eつれづれ管理者(66kV特高変電所、技術者)

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本当に原発0にしたら...

2018年04月30日 | eつれづれ

厳冬期ドイツの電力不足
さて、今年の冬はそのドイツで不思議なことが起こった。
ドイツ全土で時計が遅れたのだ。テレビや食器洗い機などに付いているデジタル時計である。
こういう、コンセントにつながっている電気器具に内蔵されている時計は電気の周波数を利用して時を刻んでいる。ところが、本来、正確であるはずの周波数が落ちたため、時計が遅れてしまったという。
実は私も自宅の電子レンジの時計が遅れていることに気づいて、もうすぐ電子レンジが壊れるのかと懸念したのだが、そうではなかったらしい。
数日で6分も遅れたというから、ラジオ内蔵の目覚まし時計などを使っていた人は、電車に乗り遅れても不思議はなかった。
では、なぜ、周波数が落ちたかというと流れる電気の量が減ってしまったからだ。
なぜ、流れる電気の量が減ったかというと、電気が足りなかったからである。
電流が落ちると、電圧も周波数も下がる。それを一定の範囲に収めるために、電力会社は常に発電量を調節している。
ドイツは現在、2022年の原発ゼロに向かって原発を止めようとしている。
2015年6月に1基止めたのに続いて、去年の12月31日に2基目を止めたが、両方とも、産業の盛んな南ドイツの原発だ。
寒い国であるドイツでは夏よりも冬に電力需要が増える。
太陽光の発電施設は多く、普段は太陽が照ると電気が余りがちだが、冬は陽があまり差さないので、ほとんど役に立たない。
さらに不都合なことに、冬は凪が多いので風力発電まで止まってしまうことがある。
厳寒となった今年は電気が足りなくなり、待機していた国外の火力まで総動員されたが、それでも供給はカツカツだった。
普段なら周波数の揺れなどすぐに調整できるそうだが今回はそれどころではなかったらしい。
昔、私が子供だった頃は急激な経済成長に電気の供給が追いつかず、ときに電球が揺らめいたことがあったが、現在のような高度な社会では周波数の揺れなど許されない。
電圧や周波数が不安定になると精密機械が故障するし緻密な製品にムラが出る。
メルケル首相は最近さかんに「EUの電力統合」ばかり言っている。
早い話が、EU国家間の送電線を強化して電気のやりとりのパイを増やそうということだ。
これからさらに7基の原発を止めれば、電力不足が深刻になるのは想定済みなのだ。

切羽詰まった東京電力
ところで、厳寒時の電気不足は実は今年、関東でも起こっていた。
太陽光パネルには雪が積もり、その後も雪が溶けるまで発電はほぼゼロだった。
しかも皆が暖房で電気を使う。
まさにドイツの冬状態になってしまっていたわけだ。
東京電力の送配電会社「東京電力パワーグリッド」では供給がギリギリになり他の電力会社から7日間、応援融通を受けたという。
また、各電力会社は一部の大型需要者との間に、供給が足りなくなりそうなとき使用を減らしてもらう、あるいは、使用時間をずらしてもらうという契約を結んでいる。その代わり、電力料金を少し値引きしているそうだが、東京電力ではその要請を今年の冬は13回も行った。
契約では年間12回までだったが、それを1回オーバーした。
それほど切羽詰まっていたということだ。
東京電力の管轄である首都圏で、供給が需要に追いつかないというような事態が数秒でも起きれば何が起こるか?
まず周波数が低下し始めると、広域のブラックアウトを防ぐため、緊急に一部の地域を送電線から切り離して停電させることになる。
それでも周波数の低下が止まなければ発電機が故障予防の措置として自動的に停止し始める。
それが連鎖反応を起こせば本当にブラックアウトが起こるという。
これらはしかも、数秒単位で進む。万が一、首都圏でそんな事態になれば修復に数日かかる可能性もある。産業界は未曾有の被害を受けるだろう。
電気は常に、現在の需要に合わせて発電しなければならない。だから電力会社は、最低でも大型火力発電所が突然1基不調になって脱落しても大丈夫なぐらいの余力は見込みながら、発電量を、瞬時、使用量に合わせているわけだ。

すべての安全保障に直結すること
私がこれまで常に訴えてきたのは太陽光と風力の発電は、いくら施設を増やし、年間の総発電量を上げたとしても、いざという時ゼロ近くに落ち込んでしまうので、必ずそれ以外にも、最大需要量を賄う発電施設を確保しておかなければならないという不都合な真実だった。
そして、その、いざというときの火力発電所は普段、再エネが発電している間は、発電を抑えなければならない。
使える火力を使わずに、いつでも使える状態で待機させておくというのは経済の観点からいえば、ありえないことだ。
はっきり言って、そんな市場で生き残れる火力発電所はない。
結局、そのしわ寄せは消費者にくるし、また、安価で安定した電気が保証されなくなった産業界にくる。
それが、今年の冬、現実となった。しかも、この状態は、いくら電力事業を自由化しようが変わらない。
エネルギーの安全保障は、すべての安全保障に直結することを私たちはそろそろ真剣に考えるべきだ。
ドイツのように隣の国と送電線を繋げて足りない時は高くても買い、余った時は、お金をつけてでも引き取ってもらえるという恵まれた国とは一緒にならない。
私たちは、この島国の中で、完結した電力システムを作り産業を回し生活を守らなければならない。
有効で安価な蓄電方法がまだ現実となっていない今、再エネ電気だけで産業国がやっていけないのは、ドイツの例を見ればすでに明らかだ。
そんな中で、原発をゼロにすれば、結局は火力依存になる。
石油もガスもない日本が火力に依存するということは、他国に依存するということに等しい。日本のエネルギーの自給率は、たったの8%だ。石油やガスの輸送が滞ったら、いや、値が上がれば、どうするのか? もう少し、国益を見据えた現実的な議論はできないものだろうか。

バカの1つ覚えの如く、再生可能エネルギーで賄う...こんな気ままな電力では全く持って使い物にはならないのは当たり前の事。
昼夜問わずベース電力(石炭、石油、LNG火力)が運転しているので、こんな不安定な電力は電力会社から言わせれば不用なのだ。
再生可能エネルギー推進する学者などアテにも何もならない、踊らされてはNGだ。
一回、都心で大規模な停電があれば、元通りに立ちあげるまで数日は要するだろう。
経験させて見ることだ。
国民、会社負担の再生可能エネルギー賦課金、これがあればこそ、やっていける世紀の愚作は早急に止めて貰いたいものだ。


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