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アグリコ日記

岩手の山里で自給自足的な暮らしをしています。

田植踊り 5

2007-11-29 19:41:16 | 暮らし
ヒャラロロラ ドヒャリトラー ドンドンヒャロ ラーラーラリ チャラレロラ チャラロロ ラーラーラリ・・・・・・  左右に引かれる緞帳の分かれ目から、どことなく哀調を帯びた笛の音が漏れる。続いてそれとは対照的に、霹靂のごとく勇壮な太鼓の響き・・・  いよいよ敬老会の日がやってきた。真夏の二ヶ月間、昼の作業に疲れ果てながらも夜毎稽古に励んだ日々は振り返れば矢のように過ぎ去って、いささか急ごしらえの . . . 本文を読む

田植踊り 4

2007-11-18 15:14:26 | 暮らし
 さて、ジッちゃんから手渡された「芦沢座敷田植踊り」(秘伝書?)は、大部でかつ墨跡も麗しい荘重なものであったが、しかし残念なことに私にとってはその謡いと同じくらい、内容は極めて難解、平たく言えば意味のわからない箇所があまりに多すぎた。しかしこれをタイプアップするには漢字変換の便宜上からも(誤字や現代使われていない漢字が散見された)、最低限の意味だけはどうしても把握しておきたい。 「ジッちゃん、この . . . 本文を読む

小女パウラ

2007-10-29 08:51:54 | 暮らし
 縦長のいかつい窓ガラスが薄陽を滲ませる。天井は高く、昼だというのに青黒く錆び付いたようでいて、視界を中空の靄の中に溶け込ませてしまっている。肉厚の堅い壁も、冷ややかな響きを奏でる床もたぶん石造りなのだろう。四方を居丈高に逼塞させられた部屋の中を、僕は歩き回っていた。部屋を出て、また次の部屋へ。ここはどこか。博物館だろうか。それにしては何かを陳列してるようにも見えない。折に触れすれ違う人々がいて、 . . . 本文を読む

田植踊り 3

2007-09-23 19:43:28 | 暮らし
 ジッちゃんのバイクの音が雨上がりの庭先に響いたのはちょうど麦刈りも終わった頃、梅雨の合間に青空が広がり風に未だ若葉の匂いが滲む時だった。ヨッコイショ!縁台に腰を下ろしたジッちゃんは手にわし掴みにしていた紙の束をおもむろに私の方へと押しつけた。「これ、ひとつ、オメさんのワープロ(PCのことをジッちゃんはこう言う)で打ってくれねがや」開いてみると表紙に、「芦沢座敷田植え踊り」の黒い文字がしたためられ . . . 本文を読む

田植踊り 2

2007-09-19 18:33:36 | 暮らし
 古来より米を主食としてきた日本にあって、年毎の穀物の収穫の多寡は日々の暮らしに直結した最大の関心事だった。各地に残る遺跡には品種改良や基盤整備など、稲作に関連した各種技術の工夫と研鑽の跡がうかがわれるし、現代まで伝承される神事や祭事、各地に伝わる伝統芸能には、なによりも五穀豊穣を祈願する意図が盛り込まれたものが多数認められる。「御田植神事」のみならず「田植え歌」や「田植踊り」「田遊び」「御田」「 . . . 本文を読む

ホテル・ランチ

2007-09-10 20:51:03 | 暮らし
 ある日ひょんなことからホテルの料理人たちとの出会いがあった。それは思い返せばこの春先のことになるのだけれど、それについて書くと話題がそれてしまうのでここでは割愛する。とにかくあの日わが猫家をわざわざ訪ねて来てくれた人は日本料理とイタリア料理の直営店を擁する地元で一番大きい(と、思う)ホテルの総料理長で、どこかに岩石のような職人気質を伺わせ、けれども一面ざっくばらんな風体の中にホテルという一国で供 . . . 本文を読む

田植踊り 1

2007-09-08 20:26:02 | 暮らし
ー鹿躍りや剣舞はどこにでもあるけんど、「田植踊り」はここら辺じゃここしかねえ。  かねがねジッちゃんはそう言ってた。私の住むこの地域ー北上山系と北上川を軸として左右に広がる、平野・盆地を含むなだらかな山岳地帯ーは確かに民俗芸能の宝庫だ。例えば神楽や踊りは数えるのも難しいくらい各地域特有のものが伝承されてるし(ここに限らず、それらは元々小さな集落単位で行われ、保存されてきたものなのだろう)、鬼剣舞( . . . 本文を読む

