超人日記・俳句

自作俳句を中心に、自作短歌や読書やクラシックの感想も書いています。

<span itemprop="headline">ジンマンのマーラー全集を聞く</span>

2011-04-30 17:57:46 | 無題

ジンマンのマーラー全集を聞く。
数人の違う画家を起用した美しい装丁の絵がインナースリーブで使われていて高級感がある。
このインナースリーブが上質で品が良い。第一番巨人からして大人しい。咆哮したり嗚咽することがない。復活も美感で整えられている。主旋律をきれいに歌い上げ、効果音で盛り上げない。その辺り、ショルティなどとはえらい違いだ。
復活の最後の鐘の音も目立たぬように入っている。この鐘で大泣きしたい人にとっては拍子抜けだ。全体としてバランスの取れた耽美派という印象を受ける。長い三番も耽美的で長さを感じさせない。やはり録音の良さも際立っている。四番も端正にまとめ上げられている。五番のアダージョも美しい。六番も戦車の行進のようではなく、羊飼いの散策のようだ。七番が一枚に収まっている。千人の交響曲の合唱も非常に多重的で厚みがあるが、聞いた感じは軽やかだ。
全体に微妙なバランス感覚に支えられた繊細な逸品揃いである。「マーラーの嫌いな人にはお勧めです、マーラー好きの人は他にいくらでも選択肢があります」というような的外れな記事を読んだことがあるが、これは間違っている。ただ、バーンスタインのように泣かせます、悩ませます、解き放ちますという縦横無尽に感情の起伏を味合わせるマーラーでないことは事実である。マーラーは聞いてみたいけど汗まみれになるのは嫌だという健康な感覚の人にお勧めである。
これはこれで新時代の新感覚のマーラーなのだからじっくりと味わいましょう。SACDハイブリッドの高音質も一つの快挙である。私はマーラーをいくつも聞いてきたがジンマンを歓迎する。
ただ、クーベリックやノイマンのようにボヘミア的であったりするという所は皆無である。それだけ多くの人の共感を素直に呼ぶ、神経の行き届いた、澄んだ水のようなマーラーである。美音のマーラーといえば、ベルティーニの全集があったが、ついに廃盤になるのが残念である。
ジンマンのマーラーは映画音楽にぴったりである。あの癖の強いベートーヴェン全集を作った人物とは思えない成長ぶりである。でも時々従来のマーラー全集になかった音が聞こえるように思える。
やはりジンマンは音符にない音が見える才人なのだ。全ての傷ついている人、立ち直れない人、にお勧めの美の調合薬である。
重たくて一歩も先へ進めないそんな時でもこの音がある



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<span itemprop="headline">フランツ・リストの樹海で飲む珈琲</span>

2011-04-26 15:59:34 | 無題

レスリー・ハワードのフランツ・リストピアノ曲全集が欲しかったのだが、先日ついに入手した。
リストの曲が約半分、リスト編曲のトランスクリプションが残りの半分収録されている。
大好きなメロディが豊富にある、シューベルトの編曲集から聞いている。
まず、「ます」から聞いたのだが無駄な装飾がなくいい感じだ。
次に聞いたのがシューベルトの「冬の旅」のピアノ編曲集。
耳に馴染んでいるメロディがピアノに移し替えられると何とも懐かしい。
「冬の旅」のあとは「さすらい人幻想曲」と「即興曲」。
フランツ・リスト特有の装飾が施されているが嫌みがない。
次に聞いたのがベートーヴェンの交響曲のピアノ独奏版トランスクリプション。
よくぞ複雑な交響曲の音を交通整理して、ピアノ独奏版に仕上げたものだ。
次に聞いたのが若き日のフランツ・リスト作品集。
リストは弾き手によっては余りにサロン風で嫌みに聞こえるのだが、レスリー・ハワードのフランツ・リストピアノ曲全集の演奏は乾いていて嫌味なところが全くない。
超絶技巧練習曲さえ、派手に聞こえず好ましい音響である。
日々の生活のBGMとして聞くならばこれほどご機嫌な音源も珍しい。
レスリー・ハワードはリスト好きの精髄だと言われることもある一方、技巧が中の上ぐらいで今一つとされることも多い。
私はこれぞ超絶技巧とこれ見よがしに弾くような、華やかな演奏を必要としていないので、レスリー・ハワードのフランツ・リストピアノ曲全集が今の私には最適に心地よい。
フルトヴェングラー・ザ・レガシーで廃墟に立つ指揮者の歴史的命運を味わう傍ら、レスリー・ハワードのフランツ・リストピアノ曲全集で、癒しを味わう。
そんなこんなで逆風の毎日を凌いで、今日を乗り越えている。

