福島県が行っている18歳以下の子供の甲状腺検査で新たに2人の子供が甲状腺がんと判定された。これで全部で3人となったが、早速反原発派の論者がこの結果を誇大に解釈している。
武田邦彦中部大学教授に至ってはまだ疑いのある7人(今後追加検査が待っている。可能性は高いが)まで、既に甲状腺がん発症者と見なしている。教授によれば福島の子供18万人のうち10人が甲状腺がんだとして計算すると、通常の平均と比較して約10倍になるとしているが、どう見ても強引すぎる。
さらに教授の指摘で致命的なのは、チェルノブイリの事故を1988年4月としたことだ。教授は「チェルノブイリの近くのウクライナ、ベラルーシに限って言えば、明らかに2年後には増加傾向にあります。」としている。確かに教授が提示したグラフを見ると88年と比較すると2年後の90年には明らかに増えている。しかしいうまでもなく事故は86年4月に発生している。実際2年後88年を見るとさほど増えた気配はない。武田教授のこの致命的ミスを今後どう弁明するのか楽しみである。
鈴木真一県立医科大学教授は今回の結果を「甲状腺がんは最短で4~5年で発見というのがチェルノブイリの知見。今の調査はもともとあった甲状腺がんを把握している」と説明している。甲状腺がんの進行度からすると、どう考えてみても鈴木教授の説明が妥当な感じがする。その証拠として、今回の検査で問題だった者の平均年齢が15歳ということだ。原発事故ですぐ影響がでるのなら、外出の少ない乳幼児はともかく、発症する年齢層も広範に及び、平均年齢ももっと低くなるはずだ。やはり潜伏期間最低でも4、5年と見て事故とは無関係と考えた方が理にかなっている。
さらに鈴木教授によれば、「成人の超音波調査では3・5%に甲状腺がんが見つかったとの報告もある」という。にわかに信じがたいが、甲状腺がんの潜伏期間が長く、進行が遅いことを考えると成人になってやっと発見されるケースが多いことは確かだ。ともかくまだ事故以来2年も経たないのに事故の影響を問題にするのは無理がある。反原発派は、日頃「今はなくても20年後、30年後影響が現れる」といったことを口にする。しかし甲状腺がんに限っては早急な結論を出したがるのはいかがなものだろう。
追記:武田教授のブログを再度見たら、福島の甲状腺がんは通常の10倍から50倍といつの間にか上方修正?されていた。分母が18万人から3万8千人になったせいだ。しかしチェルノブイリ事故が起こった年は依然1988年4月のままだ。武田教の信者よ、教祖をいつまでも恥に晒すなどは破門に等しい?