麦の脱穀 秋雨前線

2007-09-01 09:52:28 | 暮らし
 肌寒い。外出を前にして長袖のトレーナーをはおった。盆明けからこの方、めっきりと気温が下がってしまった。  遅れに遅れていた小麦の脱穀を昨日やっとすませたところだ。すませたと言ってもまだ脱穀機にかけただけ(わが家では足踏み脱穀機を使っている)。これからふるいにかけて稈を除き、唐箕にかけて殻やゴミを飛ばして、更には冬日の滲む縁側で気長に時間をかけて、指先で細かい土くれや虫を選別することになる。今はま . . . 本文を読む

スミナガシ

2007-08-10 19:00:56 | 暮らし
今日のお客さんは、スミナガシ 扉を開けたらひらひらパラリ 玉虫忍者のよそおいで、僕がくるのを たぶん夜明けの頃から待っていた 待ちくたびれたのかい? 大きな羽で、吐く息吸う息 きらめく朝の陽射しの中、玄関先で出迎えてくれた蝶。手元の小さな図鑑を開いてもわからずに、昼に図書館に行ってやっと見つけました。スミナガシ。そういえば羽模様が、目も綾な水墨画のようにきれいだった。 わが家の玄関には時折蝶の . . . 本文を読む

暑さに負けず

2007-08-04 09:32:06 | 暮らし
 木の葉の陰が暗くなる時分、ヒグラシが鳴き始めた。  ああ、今日も終わるんだな。とりあえずビール、とシュワリと泡のはじけるカップを傾けながら、ひと時最盛を極めたひとつのことがまたこうして幕を閉じるというささやかな感傷に浸る。この時間になると流れ落ちる汗も峠を越して、程よい肌の湿り具合がかえって涼しさを呼び寄せる。林の向こうからおぼつかなげな運搬車の音が聞こえる。まだ隣りのおじいさんは働いているみた . . . 本文を読む

ゴボウの木

2007-07-24 20:01:11 | 暮らし
 網戸を通してバイクの軽快な排気音がする。外を見やると向かいの神社の木立からジッちゃんが姿を現したところだった。 「おう!いだが?」  僕は長靴をつっかけて開けっ放しの玄関から庭に出た。膝関節の痛いジッちゃんは歩くよりもバイクで移動する方が楽だ。だから家はすぐそこ、お隣なのだが、こうして用があればいつもバイクに乗ってくるので(冬はそれがトラクターになったりもする)、僕としては耳でその来訪が察知でき . . . 本文を読む

見えない生きものたち

2007-07-15 17:12:17 | 暮らし
 小雨に湿る上り坂道をカエルの赤ちゃんが飛び跳ねている。ピョン、ピョン。体の割には驚くほど遠くまで飛ぶ。みんなたった今生まれたばかりの、おたまじゃくしと変わらない大きさだ(いや、もしかしたらおたまじゃくしより小さいかもしれない。アマガエルのおたまじゃくしって、結構大きいのだ)。それでもちゃんと、色も形も一人前して、生い育った田を巣立ってこれから一匹一匹世の荒波の中で立派に生きようとしているアマガエ . . . 本文を読む

夢を歩く

2007-07-05 14:29:55 | 暮らし
 僕は魚のアラを盛った皿を地面にあけた。犬のスヌーピーは草を掻き分け落ちた切れ端をきれいに、貪るように食べつくす。嬉しかった。彼はややもするとわがままを言って与えられた餌を食べない時がある。同じ種類の魚のアラばかりが続く時などがそうだ。それは猫も同じなのだが、その食餌拒否が単なる彼らのわがままからのものならば(つまり魚が腐っていたとか他の健康上の理由などがない場合に)、それはつまり餌の与えすぎが招 . . . 本文を読む

キイチゴとラーメン

2007-07-02 21:04:25 | 暮らし
春からこの方雨がない。ここ東北地方北部もとうに「梅雨入り宣言」したというのに、でも天気予報の大方は外れに外れて実際のところ絶対的な雨の量が無く、わが家の田んぼに水を引く溜め池も枯れたりまた流れたり、常に喫水線ぎりぎりの状態だ。梅雨のさ中にこんな調子ではこれからの季節、旱魃になること避けられないような気がするのだが・・・ ところで今の梅雨の時期、猫家では年間通して一番果物が豊富な季節なのだ。 真っ黒 . . . 本文を読む

魚のある暮らし

2007-06-05 08:14:07 | 暮らし
世間にいわゆる「流通革命」と言われるものは、これはいいものと安直に言えない反面、また一概に悪いものとも言えない。どうしてかというとこれが実現の背後には紛れもなく化石燃料の消費や夥しい化学物質の生産に助長された深刻な地球の環境汚染があるのは事実であり、また一方ではかつて一般的に手に入りにくかった商品が一層手軽に安価に、しかも品質の良い状態で買い求められるという、夢のような暮らしの現実があるからだ。し . . . 本文を読む