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ふくろう日記・別室

日々の備忘録です。

オルフォイスへのソネット第二部・27

2010-03-10 16:57:04 | Poem
真に存在するのだろうか、破壊する時は?
いつ 静かに横たわる山の上で、それは城を打ち砕くのか?
この心、この限りなく神々に属するもの、
いつ それをデミウルゴスは暴戻に滅ぼすのだろう?

私たちは実はそれほど不安におびえる脆い者なのか、
運命が私たちに実証しようとしているように?
根のなかにやどり、未来をひめて、深い
幼時が――のちには――息をひそめてしまうのか?

ああ 無常というあの妖怪、
邪心なく受け容れる者の内部を
それは煙のように通りぬけてゆく。

私たちがそれである者 漂う者として、
しかし私たちは永続する緒力のもとで
神々の使用にあたいするのだ。

 (田口義弘訳)


 デミウルゴスの原義は「工人」。プラトーンの著作である『ティマイオス』に登場する世界の創造者である。プラトーンは物質的世界の存在を説明するために、神話的な説話を記した。原始キリスト教時代のグノーシス派の二元論によれば、デミウルゴスは感性的世界創造者であって、最高神の下位に立つ。

 「無常性」に対するリルケの問いかけには、二重の構造がみられます。頑固に自己を守ることは必ず崩される。山上の城もやがて崩れる時がくる。このようにすべてのものは無常ではあるが、かつ無常ではないと・・・・・・。
 
 破壊に身を委ねながら、滅尽を逃れる道があることが、このソネット全体における暗示ではなかったか?その暗示が「オルフォイス」ではないか?「オルフォイス」は破壊されることによって、もはや破壊されないものへ変容して、純粋に永久に存在する者なのだから。

 人間は無常であり、過ぎ去ってゆく者であることは自覚できる。それによって「永続する緒力=神々」のもとで、人間はいくばくかの働きかけができるのだろう。このソネット中の5つの「?」に対する答えとして、リルケはおだやかに最後の言葉を差し出しています。

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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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第2部27篇 (タクランケ)
2010-03-10 22:28:47
Akiさま

もうあと少しでありまするなあ。

はるばるときつるものかなという思いです。

わたしのリルケを読み返してみましたが、自讃は聊か恥ずかしきことなれども、満足満足でありまする。

感謝感謝。
返信する
ダンケ (Aki)
2010-03-11 01:00:27
大分、タクランケさんに遅れましたが、どうやら終わりが見えてきました。ずっとお付き合いしてくださってありがとう。

残り2編は下書きだけはしました。
やっと祝杯に近づくぞ♪
返信する
祝杯 (タクランケ)
2010-03-11 06:48:35
おお、今度の土曜日に祝杯をあげませうぞ!
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Unknown (Aki)
2010-03-11 12:56:59
は~い♪ありがとう!

では最終2編を頑張って仕上げませう。
返信する

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