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粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

原発政策、脛かじり息子と即戦力のプロ職人

2014-11-26 20:33:21 | エネルギー政策

来月2日公示の衆議院選挙に向けて、各党が政権公約を打ち出しているが、原発政策では与野党で再稼動を巡って判断が明確に分かれている。自民党、公明党、次世代の党が安全性を確保した上で再稼動は認める。維新の党、共産党、社民党、生活の党は最初から認めない。民主党はまず避難計画を厳格にした上で判断すべきという条件付きだ。

次世代の党以外のほとんどの野党が再稼動を認めず「脱原発をめざすべき」だとは声高に主張している。しかし、考えてみれば、民主党政権時代に原発はストップしてすでに「脱原発」は実現しているのだ。昨年7月から新しい安全基準の下、審査が行なわれているが1年経って九州の川内原発2機がやっと再稼動にこぎつける段階に入った状況に過ぎない。

規制庁は安全審査をもっと効率化してスピードアップを計るようだが、1年でせいぜい2原発計4機程度しか再稼動は進まないだろう。つまり福島の原発事故以前の稼働率にもどるのは最低でも10年は掛かってしまう。現在原発に変わって天然ガス、石油、石炭といった火力発電が日本の総電力の9割を占め、残り1割が再生可能エネルギーである。ただし、そのうち大半が既存の水力発電であり、太陽光や風力発電は全体の2.2%程度にしか過ぎない。原発も動かさないで化石燃料の比率を下げたいのならどうしてもひたすら再生可能エネルギーの発電を増やすしかない。

しかし、太陽光や風力発電が全く不安定な電源であり、それを補完するためには火力発電の助けが必要だ。例えていえば、学校を卒業して社会人として即戦力になって欲しいのに、いつまでの親の脛をかじる自立のできない新成人のような存在である。そんな出来の悪い?息子に日本の将来を任せるわけにはいかない。いつまでも火力の「脛」をかじって甘やかすほど、日本という家庭は裕福ではない。

やはり、仲間の一人が偶々事故ってしまったものの、即戦力のプロ職人の存在=原発は必要不可欠である。確かに原発事故での影響は大きかったが、現在見るところ事故は津波による電源喪失という極めて明確な原因であるようだ。同じ東北でも福島第二原発や女川原発は津波での被害はなくほぼ無傷であったことを考えれば、自分には今の日本にとって原発即危険と決めつけるのは短絡的過ぎると思う。

したがって再稼動はともかく反対というのはあまりにも情緒的であり、こうした絶対阻止を唱える政党は現実性を欠いて世論に迎合するだけで無責任としかいいようがない。誰かこれに反論したいのなら、再生可能エンルギーが「安定電源」に直ぐになりうることを証明して欲しいと言いたくなる。


太陽光発電は結局補助エネルギー

2014-10-16 17:25:19 | エネルギー政策

経済産業省は2年前に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度を抜本的に見直すことを決めた。昨年の時点で全発電量のうち再生可能エネルギーの割合が2.2%であるが、そのうち太陽光発電が大半を占める。電力全体の比率は低いが太陽光発電は制度発足時(それ以前から太陽光発電は普及してきている)と比べると新規増加は50%も増えていてその急成長ぶりが窺える。

これも市場電力価格の2倍ともいわれる高価格の買取優遇制度が大きく影響したものといえる。しかも発電事業を申請した時点での買い取り価格が10年間(最大20年)も維持できるのだからこれほど好都合の話はない。

しかし、太陽光発電の欠点がここへきて露呈してきた。昼夜、気候によって出力が大きく変動する致命的欠陥である。太陽光発電を全量受け入れる電力会社は、不安定な電力に対応するためにぶれの調整に注視せざれるを得ない。そしてその調整が限界に達してきて、最近国内の電力会社がこぞって、再生可能エネルギー事業の新規電力受け入れを中断するという事態となった。

なんと操業はしていないが、政府に申請を済ませた再生可能エネルギー業者の総発電量は現在の国内の総量電力の2割に及んでいるいるというから驚きだ。政府では2030年の時点で9.4%になることを目標していたからだ。これも固定価格買取制度の構造的不備の結果だ。

たとえ、電力受入容量を増やして送電線網を新規整備して、再生可能エネルギー特に太陽光の発電量を増やしても根本的問題は解消はしない。結局、一段と余剰のエネルギーが増える可能性がある。これが脱原発先進国ドイツであれば、隣国に輸出したり、逆に不足分があれば輸入することもできる。しかし、島国日本ではこれがほぼ不可能である。

再生可能エネルギーでも地熱発電やバイオマス発電なら電力が安定しているから期待はもてる。しかし、風力や太陽光は不安定要素が強く蓄電の技術が飛躍的に進むならともかく、補助電源の宿命から逃れられない。もちろんその可能性を否定してはいけないが、原子力発電は当分基幹電源として当面存続せざるを得ない。川内原発再稼動で騒いでいる暇はない。

追記:この問題に関連し川口マーン恵美氏がドイツの最新事情をふまえて日本のエネルギー政策に警告を鳴らしている。

【川口マーン恵美】日本の発電所事情とドイツの最新エネルギー事情

 

 

橋下徹新党と小泉細川連合が合流?