憂鬱な春の陽射しを浴びながらリストの森で珈琲をひとくち



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<span itemprop="headline">フルトヴェングラーの音楽曼荼羅</span>

2011-04-15 15:46:21 | 無題

待望のフルトヴェングラー・ザ・レガシー宅配で来る。
凄い量。作曲家別にボックスがさらに小分けされている。
まずは定番のベートーヴェンから聞く。交響曲第一はコンセルトへボウ。リマスタリングに手間は掛けていないようだ。
「英雄」など古雅な光を放つ歴史的名演で、買ってよかったと思う。
録音が元々劣悪な第二番の響きでさえいとおしい。ノイズはリダクションされず、そのまま収録されている。
終戦後復帰公演三日目の1947年5月27日の衝撃的なベルリンフィルハーモニーとの「運命」の爆演も生々しくいい塩梅で収録されている。
未曾有の国難を背負って指揮棒を振るフルトヴェングラーの響きが骨身に沁みる。
歴史的音源独自のアウラがある。同日録音のエグモントも収録されている。序曲がどれも秀逸だ。
テンションの高い七番、余裕の八番に続いて、神品と呼ばれたバイロイトの第九。
神品と言われるだけの神々しさが十分録音から伝わって来る。
交響曲好きの私としてはハイドン、モーツァルトのいくつかと、シューマン、チャイコフスキー、ブルックナーの代表曲、ブラームス全集、リヒャルト・シュトラウスの数曲、未完成・グレートなどが一気に聞けることが悦ばしい。フルトヴェングラー・ファンは多大な労力をつぎ込んでこれらの音源を差し替え、買い増したことだろう。それを思うと申し訳ないが、レコード史の金字塔を聞く思いである。
モーツァルトやワーグナーのオペラの音源が充実している所もオペラファンには嬉しい所だ。
同曲異演がこのセットの背後には無数にあって、フルトヴェングラー・マニアを完全に満足させるには程遠い。
けれども量的にも、音質的にも一般の音楽ファンには十分過ぎる内容である。
今日を乗り越える友として、掛けがえのない名演揃いである。
フルトヴェングラーの演奏に優劣はない、今聞いているフルトヴェングラーこそ最高で、永遠にフルトヴェングラーの音楽曼荼羅を聞き続けるのだと「スジガネ入りのリスナーが選ぶクラシック名盤この一枚」に書いてあった。よくぞ言ったものだ。
命運を背負った者の重たさを確かに刻む音の曼荼羅



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<span itemprop="headline">川辺の道へこの曲で出る</span>

2011-04-07 01:07:09 | 無題

予約したフルトヴェングラー・ザ・レガシーが待ち遠しい。慢性肺炎で入院している母に頼まれて、フランツ・リスト名曲集、スクリャービンのピアノ作品集、ヨハン・シュトラウス・コンサート、ラヴェル管弦楽集、グリーグ抒情小品集、計三二三〇円を中古で買う。
母は「死因を辿る、大作曲家たちの精神病理のカルテ」で読んだ作曲家たちの曲が入院中のつれづれにどうしても聞きたくなって、フランツ・リストのピアノ曲を買ってきて、スクリャービンも聞きたい、ヨハン・シュトラウスのワルツも良いわね、ラヴェルのボレロも要るわと私に注文するのである。
私は仕方がないのでバスで病院から町まで行き、買い物メモを見ながらリクエストを買い揃えて病院に戻ったのである。
フランツ・リスト名曲集はサイモン・バルト演奏、スクリャービンはエッカルトシュテイン演奏、ヨハン・シュトラウスはボスコフスキー指揮ウィーンフィル、ラヴェル管弦楽集はアンセルメの二枚組、グリーグはアルテ・ノヴァの廉価盤である。母に差し入れしたら歓声を挙げて、これでよく眠れると言っていた。
その母もようやく退院し、父の見舞いに足繁く通っている。
春は新生活が始まる憂鬱な季節だが、アラウのピアノ曲や、予約したフルトヴェングラー・ザ・レガシー、ジンマンのマーラー交響曲全集を聞いて、この日々を乗り越えたい。昨日久しぶりにペーター・マーク指揮のベートーヴェンを聞いたが光があって良かった。
ハイティンクのLSOとのベートーヴェン交響曲全集も、デッドな音響の会場での収録だが、ティンパニーの強打、軽快なテンポで元気なハイティンク節を堪能できる。
ハイティンク盤は音はいいのだが、変則的な曲の組み合わせ、妙な趣味の人体写真のジャケットなど奇をてらった面も見られる。
今日はサヴァリッシュ指揮のメンデルスゾーン交響曲全集を聞いた。特に影のある「スコットランド」が心に染みた。他には「宗教改革」や「イタリア」もいい。

薄暗い闇の中から桜咲く川辺の道へこの曲で出る



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