アグリコ日記

岩手の山里で自給自足的な暮らしをしています。

冷え体質 3

2012-02-11 09:38:26 | 思い
 「冷え体質」の主要因は毛細血管の退化と自律神経の失調にあるとの前提の上で、ではそれを改善するにはどうしたらよいかを次に述べる。

 まず毛細血管がなぜ消失・損耗するのかだが、これは特に食習慣が深く関わっている。
 まず害をなす筆頭に挙げられるのが「砂糖」。ここで詳しいメカニズムは省略するが、砂糖食や炭水化物の大食は代謝の過程で血液内に骨中カルシウム(ヒドロキシアパタイト)を放出させ、それが血管壁に沈着したり細胞内に浸透したりして、血管の柔軟性を損ないかつ細胞の体熱産生能を低下させる。日常的にジュースや砂糖入りのコーヒーなんかを飲む人や甘いもの好きの人は、ほとんどが冷え体質を持っていると言っても過言ではない。そもそも砂糖は極度に精製された「化学物質」であって、食べものではない。
 高脂肪食、動物性タンパク質の多量摂取も習慣にすれば冷えの原因になりうる。脂肪や余分な炭水化物は粘着性の高い中性脂肪となって血液中を流れ、血管内に付着したり詰まらせたりして特に毛細血管を退化させる。また動物性タンパク質は消化の過程で腸内に有害の物質やガス(例えば硫化水素、ニトロソアミン、フリーラジカルなど)を発生させ、それらが腸壁から吸収されて血中に流れ込むのを避けられない。また順当に消化・分解されたアミノ酸も、体内での窒素代謝の過程でアンモニア、更には尿素へと分解されるが、それら毒性物質を解毒するのに肝臓を酷使し体内酵素も徒に浪費させ、長期的には肝臓の機能を弱らせて体熱産生能も低下する。肝臓が弱れば毒性物質が体内を循環することになり、そうなると体内各部の細胞や組織が損傷を受ける。こうなると冷えどころではなく「病気」である。
 ヒトはタンパク質を消化する能力を持ってはいるが、それは本来植物性タンパク質、あるいはせいぜい植物を食べる際に不可避的に口にする虫などを消化するためのものであって、深刻な飢餓や寒冷化を体験した歴史の中で若干その機能を拡張させたとはいっても、今もって人体は動物性タンパク質を完全に処理する能力を持たない(ヒトの食性については、テーマが異なるし長くなるのでここでは扱わない)。これが肉食に由来する疾患が多い理由である。高タンパク食は冷えに直結しないにしても、長期化・習慣化すると体全体の機能を弱めて結果的に体温調節機能にも影響を与えてしまいかねない。
 また微量でも顕著に体を冷やすモノとして、農薬や食品添加物などの化学物質がある。これらは陰陽で言えば「極陰」に当たるし、悪いことに体内に残留しやすい。特に化学合成された物質はほとんどが同じ性質を持っている。医療用薬剤が体を冷やすことはよく知られているが、もし平均的な食生活をするヒトが一日に口に入れるこれら食品由来の化学物質を集めれば、錠剤一個分の成分量にも匹敵するかもしれない。
 食品ではないが、タバコなどは論外である。あえてここで説明する気にもならないが、タバコの毒性は農薬の比ではない。今日本で主流になりつつある「ネオニコチノイド系農薬」は、ニコチンの毒性を弱めることによって開発されたものである。俗にいう「スモーカーズ・フェイス」とは、皮膚の毛細血管が破壊されたことによってどす黒くこわばってしまった顔のことを言う。慣れればタバコ常習者は一目瞭然で見分けられる。まさか喫煙しながら健康になろうと思う人などいないだろう。
 グローミューも毛細血管も、末端部は直径ミクロン単位の非常に微細な器官なので、体内に入ってきた有害物質や高分子化合物によって容易に損傷を受ける。しかし現代人は見えにくいところで、既に大量の有害物質を体に入れる習慣を作ってしまっている。本来体温高く燃えるような元気を持っているはずの子どもたちも、今や様変わりして、中には見事な冷え体質となっている子がいるのを見てもそれはわかる。そういった子どもの家庭で何が食べられてるかは尋ねるまでもない。今や食生活を抜本的に見直さない限り、蔓延した冷えの問題は解決できなくなっている。
 よく安直に生姜がいいとかカボチャを食べようとか、食品の陰陽表を掲げて体を温めるさまざまなものを勧める本があるが、それよりもまず第一に注意すべきは「悪いものを食べない」ことである。おそらくこれだけで食習慣由来の冷えは快方に向かい始めるだろう。
 ちなみに生姜が体を温めるというのは、生姜の含む薬効成分(例えばジンゲロンなど)が血管を拡張させるとともに体内の褐色脂肪細胞での燃焼を促進して体熱を上げる効果があるからだが、これは簡単に言えば「薬によって一時的に体を温め」ているにすぎない。合成した化学物質のように顕著な害はないにしても、所詮は特殊な成分による薬効作用である。ある面の効果と引き換えに、必ず副作用的なリアクションも存在すると考えた方がよい。更には食品である限り、成分が水溶性であればなおのこと、すみやかに体外に排出される。生姜に頼って体を温めようとすれば、一年中欠かさず生姜を食べ続けなければならない。これこそ自然の理に反していることである。生姜は熱帯地方原産の作物で、四季ある日本ではほとんどの地域で、基本的に秋から冬にしか食べられないものである。
 また陽の食べものによって一時的に体を温めることはできても、体質を変えることはできない。生姜の例と同じことで、年がら年中同じ食物を食べ続けるということがどれほど理に反しているか想像がつくだろう。特定の食べものによって常時体温を維持しているとすれば、体はそれが常にあることを前提に特に自力で体を温める活動をしなくなるものである。つまり体質的には、更に冷えやすい体となる。生姜などを常食する副作用の一つである。