2014-06-28 15:37:06 | エネルギー政策

貧すれば鈍すとはこのことをいうのだろうか。橋下徹大阪市長が関西電力の株主総会で暴論を吐いて久しぶりにマスコミを賑わした。大株主大阪市を代表しての発言だ。

「再稼働なんてやっていたら会社が潰れますよ」「値上げなんて絶対に許しませんよ。原発推進は絶対だめ。いつ撤退するのか」と経営陣に迫った。また発言の終盤で「このままでは(電力)自由化に耐えられず完全に倒産します」と大胆な改革を求めた。(朝日新聞記事)

記事によれば、関西電力は原発事故以来3連連続の赤字を記録し、14年3月期では974億円にも上っているという。これは原発が停止し化石燃料の費用が増大したことによることは明かだ。この苦しい経営事情に対して橋下市長が「値上げは駄目」と主張する理屈がわからない。

大株主であれば、原発を再稼働して経営を安定するよう求めることの方が整合性があるはずだ。それを小泉純一郎・細川護煕元首相連合のように、「再稼働反対」を唱え再生可能エネルギー推進を強調することは、全く現実を無視した幻想に過ぎない。これは脱原発先進国ドイツのエネルギー政策が行き詰まっていることをみればわかる。

橋下氏は270万大阪市民の市政を預かる最高責任者のはずだ。それを引退した政治家の道楽のごとく、無責任な発言をするのは困った話だ。これも日本の維新の会が分裂し原発推進の石原共同代表の厳しい目から解放された(気兼ねする必要がない)ことが原因しているようだ。

テレビ朝日の報道ステーションで恵村コメンテーターがあの苦虫をかみつぶした表情で同様のことを指摘し、橋下市長に苦言を呈していた。朝日新聞の論説委員でもあるこの人物は、一昨年にあった週刊朝日「ハシシタ」騒動で橋下市長には快く思っていないこともあるが、これには自分自身同意だ。

党内の鬼?と袂を分けた後のこのはしゃぎようだ。「倒産します」などと発言するに及んでは、既に政治家を離れて市民活動家のレベルあるいは茶髪の弁護士で喝采を浴びるテレビタレントの次元といえる。

彼が当初掲げた「大阪都構想」は輝きに満ちていた。それを実現するために立ち上げた大阪維新の会も飛ぶ鳥を落とす勢いだった。原発政策も口では脱原発を唱えながら、大飯原発再稼働やがれきの広域処理を受け入れるなど現実的な対応を示した。しかし、国政に重心を置くようになってから大阪市政が停滞し、行き詰まるようになった。

そして今回の株主総会での暴言だ。これまで橋下市長には特別の好意を寄せてきた者としてとても残念でならない。維新の分党も予想外に少ない数だ。結いの党や民主党の一部が合流しても明るい展望が見えてこない。まるで敗残兵が群れをなすといったら酷だろうか。そして小泉細川連合との合流?これは悪夢でしかないが、雹が積もる時節柄だからもしかして…。

 

*当初の表題を変更し、本文の記事を加筆しました。


脱原発の分裂

2014-04-19 21:07:19 | エネルギー政策

都知事選の惨敗にもかかわらず、この二人の元首相は凝りるどころか相変わらず意気盛んのようだ。細川護煕、小泉純一郎ご両人のことだ。今度は脱原発をめざす一般社団法人「自然エネルギー推進会議」を設立するという。発起人はこの二人の他に哲学者の梅原猛氏、作家の赤川次郎氏、瀬戸内寂聴氏ら、賛同人には女優の吉永小百合さんなどが名を連ねているようだ。

ただ、こうした顔ぶれを見ると、全て原子力どころか科学の「ド素人」ばかりで、本気で脱原発を考えているのか疑問が残る。特に瀬戸内寂聴氏や吉永小百合さんなどは昨年暮れの特別秘密保護法でこれまた「ド素人」的な反対表明をして良識派からの顰蹙を買ったばかりである。正直、小百合さん自身は女優としてはファンであるが、こうした情緒先行の言動には幻滅している。

朝日新聞によれば「推進会議」の活動方針①原発ゼロ・再生可能エネルギーの普及促進②原発再稼働反対③原発輸出反対で、細川・小泉両氏の考えが一致しているという。これはいうなれば、現在の安部政権の原発政策に反対する意思表示ということになる。

また具体的な活動内容として福島、新潟、青森など原発関連施設のある地域などを中心にタウンミーティングに出席し脱原発の気運を高めたり、福島県知事選や統一地方選で脱原発候補の支援を検討するという。これもまた、昨年小泉元首相が突然脱原発を唱えだしてその講演をしたり、今年2月都知事選で細川氏を応援したことと符合する。

したがってこの「推進会議」はこれまで小泉氏が個人で行なってきたことを「社団法人化」しただけで内容そのもに新味はない。この秋に行なわれる福島県知事選では2月に見られた選挙カーでの二人の共演が再現されるかもしれない。

しかし、都知事選では「枯れ木も山のにぎわい」(失礼!)であったが、福島では話題性も消えて「山」にはなりえないのではないか。瀬戸内氏と小百合さんを加えて「男女4人爺婆秋物語」では視聴率を稼げそうにもない?

