望子のただいま稽古チュッ!

稽古、公演、プライベート
・・・オバサン役者、木村望子の日々。

ふたつのお守り(昔の話、聞いてくれますか?)

2009-01-14 14:25:15 | 演劇・舞台・小劇場

私の財布に、お守りがふたつ、入っています。

まったく同じものだけど、ひとつは37年前のもの。
そしてもうひとつは、去年のもの。

秋篠寺のお守りです。

秋篠寺は、日本でたった一体だけ、
芸事の神様である、
技芸天の像が残っているお寺です。

   
 
 37年前。
 
  大昔です。 

すべてを捨ててでも、役者になりたい、
と思いつめていた高校生がいました。

そして家族旅行で奈良に出かけたとき、
秋篠寺で、そっと、願掛けをしました。

「役者になれますように・・・」

そして、願いをこめてお守りを買って、
自分の財布にそっと滑り込ませました。
 
3月というのに、雪のちらつく寒い日でした。

                

しかし現実では、
すべてを捨てるなんて、できよう筈もなく、
高校生は、普通に大学に行きました。

芝居の道は、すっぱりあきらめたつもりでした。

それでも、このお守りだけは捨てられず、
お財布を替えても、
そのたびに深いところに忍ばせていました。

               

それから37年(トシがバレる・・・)
去年のこと。

仕事で奈良に行った娘が、
お守りを買ってきてくれました。
 
「芸事のお守りだから、ぴったりでしょ」 と。

「・・・・・」

息を呑みました。

・・・同じお守り・・・。

明らかに新しくてきれいだけれど、
間違いなく、同じお守り。

若い頃、それこそ人生を捨てるくらいの思いで、
芝居への夢を捨てた。
あの当時と同じお守りが、今度は娘の手にありました。

「ちょっと待ってて!」
と、今度は私が、
財布から、お守りを出して・・・、

 不思議な縁で、
    37年を越えて、

新旧ふたつの、同じお守りが並びました。



芝居の道をあきらめた高校生は、
その後、紆余曲折を経て、
結局、役者になりました。

ちっぽけな無名の役者だけれど、
でも役者は役者。
夢は叶ったといえます。

もしかしたら、
どうしても捨てられずに持ち続けた、このお守りに、
私の願いが届いたのかも。

神も仏も信じない私が、ちょっとそんな気持ちになりました。



今では芝居をすることが当たり前になって、
お守りも、財布の中で忘れ去られていました。

いかんいかん。
泣く泣く芝居をあきらめた、若い頃もあったんだ。
今の幸せを忘れたら、バチが当たるぞ。

ふたつになったお守りは、
今度は「初心忘れるな」のお守りにするつもりです。

さぁて、っと!
2倍にパワーアップしたお守りに負けるなよ!
 


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