 ここで塩について触れておこう。マクロビオティックでは体を温めるために塩を多めにとることを奨励している。また同じ理由で、水分は控えめにする。生野菜や果物など、体を冷やすとされるものも基本的に避ける。
 実のところ私も長い間、塩多く水少ない食生活を続けてきた。塩は体を温めるという観点からは確かに即効性があり、寒い朝などに味の濃い味噌汁を飲めばたちどころに体は温まる。日本でも昔から北の地方は塩分多く、食養を提唱した石塚左玄なども果物を排除して漬物を多く食べるようにと勧めている。だから特に菜食を心掛けている人の中には、冷え体質を改善しようと塩を多く摂っている人が多い。しかしこれは誤解に基づくものである。塩は実のところ、「温かい体質」を作ってはくれない。
 そのことを理解するために、まずは塩が体に及ぼす作用から見てみよう。
 腸から吸収されたミネラルは、血流に乗って人体を巡る。この時ナトリウム濃度が高いと、体は血中のナトリウム濃度を一定値まで下げようとして、組織液中または腎臓で再吸収した水分を血管に充当する。その結果体内の総血液量は増大し、血圧が高まる。
 さてこの状態がどれだけ続くかというと、塩分感受性の問題もあるが体内から完全にナトリウムを排出するには4~5日間くらいかかるそうである。ここで出た「塩分感受性」とは、簡単に言えば摂取したナトリウムを排出する機能の強弱によるものである。感受性が高ければナトリウムがなかなか排出されないので、血圧は長期間高止まりする。また感受性が低ければ、血圧への影響は少ない。
 塩分感受性には人種差があって、黒人は約80%、白人は30%、黄色人種はその中間、日本人ならばほぼ半数が感受性があると言われている。これはなぜかというと、人類が発祥したアフリカでは塩の供給が難しく、かつ汗をかきやすい環境にあるので、ヒトは体内に塩分を保持する必要があり、塩分感受性型の人が多いというのである。実に人類はその歴史のほとんどをアフリカ内で過ごしているので(700万年前から現生人類がアフリカを出た6万年前まで)、これがヒト本来の基本的な構造になっている。
 反対にアフリカを出て寒冷地に向かった人類の一部は、寒さに耐えること、それと比較的塩が手に入りやすいことも相まって、塩分をそれほど体内に保留する必要がなくなり、徐々に遺伝子が変異して、非感受性の人が増えたと推定されている。
 元々人類は他の動物同様、塩を食べてはいなかったのである。それは今日のように岩塩の地下掘削、塩田、イオン交換膜法、更には煮詰めるに耐える容器などの無かった時代に、塩の入手がどんなに難しかったかを考えても容易にわかる。想像してみてほしい。もし自分が文明の利器を何ひとつ持たずに絶海の孤島に取り残されたとしたら、塩をどうやって手に入れるだろう。周りは海に囲まれているのに、それを「塩」にする手段を見つけることができるだろうか。ましてや大陸の内陸部に同じような状態で置かれたとしたら。岩塩が地上に露出している場所など、地球上のほんの僅かな部分でしかない。
 おそらくヒトが塩を食べ始めたのは、文明がある程度進んだここ数千年(エジプトやメソポタミアの文明から推し量ると、長くても5000年程度)に限られる。それも寒冷地に適応するために、ナトリウムの持つ即効的な体温上昇効果と、冬場の食糧の保存のために使い始めたのだと思う。それと強いて言えば「穀物食」による影響もあったかもしれない。穀物は野菜や果実に比べてミネラル分が豊富ではない。ヒトが穀物を食べ始めたのは、今から1万年ほど前と言われている。またヒトが塩味を美味しいと感じるのは、ナトリウムが本来、人体にとって希少なものだったからだ。
 ちなみに人が塩味を好む味覚は、総じて後天的なものである。それは世界各地で好まれる塩味の度合いが違うことからも、今も世界の各地に無塩文化社会(食物中に塩を加えない食文化)が残ること(例えば、イヌイット、ピグミー族、ケニア遊牧民、オーストラリア原住民、ニューギニア高地民族、ブラジル奥地のヤノマモインディアンなど)からも伺える。私たちが塩を欲しいと思うのは、ひとえに「そう馴らされた」だけなのだ。
 例えば北米を中心にして広がる健康法「Natural hygiene」(訳せば「自然食事法」?)では、数知れないほどの人がほとんど塩をとらない食事で健康体を回復している。生菜食で難病を克服した森美智代さんの摂る量も、一日に3g程度らしい。「塩は必須/必要」という聞き慣れた言葉は、実は人類の歴史のごくごく最近しか見ていない「大きな誤解」に基づくものである。今も塩専売公社から資金を得て活動している研究者に特にそう言う人が多い。

