BIN山本の『映画にも程がある』

好きな古本との出会いと別れのエピソード、映画やテレビ、社会一般への痛烈なかくかくしかじか・・・

不 服 従

2008年10月10日 | 古本
 いつもの四店、古本屋チェーン店めぐりは新たな出会いも
乏しく、相変わらずのベストセラー流れ部類ばかりになってきた。
陳列棚にはそれらしい顔つきで大量に鎮座しているのだが、百円
コーナーはほとんど収穫がなくなってきた。そこで思い切って市中心部の核店舗
に足を向けた。規模が大きいとそれだけ百円コーナーの棚数も多い。だが百円
コーナーは何処へ行っても百円コーナーの顔つきで、大差がないことが分かった。
 ただしそこにはクォーター本コーナーがあった。だいたい350円がめどで、
すこし新し目の本が並んでいる。といってもアタシの偏狭な読書傾向にそった本
が、豊富に並んでいるわけではない。
 冊数が多くても、その店での唯一の収穫は、下記の二冊だった。
「独航記」「永遠の不服従のために」いずれも辺見 庸さんの著作だ。

 「コヤニスカッティ」という映画のVHSを持っていたハズだが、いま何処を
探してもない。誰かに貸して戻っていないのか、返せと云うのを忘れていたのか、
あるいはアタシの方が誰かに借りて、返すことを忘れていなかったという、その
どれかだ。ともかくその映画のことが「永遠のー」に載っていて、思い出した。
<生々流転というほど静かではない。やみくもにエネルギーを蕩尽しては、創造
と破壊の両方に狂奔する人の世を、カメラは、嘆きも怒りもせずに、ほとんど虚
無の眼で見つめていた。台詞もナレーションもスーパーインポーズもない。思い
は、映像を見る者の胸にゆだねられた。サンフランシスコでは、スクリーンを見
あげたまま、とめどなく涙を流している老婆がいた。あれは、喪の映像だったの
だろうか。>と辺見氏が書いている。もしかして涙を流していたのは、辺見さん
自身ではなかったのかと思うのだが・・・。
「コヤニスカッティ」監督はゴッドフリー・レジオ 1982年(86分)題名
はアメリカインデァン、ホピ族の言葉で「バランスを失った世界」という意味で、
映画の中では音楽としてお経のように繰り返される。確かに〔喪の涙〕が流れ、
虚無的だと嫌う仲間もいたが、アタシには忘れられない作品だ。

 「独航記」 著者 辺見 庸  角川書店  定価1800円+税
  ( 平成11年11月30日 初版発行 )
 「永遠の不服従のために」著者 辺見 庸 毎日新聞社 定価1429円+税
  ( 発行日 2002年10月10日  写真は 中平 卓馬 )


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。