粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

春日部のかぐや姫

2015-03-27 20:08:32 | 一般

埼玉県春日部市といえば、今でこそアニメ「クレヨンしんちゃん」の舞台として全国的な知名度を持つに至っている。しかし、それ以前は桐たんすの生産地と歌手太田裕美の出身地という程度の首都圏のありふれたベットタウンだった。

春日部駅の構内に設けられた市内特産品コーナーにはその桐たんすが現在も展示されているが、いかにもローカルで地味な印象が強い。すぐ近くにあるお世辞にもきれいとはいえない駅の公衆トイレとともにどうしても野暮ったさが残る。自分自身、40年以上前に春日部の高校に通学していたが、その風情は今も当時と余り変わっていない。

ただ、駅から西口へ出ると、二つの大きな商業施設が駅前を活気づかせている。イトーヨーカドーと大塚家具のショールームである。このショールームは大塚家具が1969年に操業したときの1号店店舗である。まさに今日の大塚家具の原点である。そして人口が急増して埼玉県東部の中核都市として発展していった春日部のシンボルでもあった。

開店当時1号店とはいっても、大塚家具はまだ春日部市内で営業するマイナーな家具店にすぎなかった。それがあれよあれよと売り上げを伸ばしあっという間に日本有数の家具小売店に成長した。そういう意味では創業者の大塚勝久氏はスーパーのダイエーの中内功氏に比す人物かもしれない。しかし、中内氏が経営の行き詰まりで不本意な晩年を送ったように、この勝久氏も同じ運命を辿るのだろうか。

今やダイエーブランドが消滅するまでに、あのスーパーは落ち込んでしまったが、こちらの家具店はどうか。かつては「かぐや姫」(家具屋姫)と創業者から溺愛された娘は「今も反抗期」と父親から愚痴をいわれている。その点でダイエーの2代目が父の存在が大きすぎてなんら時代を切り開く力を発揮できなかったのとは違い、この「かぐや姫」は経営意欲は旺盛のようだ。それが吉とでるか凶とでるか。

姫は小学校こそ東京の学校を卒業したが、生まれは春日部で幼少期は地元で過ごしている。同じ春日部の幼稚園児クレヨンしんちゃんは「大人の建前のナンセンスさを浮き彫りにする面白さや、主人公の可愛らしさと本音をズバリと言う爽やかさが、青年誌の読者だけでなく子供や若い女性にも受け入れられた」(ウィキペディアで紹介された漫画評論家村上和彦氏の評価)ようだ。このかぐや姫にもそんなやんちゃだが鋭い感性があるような気がする。いつか、生まれ故郷に錦を飾る日がくるのだろうか。