 先に述べたとおり塩分摂取は、一時的にしろ長期的にせよ血圧を高めるが、実はその先、ナトリウムがなぜ体を温めるのかについては、科学ではまだ十分に解明されていない。ただ、細胞外液のナトリウム濃度が高まると、細胞のナトリウムポンプ(神経系の刺激伝達機能)の働きにマイナスの負荷をかけてしまうので、細胞内でのナトリウム濃度が上昇してしまう(本来細胞内にはカリウム多く、細胞外にはナトリウムが多い)。そうなると細胞は脳からの刺激に対して過敏に反応するようになるらしい。例えば寒さに直面して、体を温めろ!という指令が出た際には、通常より極端に反応するのである。もしかしたらそんなところに理由があるかもしれない。
 また、水が0℃で凍るのに対して、海水は塩分を含むために凍りにくい(氷点は-1.8℃)。塩の濃度が高いほど凍る温度は低くなる(氷点降下)という。塩水のそのような性質も、体温保持に関係するかもしれない。いずれにせよ、体温を上げる恒常性維持機能の一部を、ナトリウムは自律神経を介せずに行ってしまうようなのだ。これが体温調節に関するナトリウムの「薬効」である。
 塩は確かに体を温める。それはそれで結構なのだが、しかし同時に、人体は血中のナトリウム濃度を一定の範囲内に維持するという自動機能を持っている(この恒常性維持作用も、視床下部の仕事である)ので、正常値を超えたナトリウムは、やがては腎臓によって濾過され排出されてしまう。よって、血中ナトリウム過多の状態は一時的なものでしかない。ただし塩分を日常的に摂取すれば、ナトリウム濃度を常に高止まりさせることはできる。
 昔オーストラリアの人肉食いの風習のある原住民が、海を越えてやってきた白人の肉はしょっぱくて口に合わない、と言ったのを読んだことがある。このことも、常に塩を食べている人の人体は、そうでない人に比べて体液量、つまり人体内におけるナトリウム総量が多くなっていることを裏付けている。
 また、ナトリウムは摂ればとるだけ排出されるということを裏付けるデータもある。下図は肉体労働をする男子が食塩摂取量を「20g⇒11g⇒5g」と段階的に減らした時の影響を、尿と汗への食塩排出量の変化で見たものである。

「食塩摂取量と排泄量」(
たばこ産業 塩専売版1988.09.25「汗と塩分補給」よりお借りしました。)

