあったのを中に移して、代わりにこちらを設置したということのようです。

ここに絵があることに気づいたのは嬉しかったです。

http://www.eirinji.jp/



○西福寺開山堂


さて、お次は西福寺。


そして奥にまします開山堂!

雪除けの屋根がこれでもかというボリューム。


近づいてみると保護するのは納得。

雲蝶の見事な彫りの技術。


ちょっとキャラっぽいカラス天狗。


波の造形は力強くどれも圧倒されます。

外ももちろんですが本当のお楽しみはその内側。

さて、開山堂にはいきなり入れるのではなく連なる建物の入口から入って中を見て回ります。


なんと雲蝶は彫刻だけではなくこうした襖絵も描いていたのです。


彩色のある孔雀もお見事。


そして面白かったのは本堂の廊下の床。

雲蝶による埋め木。

ひょうたんの形になってる。結構な数があって探すのが楽しい。


こちらは小槌。

他にも矢や宝船、りんごなどなど。

そして一番奥に行くとついに開山堂。

メインは「道元禅師猛虎調伏の図」。


パンフの裏面にどーんと載っておりました。

天井を埋め尽くすデコラティブな極彩色な彫刻。

なるほど、これを言い表すのに越後のミケランジェロっていうのは分かりやすい。

図とはいうものの描かれているパーツは木彫の立体。

天井ということもあってとても首が疲れるし、大きさもあるので一度に全体の構成を確認することは難しい。

だからこそ何度も上を見上げてその全体はを把握したくなります。

龍にすごまれ、退散する虎。

もくもくと立ち上る雲は龍のその身を隠している。

龍の上には座禅を組む道元禅師。

他にも滝登りをする鯉、雲間を飛ぶスズメ、木の上の鷹と動物がいっぱい。

でも、実は滝の流水の描写は面積としては少ないもののばっちり画面を引き締めてている。

そしてこの天井のみならずこの空間の作りこみが尋常ではない。

欄間はもちろんのこと、漆喰細工や両面彫刻とこれでもかと詰め込まれている。

中でも正面の上部中央の欄間「道元禅師と白山権現」の立体表現は秀逸。

パースとして見るとおかしいのだけども、実によく丁寧に作られている。

やはり下から見上げた時にしっくりとくるかどうかを考えて作られていることがよく分かる。

これは現地で実際に見ないと分からないものであることを実感しました。


http://ww5.et.tiki.ne.jp/~hirasawa/




○穴地十二大明神


お昼を食べて向かった先は穴地十二大明神。


竹と虎。

この竹と虎の配置って彫刻でも絵画でもあまり見たようなことがないような気がします。


こちらは鷹。

野ざらしでもこのディティールが残っていることに驚きますね。

パンフに載っていた「酒天童子の大江山の鬼退治」は堂内にあるのか見ることが適わず。残念。

http://www.niigata-kankou.or.jp/ken/kyoukai/institution/AA0014.html



○龍谷寺


うわお!インドな感じでびっくり!

でもここは別の建物で雲蝶の欄間が見られるのは廊下を渡ったその先の建物でした。


得誠和尚の行履(あんり)の一部分。

櫂を刀の如くふりかざす和尚もよいのですがその反対側で船から落とされたほうが描写として好み。

波の細かい襞の繊細な描写が見事。


獏。これは霊獣のほうですね。

色が落ちてこうなったのか、それとも効果を狙ってだったのか不明でしたが、木の地の色がのこされたまま上にほのかに乗る色味が心地よい。


獅子と牡丹。この牡丹の花びらのシャープさったら。

時期なのだろうか?作品によるのか?

わりにぼってりとした厚みのある描写とこういうシャープな描写の両方があるのが気になりました。

こういう感想って今回のようにまとめて見てみたからこそなんですよね。

http://www.niigata-kankou.or.jp/ken/kyoukai/institution/AA0013.html



○長恩寺


そしてラストは長恩寺。↑はお堂ではなく倉庫的な建物。

本堂のほうは公開されていないのだそう。残念。


鳳凰?デザイン的によいです。


なんと外なのにちゃんと赤が残ってます。これにはびっくり。

http://www.niigata-kankou.or.jp/ken/kyoukai/institution/AA0012.html


というわけで一日で5箇所もの雲蝶スポットを回れて大満足でした。

美術館の特別展みたくいつまでに行かないと見られないというものではありません。

でも、そこに行かないと絶対見られない作品。

実際に行って、見て、本当に来てよかったなと思う作品でした。
越後の名匠 石川雲蝶―足跡と作品を訪ねて
木原 尚
新潟日報事業社
コメント (2)
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