グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

日本の水を管理してきたもの が。。

2020-02-04 18:58:07 | Weblog
​日本の水を管理してきたもの が。。

水田周りの野焼きや水路掃除がおこなわれていた先週の週末。南九
州の海岸部地方では3月下旬から早期水稲の田植が始まりますから
こういった集落を中心とした共同作業は、水稲作には欠かせない作
業となっているのです。ただ最近気づくのは、こういった作業に参
加する参加人員の少なさ。年々農家戸数が減少しているのですから
まあ当たり前の話ではあるのですが、はたしていつまでこういった
共同作業が続けられるのかと不安になっている昨今です。・・・よ
くとりあげられる最先端の農業技術として、いわゆるドローンや水
田の水回りの自動かん水装置などが取り上げられますが、このまま
農家の戸数が減少していくものならば、そういった最新技術が普及
する前に、水田の水供給そのものがままならずイネ栽培そのものが
続けられない事態になってしまうのではないかと、けっこう本気で
心配しています。ということで今回は2008年前後の水管理につ
いての回の再掲載です。
農業以外の職業に就かれている方や都市部にお住まいの方のなかで、
『日本の用水路・排水路の水管理の問題と、農家は無関係である』
と、思われている方もおおいのではないか、と思います。しかし実
際はちがいます。日本の農業用水は、〔主として〕土地土地の農家
によって構成される水利組合の手によって守られてきたという歴史
があります。そのような“水”の問題に関する、昔からの約束事につ
いてのお話となります。この前置きのほうが長くなってしまいまし
たが/笑、ご参考までによろしかったら。



『春の小川は用水路』

なにげなく見過ごしてしまいがちなのですが、冬の時期に枯れていた
田畑地帯にある小川が春になると流れていることに気づかれたことは
ありませんか。
じつはこれ、自然な小川ではなく農家の手によって人為的に流されてい
る用排水路の場合が多いんですよ。農家を主体にした水利組合の管理
のもと、計画的にながされている農業用水なんです。

田の水を管理する水利組合は、農業生産を行う上で欠かせない用排水
施設の整備・管理や農地の整備いわゆる土地改良を目的として設立さ
れた農家の人たちの組織です。この土地改良区は全国に約7,000・
関係する農家は約300万人・関係する農地は約300万haといわれ
ています。

そんな日本の農業用用排水路の総延長は なんと 約22万km!

この距離は、ほぼ地球5.5周にも達っするのだそうです。現場にい
るわたくしなども、この話しを聞いたときにはさすがにびっくりしま
した。いや、すごいものですね。
今回はそのような、まるで網の目のように、毛細血管のように張り巡
らされた日本の用排水路についてのおはなしです。

田植えに先立つ2ケ月前、水稲農家の苗づくりと並行してこなわれる
のが、集落ごと・水の流れる系統ごとの用水路の清掃です。
イネの栽培がおわってからおよそ半年、繁茂した草や、その後の増水
などで埋まった土砂などが用水路から除去されます。もちろん投げ込
まれたゴミの処理も、当然あります。。

この用水路清掃には、その水利を利用する方たちが参加するわけです
が、かなりな時間と労力がかかります。自分の経験では、ひとつの水
利系統で半日くらいの出役となります。

規模を拡大したり・高齢化の農家の農地を借りたりして田畑を耕作す
る方は、この共同清掃に何らかの形での参加が義務付けされますので、
これがなかなかに大変。耕作規模が大きくなるほど、水路を多く利用
するほど、出役は増えるわけですから、その負担も大きくなっていく
わけです。ですから、これもまた日本の耕地面積の土地集積がおこな
われにくい大きな原因のひとつにあげられますね。

余談ですが・・・農外から農業に進出しようとする企業や、現場を知
らない農業評論家の方には、農業を行うに当たってどうしても必要と
なる このような作業に関する認識が欠けているようにおもえてなり
ません。そうそう、新規就農された方などもまた、こういった就農前
には分からなかった地域の共同作業の多さに驚かれる場合も・・・多
々あるんですよねぇ。

さて話を戻して、そのように管理された水関係の上に成り立っている
イネ栽培をはじめとする農業活動なのですから・・・その水関係の作
業を担っている形の農家の絶対数が減ると、当然ながら農業の生産活
動そのものに支障がでるようになっていきます。そしてこの支障とい
うものは農業活動だけには限りませんよ、それ以上に水に関する災害
がまちがいなく増加していきます。だって、管理不足の用排水路がう
まく流れないようなら、行き場を失った水はあっという間に水路から
溢れだしてしまいますから。

いま、日本の農家さんの戸数の減少や高齢化のスピードは予想以上に
進んでいる。そしてそれは日本の水に関する災害をまちがいなく助長
していくものと考えられますよ。・・わたくしはそうみています〔経
営効率ばかりを重視する“先進的農家”や企業が、前述の集落の共同作
業による管理を喜んで肩代わりしてくれるとは思えない気がするもの
ですから〕。

ということで 今回は『春の小川は用水なのだ』ということ、そして
その用排水の管理が 限界近くに達していますよ、というお話でした。


晴れ バインダーで刈られた長いままのワラの場合は、大雨などで
  田から流出すれば、排水路を詰まらせることにもなりかねま
  せん。​獣害を防止するという点[​こちら​]でも、水害を予防す
  るという観点からも、田起しは重要​
になります。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染」​