あお!ひー

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ザ・コレクション・ヴィンタートゥール(世田谷美術館)

2010-08-17 16:09:18 | アート系


ザ・コレクション・ヴィンタートゥールに行ってきました。

この日は三軒茶屋で昼酒の後、急遽思い立って徒歩で世田谷美術館へ。

いやー、さすがに暑さが堪えました。

でも、たまに視点を変えたくなったら歩くのはよいなあと。

さて、今回の展示はなんと90点もの作品すべてが日本発公開だというところ。

なんでこのようなことになったかというと、オルセー展と同じくこのヴィンタートゥール美術館も改装のタイミングでこれあ¥まで国外へ貸し出していなかったコレクションをまとめて出していただいたとのこと。

ありがとう!スイスの方々よ!!

日本もぜひ、東博での国宝土偶展といったものを是非とも貸し出してもらいたいものです。

来てもらうばっかりじゃなんか申し訳ないですよね。

さて、というわけで今回の展示はすごく気になっておりました。

今回も気になった作品について取り上げてみたいと思います。


○フィンセント・ファン・ゴッホ「郵便配達人」

冒頭のチラシのメインビジュアル。

ここだけ特別な作りになっていました。

祭壇ていうほどの豪華さはないのだけどもそのような形で真っ青な背景の段をしつらえてあってそこにこの郵便配達人のみが展示されています。

黄色バックに青い帽子と服のこの絵にぴったりあっていました。

背後がホワイトキューブだと明らかに浮いてしまう。落ち着いた青があることでちょうどフラットになるくらい。

やはり、ゴッホ作品の異様さに驚かされます。

背景はびっくりするぐらいにフラットに塗られた黄色。

郵便配達人の顔の水色の線は写実的にみると明らかにおかしいのだけど、この絵の世界の中ではぴったりとはまっている。

人物の顔とかはともかく、この黄色の背景とブルーの人物の対比は強烈に脳裏に焼き付けられて印象としては確実に残ります。



○マックス・リーバーマン「カシーネの競馬」

地面の流れるかのような黄緑が眼に心地よい。

のだけどよく見るとおかしい。

馬が飛び越えているはずの障害物が妙な逃げ方をして描かれている。

「そこに何がしかがある」

というような感じを与えてくれるのでむしろこれはうまい効果だなあと思いました。



○フェルディナント・ホードラー「女性の頭部」

となりにもう一点男性の肖像もありました。

似顔絵のように対象となる人物の特徴抽出し、印象づけてくれるのはこの髪や顔の線のように思います。

塗りもかなり特徴がありますが人物の表情をぱっと相手に理解させているのは線なのではないでしょうか。

たぶん、ホードラーはサインペンで描いてもすごくいい感じの作品が描けるのではないかなあと妄想しちゃいました。



○ピエール・ボナール「散歩」

昨日、会期を終了したオルセー美術館展。その一番の収穫は自分にとってはナビ派でした。

あのコーナーでみてからというもの、ドニとボナールが気になって仕方ありませんでした。

ざっくりと描いてるのだけどアジがあってむしろ好き。

浮世絵に魅せられたボナールはやはりシンプルなのがよいですね。



○エドゥアール・ヴュイヤール「室内、夜の効果」

うわー!!

すごい変な絵に出合ってしまいました。ボナールがもうふっとんでしまいました。

オルセー展でもヴュイヤールには惹かれてましたが、ここまで強烈なのは初めて。

暗い室内で会話する姉と母。奥の母は黒をバックに黒い服、手前の姉は暗さで横顔が見えない。

チェストを挟んで画面の左右を黒で埋めた絵画っていうのはこれまでに見た覚えがありません。

夜のもつ怖さと暖かさが出ていてなんとも不思議な気持ちになる作品です。



○エドゥアール・ヴュイヤール「アネット・ナタンソンと道化人形」

そして、もう1点ヴュイヤール。

このひとは光と影を頭の中で分解してて「しきい値」で切っているのだと思いました。

そして見えるぎりぎりの部分だけの描写で逆に想像と畏怖を抱き込むことに精工している。

こちらも不思議でついつい見入ってしまいます。



○モーリス・ユトリロ「ボントワーズのノートル=ダム教会」

何故だかこの教会が生き物ちっくにみえてきます。

なんでしょうね、この塗りの妙ななまめかしさが尋常じゃなくって、それで妙な気配が漂ってるのかなあと。

損保ジャパン美術館でのユトリロ展を見逃していることを激しく後悔。



○パブロ・ピカソ「二人の人物」

この目がなんともかわゆい!

まさか、ピカソの作品を見てこんな感想に至るとはびっくり。

この閉じた目とみっフィーみたいな「ばってん」のお口。

気持ち悪いでも妙でも突飛でもなくってかわいいに尽きますね。



○ワリシー・カンディンスキー「はしごの形(しみの上の)」

これ、意外でした。

カンディンスキーってあまり得意ではないのですが、これはとても響きます。

幾何学模様のパールのくっきりとした線分と葉荻野にじんだ「しみ」とがうまく呼応してる。

これは実物みないと伝わりにくい感覚ですね。



○アンリ・ルソー「赤ん坊のお祝い!」

圧巻ですね。

描かれているのは意識上の赤ん坊でしょうね。

どうしてもこのりっぱなはちきれんばかりの足を見るとカミーユ・ボンボワの描く少女たちを思い浮かべてしまいます。

赤ん坊であるはずなのに道化人形を支配し、美しき花さえも自分のもの。

生きる欲を全肯定して、ずっしりとこのこは立っている。

おめでとう。


とかなり見所は多かったです。

売店に行ったところ、8/14(土)の時点ではシスレーの「朝日を浴びるモレ教会」とゴッホの「郵便配達人」のポストカードが品切れになっていました。ゴッホは想像してましたが、シスレーのは意外でしたね。

10/11まで。
コメント (4)
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