帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百四十二〕ことに人にしられぬ物

2011-12-01 00:09:35 | 古典

  



                                    帯とけの枕草子〔二百四十二〕ことに人にしられぬ物



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百四十二〕ことに人にしられぬ物


 文の清げな姿

 とくに人に意識されないもの、万事に凶の日。他人の女親が老いている。


 原文

ことに人にしられぬ物、くゑ日、人のめおやのおいにたる


 心におかしきところ

とくに男に気付かれないもの、女の苦穢の日。女のめとかが、感極まっている。


 言の戯れと言の心

 「しられぬ…知られない…意識されない…気付かれない」「くゑ日…凶会日…万事が大凶の日…凶合日…合うのは苦で穢れた日」「人…人々…他人…男…女」「めおや…女親…めをや…め、とか」「め…女」「や…疑問の意を表す」「おい…老い…年齢の極み…追い…もの事の極み…感の極み」。


 おひ(おい)の孕んでいた意味には、「極まる、感極まる」などという意味もあった情況証拠を、歌での用いられ方で示しましょう。


 古今和歌集 巻第十七 雑歌上 在原棟梁

 しら雪のやへふりしけるかへる山 かへるかへるもおいにける哉
 
(白雪の八重に降り敷いた、かえる山、返す返すも老いたことよ……白ゆきの八重に降り敷いた、返る山ば、繰り返し感極まったことよ)。

 「白雪…白髪…おとこ白ゆき…おとこの情念」「山…山ば」「おい…老い…極まり…感の極まり」。


古今和歌集 巻第十七 雑歌上 敏行朝臣
おいぬとてなどかわが身をせめぎけむ おいずはけふにあはましものか

 (老いたといって、どうして我が身を恨み嘆いたのだろう、老いなければ、今日の日に逢えるだろうか……極まってしまったのねといって、どうして、貴女は・我が身を恨み嘆いたのだろう、感極まらなければ、京で合えるだろうか)。

 「おい…老い…極まり」「けふ…今日…京…山ばの頂上」「あふ…逢う…合う…和合する」


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新日本古典文学大系 枕草子による。