そもそも福島の県知事選に立候補する人は全て脱原発を掲げるのではないか。少なくとも推進派が出るなど「狂気の沙汰」というのが福島の現状といえる。したがって、「脱原発度」の強弱に差があるだけとしか考えられない。

都知事選で細川候補以上得票を獲得した宇都宮健児氏がこうした小泉氏らの動きに対して、選挙戦で脱原発候補を分裂させるだけと批判している。原発問題が重要なテーマになる選挙で小泉氏らがある脱原発候補者を応援すれば、都知事選のように共産党や社民党支援の候補者と競合することは十分あり得る。

これを世間では「漁夫の利」という。もちろん得するのは自民党や公明党が押す与党支持候補者である。これでは安倍首相の援護射撃になってしまう。息子の小泉進次郎を本当は影で支援しているのではないかと小泉元首相にはあらぬ疑いを掛けられかねない。少なくとも脱原発行動を分裂させるだけの意味合いしか感じられない。

ところで自然エネルギーの推進というが、これが想像以上に困難を極めていることを細川・小泉両氏は原点に返って理解すべきであろう。既に再生可能エンルギーが全電力の24%を占めているドイツの現状を見れば分かる。不安定なエネルギーでいまだ社会的に混乱していて隣国の原子力に依存せざるを得ない現実を。細川・小泉両氏がまずすべきことは脱原発「先進国」のドイツを視察することだ。



ドイツに学べない脱原発

2014-03-25 16:08:17 | エネルギー政策

日本が脱原発先進国のモデルにしているドイツでエネルギー政策が厳しい局面を迎えている。今世紀初頭より推し進めてきたドイツの脱原発は日本の事故もあってそれに拍車が掛かった。確かに、既にドイツでは全電力消費に占める再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の割合は23%に及んでいる。(日本は0.6%)

ただ、よくいわれる事だが、こうしたエネルギーは天候、昼夜、季節の違いで発電能力に相当な変動がある。ドイツ在住の作家川口マーン恵美氏のレポートによれば、条件が悪いと発電能力の5%二も満たない場合があるという。したがって電力が足りず、火力をフル稼働したり、電力を近隣諸国から輸入するしかない。

こんな不安定な電力なのにドイツ政府は積極的に導入を進めてきた。特に、固定価格買取制度を採用してこうしたエネルギーを全て電力会社が引き取る仕組みになっている。だから気象条件が良過ぎると逆に電力が大量に余るのだが、この制度によって電力会社が引き取らざるを得ない。

結局今度はこれを隣国に売る事になるが、他国の事情でなく、こちらの事情で売るので他国の需要をオーバーする事が多く、その価格は下がる。前述の川口氏の話だと、最悪只で引きとって貰うケースもあるという。こうしたことで、電力会社の業績を悪化させているのが現状のようだ。

苦しいのは国内の消費者も一緒だ。再生可能エンルギーを固定価格で引き取った分は価格に転嫁できることになっている。隣国で売る電力の価格と国内消費者への電力は全く別ものである。23%と再生可能エンルギーが増えたことによって固定価格で買い取った費用が膨らんで消費者用の電力価格が急増して企業や家系を圧迫する。最近の試算では電力料金のうち20%が固定買取による増加分ともいう。

日本ではあまり報道されていないが、ドイツでは脱原発とはいっても前原発16基のうちまだ9基が起動している。2022年までに徐々に減らしていく予定だ。しかし、安定電源で再生可能エネルギーの欠点を補完しているのがここ原子力なのに、減っていくことには最近疑問や危機感が出てきているようだ。

原子力が後退して、再生可能エネルギーが増えていけば電力料金がさらに電力料金が上がっていく。もちろん電力の供給も余計不安定になって、火力の負担が大きくなり、隣国との輸出入もさらに大拡大する。ドイツが電力を安く輸出して隣国から高く輸入する傾向が強いがそれが今度一層顕著になりそうだ。

ヨーロッパでは脱原発国はむしろ少数のようだ。チュコやポーランドなど続々原発の設置を推進している。ドイツの国内の原発はなくなっても隣国から原発で発電された電力を買うことになる。すでに全電力の8割を占めるフランスとドイツとの電力の輸出入では圧倒的にフランスの供給が多い。

隣国とは電力の売買もできない島国の日本。同じ日本でも東と西さえもなかなか供給ができない。だからこんな不安定な再生可能エネルギーでエネルギー問題が解決できるなどと考えるのは絵空事に近いといえる。まずは安全な原発を再稼働して安定電源をしっかり確保することが先決だろう。もちろん再生可能エネルギーの開発も進めていけばいい。しかし、足下をじっくり見て取り組むべき課題だ。敢えてドイツの失敗に学べと言いたい。