あお!ひー

叫べ!いななけ!そして泣け!雑多なことを書いてみる。

モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景(損保ジャパン東郷青児美術館)

2011-09-11 11:10:15 | アート系
「モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景」に行ってきました。

今回はサブタイトルにあるとおり、子どもを描いた作品が多いです。

ドニの家系図をみてびっくり。

なんと彼には9人もの子供がいたのです。

と言っても、長男のジャン=ポールは四ヶ月で亡くなっているし、七人の子供を産んだ最初のつまみであるマルトに先立たれたことで、リスベツを後妻に迎えさらに二人の子供を設けている。

なるほど!

これは子供の作品が多いわけです。


序章:若き日のモーリス・ドニ

☆郊外を回るホメロス

色が明るくトーンも違う。鉛筆の下書きの残ってるのもなんとなく軽やかに感じられる。


☆車窓にて

宇宙人orカッパみたいな人物。頭のうしろの太陽みたいなのは麦わら帽子だろうか?

とにかくこの顔の描写のインパクトにやられてしまう。



第1部:くつろぎのなかで

☆薄紫のガウンを着た母親

黒い輪郭線の運びが印象的。それと母親の表情がよい。シンプルに描かれているけれどすごく伝わってくる。


☆ジャン=ポールの死

わずか四ヶ月で訪れた初めての子どもの死。

小さなベッドに横たえられた姿の見えないその小さな命の跡形。

画面は悲しい。水色、そしてろうそくの灯りと夕日の朱が映える。


☆初めての授乳(すみれ色の部屋)

この線がおかしい!のたくってるのに魅力的。右にいる女中の塗りの線も縦の直線をざっくりと描いてて妙。だけど、絵として全体のバランスは見事にとれている。


☆バラを持つマルト

いつも母親として地味に描かれているマルトがとても魅力ある女性として描かれている。花開いたかのような浮き立つ表情が生き生きとしていて素晴らしい。

左うしろの花束をもった天使の表情もよい。


☆夕暮れの三相

二人目の妻、リズベツの肖像なのだけど同じ画面には同時に三人のリズベツが描かれている。

楽譜を見ている音楽家として姿。腕組みをする優しい女性の姿。編み物をしながら二人のこどもの相手をする妻の姿。

一瞬あれっとなるけどもこれはやはり三つの姿を同時に描いてて正解。



第2部:子どもの生活

☆ナボリのネネ

背景はのっぺりと平坦に描かれており、対する手前のネネはシャープな描写。

光の差し込む角度なのか顔の表面は斜めの細い線で描かれていて存在が引き立っている。


☆はじめの一歩、フィエゾーレのバルコニーで(1)

明るく外の光がふりそそいでいて晴れやか。

人物の目は潰して描写されているものの、その楽しげな感じはきちんと現れている。


☆更衣室(1)

浜の夏のひかりをバックにした二人の子ども。

向かって左の少女の顔の描写がちょっとあり得ない配色なのに魅了されてしまう。

みどり、ピンク、オレンジが明らかにおかしくなりそうなのに、ドニのバランス感覚でギリギリ保たれている。

さらにこの上にブルーの瞳と真っ赤な唇が入る。

かなり無茶なんだけど今回見た中ではたぶん一番好きですね。


☆スパニエル犬のいる浜辺(1)

このざっくり描写もやられました。おお振りな点描が版木のえぐったかのように見える。

シンプルだけど対象は力強く感じられる。

こういう表現の振り幅のひろさを見るとさすがだなあと思います。



第3部:家族の肖像

☆カプフェレ家の子どもたち

密度がありきっちりと描かれている。ブルーのドレスのカクカクとした描写がなんとなく印象に残る。

椅子の上のにゃんこがあまり目立たないのも気になるところ。


☆キャステラ家の肖像

ドニはポーズを取らせて下絵を書いたりせずにスケッチから起こして描いたのだという。

構成力と画力とセンス。

美術なんですがこの絵にはそのことよりもプロの仕事の凄さを感じます。

こんな肖像を描いててもらって家に飾れたらどんなにか素敵だろう。


☆ドミニクのはじめの一歩(海辺の家族)

歩き初めのドミニクを取り囲む母と姉たち。

背後に水浴する裸婦。さらにその向こうの山々と空。

淡いピンクの色調は幸せなオーラを感じさせる。


☆モーリス・ドニ制作「出生通知状」計14通

これは素敵でした。画家としてよりも、子の父としての想いが現れています。

ポストカードで出てたらよいなあと。


☆ブルターニュの供物

これは圧巻でした。ドニの別荘の食堂に飾られていたパネル3点組。

中央にマリアに見立てた赤子を抱くマルト。

左右には娘二人の横向きの姿。供物=食材を手に持っている。

このパネルの前で食事をしてみたいとおもいました。



第4部:象徴としてのこども

☆泉(<黄金時代>の一枚目のパネル)

なんと三角のパネル。しかも横向きの三角。

女性と少女が泉の水に触れている。

女性の豊満な後姿も素敵なのだけど、少女の生きでいることを素直に楽しんでいるかのような表情に心奪われる。


☆浜辺を走る子ども

これは習作だとのこと。でも、かなりの完成度。

習作から本番の作品が制作されなかったことは残念。これは見てみたかったです。


とかなり見所の多い展示となっています。

今回は一階に特設の物販コーナーもあります。

11/13まで。
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