帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第九 羇旅歌 (416)夜を寒みをく初霜をはらひつゝ

2018-02-15 20:51:19 | 古典

            

                      帯とけの「古今和歌集」

                      ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観に従って「古今和歌集」を解き直している。

貫之の云う「歌の様」を、歌には多重の意味があり、清げな姿と、心におかしきエロス(生の本能・性愛)等を、かさねて表現する様式と知り、言の心(字義以外にこの時代に通用していた言の意味)を心得るべきである。藤原俊成の云う「浮言綺語の戯れに似た」歌言葉の戯れの意味も知るべきである。

 

古今和歌集  巻第九 羇旅歌

 

甲斐国へまかりける時、道にて、よめる 

                躬恒

夜を寒みをく初霜をはらひつゝ 草の枕にあまたたび寝ぬ

(甲斐国へ使者として行った時、道中にて詠んだと思われる・歌……かいのせかいへ逝った時、路にて詠んだらしい・歌)みつね

(夜が寒いので、初霜を払い除けつつ、草の枕で、何度も旅寝した……夜の営み寒いので、早い白いもの払い除けつつ、我妻と数多度、共寝してしまった)。

 

 

  「かひのくに…甲斐の国…京より十数日かかる東の国…国の名などは戯れる。貝のくに、おんなのせかい」「道…路…おんな」。

「初霜…初めての霜…初の白いもの」「はらひ…払い…掃ひ…取り除き」」「草の枕…旅寝…共寝」「草…言の心」「あまたたび…多数度…何度も」「寝ぬ…寝た…旅ねした…共寝した」「ぬ…てしまう…してしまった…完了した意を表す」。

 

夜が寒いので、初霜を払い除けつつ、草の枕で、何度も旅寝した――歌の清げな姿。

任務のために行く羇旅、心細い旅情。

 

夜の営み、心寒いので、早い白いもの払い除けつつ、我妻と数多度、共寝してしまった――心におかしきところ。

山ばでの我妻との別れ、おんなは早い白いものに心寒い、あまたたび、逝き果ててしまうおとこのさがの詠嘆。

 

 

(古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による)