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「ハウス・オブ・ヤマナカ」(新潮社)刊行記念 朽木ゆり子×山下裕二 トークショー

2011-09-27 22:36:47 | アート系

昨日9/26、「ハウス・オブ・ヤマナカ」(新潮社)刊行記念 朽木ゆり子×山下裕二 トークショーに行ってきました。

著者である朽木ゆり子さんと書評を書いた山下裕二先生による対談が実現!!

アメリカに「国宝」級美術品が数多く存在するのは何故か?

こんなコピーを目にしてしまったら聞かずにいられませんよねー。

冒頭からいきなり朽木さんが10年かけて書いたとの話にびっくり。実際には資料集めから出版にいたるまでということなので構想10年くらいなのだそう。

この「ハウス・オブ・ヤマナカ」は奥付によれば3/25刊行。

本当なら3/11に朽木さんが来日される予定だったものの震災でフライトがキャンセルされて4/11に日本に来られたのだそう。

その後、朝日と日経の書評に取り上げられてから書店でかなり出るようになったそうです。現在、3刷とのこと。

当初、タイトルはもっとセンセーショナルなものが予定されていたのだそうですが、「流出」とかネガティブイメージの言葉は使いたくなかったそうで、このタイトルに。

「美術品が移動するのがネガティブ、悪いことだとは思わない。」と朽木さん。


山下先生から朽木さんに質問。「書こうと思ったきっかけは?」

ボストンの水墨画がヤマナカという美術商から購入されたということを知って調べはじめたのがきっかけなのだそう。これが200年ごろの話とのことでなるほど構想10年です。

2007年ごろまでに資料集めを行っていたそう。

5thアベニューの山中商会のあった場所は現在GAPなのだそう!!

当時、ビルの1、2、3階の左半分が山中商会のスペース。

大家がロックフェラーでかつ顧客だったのだそう。

なんでもロックフェラーアーカイブでヤマナカのことを調べてもらっていたところ、なんと店子だった記録のファイルが出てきたとのこと。

さて、ここからスライドの画像が登場。


<プライスさんと若冲>
プライスコレクションの若冲のモザイク「鳥獣花木図屏風」。

もとは東博に寄託されていたのだそう(!!)

80年半ばに京都の某家~プライスさんのところへ。

このほかにもプライスさんの若冲が数点。

そして若冲の描いた葡萄図。

プライスさんが初めて買った若冲の絵。

この時、プライスさんはスポーツカーを買いにフランク・ロイド・ライトについてっててたはず。

実はフランク・ロイド・ライトはヤマナカから絵を買っていて、プライスさんが若冲の葡萄図を買ったのも元はヤマナカのひとが独立されたお店だそう。

なるほど、ここでつながるのですね。


<渓流花木図屏風>
METでの展示風景。

もともと右と左が別々になっていたのが現在は揃っている。

向こうでは乾山、光琳と言われていたが、山下先生のみたところでは光琳の後のリンパのマイナーな画家ではないかと。

たしかにすごく変な絵です、これ。


<芥子図>

伝 宗達。ネットでPROVIDENCE=来歴が出ていたのだそう。

その絵が誰から誰に流れてその美術館にやってきたのかということが分かる。

その後も向こうに渡った日本美術の画像が続きます。


<松島図屏風>

俵屋宗達によるもので海外の宗達のではおそらくNo1だろうと。

続いて登場したスライドはなんとこの松島図屏風の領収書にあたるもの。

なんと5000ドル!

朽木さん曰く、メールでお願いしてこういうのを出してくれるのだそう。


<目録>

川崎絵のオークションで何がいくらで売れたのかといった記録がまとまっている。


<烏図屏風>

以前にサントリー美術館で登場。これ、すごく印象に残っています。

1936年にシアトル美術館に寄贈されたのだそう。

デザイン的で蒔絵の意匠で反転させているという山下先生のコメントに納得。


<プリントアウトされた資料>

朽木さんがメトロポリタン美術館に「ヤマナカから何を買ったのか?」と質問したところ、とにかく該当するものをプリントアウトして出してくれたのだそう。

向こうの美術館にはこういう作業を行う「レジストラー」という役職があるのだそう。

なるほど、日本では聞いたことがありませんね。


<朝顔図屏風>

鈴木基一も以前は評価も高くなく値段も安かっただろうとのこと。


<八ツ橋図屏風>

地震がなければ根津美術館で杜若と揃いで見られていたはず。

この購入価格、ほんとは高くないのだそう。でも居えないのだそう。気になる。。。


さて、また少しスライドを離れた話に。

戦争が始まってヤマナカには財務省の役人がやってきて店を封鎖。その後、大統領府敵国財産管理人局の管轄に。

お店のものは接収されてしまう。でも、これはそのままお店で売ったのだそう。

日本人の店員さんはそのままそこでお給料もらって働いていたのだそう。

それでも1944年5月になるとバーゲンをやって競売に。

投売りされてすでいにいいものは残っていない。

その前にヤマナカに働いていたアメリカ人が買ったり、デパートが買ったりしていたよう。

なるほど、そんなことがあったのですね。

そして再びスライドに。


<吉備大臣入唐絵巻>

日本にあったら国宝ものだそう。

来年3月に東京国立博物館で開催予定の「特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」で見られるそうです。楽しみ!


ラスト、いろいろと告知がありました。

ナショナルワシントンギャラリーでの若冲の動植綵絵30幅+釈迦三尊図3幅が公開になること。さらに北斎の富嶽三十六景と五百羅漢(100幅は無理なので全てではないそう)も公開!

これは桜が送られて100年を記念してのことだそう。

山下先生が顧問の山種美術館では「知られざる歌舞伎座の名画」が現在開催中!

2012年12月からBunkamuraザ・ミュージアムにて「白隠展」を行うとのこと!

朽木さんの「フェルメール巡礼」が11月に刊行予定。芸術新潮を再編した内容とのこと!


とても興味深い内容のトークショーでした!!

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ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商
朽木 ゆり子
新潮社
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