超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

『哲学宗教日記』を読む

2022-06-02 18:17:20 | 無題
ウィトゲンシュタインの「哲学宗教日記」が来て、読んでいる。
論理哲学者みたいな堅物が、ふだんはどんなことを考えているのか
よく判っておもしろい。
友だちと演奏会のブラームス評やブルックナー評
などを話していたりする。
それだけなら、ああ文化人なんだな、という所だが、
恋の悩みや職の悩みなど、きわめて人間的なことも、
書いてある。
同性愛者と聞いていたが、異性に恋して悩んでいたりする。
また、いつ職を失うか考えると怖い、など「わかる」ところも多い。
彼はフロイトも読んでいて、無意識のことも考えていたのが
発見だった。「フロイトは間違えたことをたくさん言っていて、
おそらく、性格もよくないが、きわめて多くの
重要なことを発言に含んでいる、
それは、私も同じだ」という注目すべきことも書いている。
時に自分の稀有な冴えた頭を誇りながら、
時にある日頭が働かなくなって、職を追われる怖さを語る。

宗教については、迷信を思考に入れるべきでないが、全生涯が
霊感に導かれているのを感じている、と言い、神の創世記よりも
神が世界を創造し続けていること、世界が維持されていることが
奇跡であると言っている。
哲学については、再び論理学の本が書けること、論理と一緒に
居られることが何より嬉しい、と言っている。
恋人マルガリートが、結婚のことを考えている、と言ったとき、
彼は全くそのことを考えなかった。そしてマルガリートは泣き、
彼には為すすべがなかった。

日記ならではの素顔が垣間見える、貴重な本だと思う。

苦悩する論理学者の日常が綴られている日記みつかる

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