 1日20gの食塩を摂取している人は、尿と汗の中にほぼその分だけ食塩を排泄している。摂取量をいきなり11gに落とすと、ややあって1週間もすれば摂取量と排泄量のバランスがまた釣り合う。また更に塩分を減らして1日5gにしても同様である。つまり、塩分はとった分だけ排泄されるだけなのである。
 では人体が本当に必要とする塩の量はどれくらいなのだろう。世界の無塩文化圏において行われた調査によると、なんと一日0.5g程度になるらしい(ブラジルのヤノマモインディアン)。摂取する食品の中に自然に含まれる量である。日本人の平均食塩摂取量が11g/日、WHOの定める食塩摂取目標量が上限6g/日だから、これと比べるといかに世界中で塩を過剰に摂取しているかがわかる。塩は、肉と同様、ヒトの歴史の上ではつい最近食べ始めたばかりのモノであるが、私たちはあたかもそれを「当たり前」のことのように勘違いして多量に摂ってしまっている。

 ナトリウムは体を温めるが、その反面、健康に対するマイナス面も否定できない。誰もが知っているとおり、塩分の摂りすぎで発症する病気は多い。なにしろ体細胞中ではナトリウムポンプの働きが低下し、あわせて体は正常な状態を超える「余分な体液」をいっぱい抱えているのである。これではなにも障害が起こらない方がおかしい。
 塩分過多による疾病は、不整脈や心伝導障害、脳卒中、心肥大、心疾患、胃がんなど数多いが、特に血管を始めとする循環器系に顕著である。それら臓器障害はみな、食塩摂取量が増えるほど直線的に増加することが知られている。これは高血圧かどうか、つまり食塩感受性のあるなしに関わらず、ヒト一様に見られる現象である。それを防ぐには、食塩摂取量は少なければ少ないほどいいと言われる。
 昔は、塩分摂取量が多い地域に高血圧が多いと言われたが、これはそう単純ではない。塩を多く摂っていても、カリウムやマグネシウムを豊富に摂っていれば高血圧になりにくいことがわかっている。だから正確には、ナトリウム多く、カリウム・マグネシウムが比較的少ない食習慣の地域で、高血圧が多いのである。そして塩をまったく摂らない地域(前出の無塩文化圏)では、高血圧そのものが存在しない。ちなみに塩とストレスは、高血圧発症の二大因子と言われている。
 現にマクロビオティックの創始者、「食を極めた!」と豪語した桜沢如一も、72才に心筋梗塞(心臓の血管が狭窄して起こる症状、つまり血管障害による。高血圧と動脈硬化に起因する)で亡くなっている。当時の彼には、塩の効用だけしか見えなかったのだろう。食塩はもちろん非常に悪いのだが、自然塩であろうと過剰に摂れば同じことになる。
 また、腎臓が過剰なナトリウムを排出する過程で、カリウムも一緒に排出してしまうことも見逃せない。これはナトリウムの特性であり、カリウムや水分などにはそんなことはなくて、過剰な分はただそれだけが出されるに留まる。だから野菜や果物、水をいくら飲んでも病気にはならない。しかしナトリウムは違う。ナトリウムを摂取すればするほど、それに倍するカリウムを同時に摂取しなければ、体はカリウム欠乏状態になる。またナトリウム排出は腎臓に負担をかけるので、体内酵素の消耗も大きい。
 反対にカリウムには、過剰なナトリウムの排出を助長する働き(ナトリウム利尿作用)がある。また腎臓の酵素に作用して、血管を拡張する物質を分泌し、ナトリウムによって上がった血圧を下げてもくれる。カリウム自体が余剰な場合はひとりで出て行ってくれるし、ナトリウムが過剰な場合はそれもついでに出してくれる。まさにカリウムはナトリウムと違って健康のために必須であり、仮に過剰に摂ったとしても、役に立つことはあってもなんら苦にはならないミネラルである。
 人体はナトリウムを、容易に再吸収はするが排出しにくい構造を持っている。これは、陸上においてナトリウムを確保しにくかった人類が、体内にあるナトリウムを大切に使うために獲得した仕組みである。このことからも、ヒトは歴史上、常に植物を(大量に)食べ、水分を欠かさず、塩や肉・魚類はほとんど食べなかったことを示唆している。
 だから野菜や果物はヒトに必須の食べものである。対して塩や肉は、無くても生きていける。どころかかえって摂らない方が体にいい。これは科学が発達してここ数十年でようやく解明されたことである。しかし塩産業や食肉産業は既に巨大利権を手にしているので、巨費を投じて学者やマスコミに相変わらず「塩は必要だ!」「肉は大切だ!」と叫ばせている。
 そしてもう一つ、これはとても重要なことなのだが、多量の塩を日常的に摂る食習慣は、冷え体質を助長するのである。塩によって体を温めてきた人は、体の生理作用によってその塩が抜けると、とたんに寒さを感じてしまう。そこでこれはなんとかしないと、と思って引き続き塩の多い食生活を送りがちになる。この習慣が続くと、体は「常時ナトリウムが入ってきて当たり前」という環境に適応して、自力で体熱を産生する機能を弱めてしまう。つまり薬効成分やお風呂の場合と同じく、自律神経の働きが鈍くなってしまうのである。その結果、体は余計冷えやすい状態に置かれてしまう。
 これは塩を湯に入れる「塩浴」などにも言えることである。塩分濃度の高い温泉は特に保温効果が高い。だからそれを真似て塩を家庭の湯船に溶かして入浴したりするのだが、これが「冷え対策」にいいと言うのである。溶かす塩の量はそれほど多くなくとも、入浴後の保温効果や皮膚表面の血流効果が持続することは証明されている。

表は「食塩浴後の皮膚表面温度の経時変化」(「塩の情報室」)よりお借りしました。

 しかしなぜそうなるのかはあまりはっきりしていない。一説には、塩が皮膚表面のタンパク質や脂肪と結合して「錯塩」(さくえん)と呼ばれる皮膜を肌の表面に作り、この膜が、体から熱が放散するのを防いでいると言う。または、皮膚表面からナトリウムが経皮吸収される結果、塩を経口摂取したと同じ効果が生まれるのかもしれない。もしそうなら、これもあくまで一時的に保温効果が得られるだけであって、冷え体質を改善する役には立たない。どころか繰り返せば塩の過剰摂取と同じことになってしまう。
 いずれ四六時中塩湯に浸かっているわけにはいかない。一時の効果をとるか、その時ちょっと辛くても永続的な効果をとるかはあくまで個人の問題ではある。が、残念ながら世の中にはこのように「もっともらしく見えるウソや誤解」が、コマーシャルベースに乗って数多く流れている。
 塩も肉も、体を温めるのに必要な物質ではないし、摂ればかえって害の方が大きい。野生の草食動物は塩も食べず肉も食べないが、多くがヒトよりも高い体温を保って生きている。「カリウム=体を冷やす」公式の間違いである。いずれにせよ生物本来の食べものとも言えない「塩」で体を温めよう、冷えを治そうというのが間違いなのである。

 以上が、マクロビオティック実践者に冷え体質が多い理由である。かく言う私も、塩分多めの食生活に疑問を感じて、ある日を境に思い切って「塩少なめ、水多め」に転換した。すると(他の要因もあったのでそれだけが理由かどうか断定しにくいが)、冷え体質が目に見えて改善したのだ。確かに塩気を無くした当初は体が冷えて震えるほどだった。ここで元に戻していたら、遂に真相はわからずじまいだったろう。しかしその後僅かひと月かそこらで、もうなんとも思わなくなった。「塩が体を温める」という私の信念は、単なる思い込みにすぎなかったことを知ったのである。
 ただ玄米菜食自体は、日本の風土に合ったとても優れた食事形態なので、マクロビオティックの人たちは一般の人に比べて総じて健康度が高い。ただ惜しむらくは、塩の摂りすぎと水分摂取量の不足、それと生野菜の少なさである。水はダメ、野菜は加熱してというのは、塩分過多によって体が冷え気味なものだから、それを補うために編み出された苦肉の策だろう。しかしこれは健康上大きなマイナスである。
 水を少なくすれば排泄機能に支障が出るし、野菜を加熱すれば大事な「酵素」が失われてしまう。酵素については未だ多くが解明されていないが、今のところ、人体内で働く酵素はおよそ5000種以上、それらをヒトは体内で作り、腸内細菌の働きで合成し、あるいは食べものの形で外部からとり入れている。またほとんどの酵素は熱に弱く、48℃~115℃で死滅するという。加熱食だけを食べていれば、外部から補充される分がなくなるのである。
 酵素は近い将来「必須栄養素」に付け加えられるべきほどの重要性を持っている。外部から生きた酵素を摂り入れなければ、ヒトは自己内部の酵素を使うしかなく、その結果早く老いてしまうという。


(つづく)
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