帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第五 秋歌下 (281)佐保山のははそのもみぢ散りぬべみ

2017-10-04 19:17:34 | 古典

            

 

                        帯とけの「古今和歌集」

                       ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観に従って、古今和歌集を解き直している。

歌の表現様式を知り、言の心を心得る人は、歌が恋しくなるであろうと、貫之は言った。

優れた歌は、心深く、姿清げで、心におかしきところがあると、公任は言った。仮にも数百首解いてきた、全ての歌に清げな姿と心におかしきところがあることがわかった。深い心と、三拍子揃うことは至難の業らしい。

 

古今和歌集  巻第五 秋歌下281

 

題しらず              よみ人しらず

佐保山のははそのもみぢ散りぬべみ 夜さへ見よと照らす月影

題知らず                 詠み人知らず・匿名で詠まれ女歌として聞く  

(佐保山の、ははその木のもみじ散ってしまいそうね、夜さえ見よと照らす月の光よ……すばらしい男の山ばの、はァはァ、そのも見じ、散ってしまいそうね、夜も見るって、照らす、つき好みおとこよ)

 

 

「さほやま…山の名…名は戯れる…さ男の山ば…すばらしいおとこの山ば」「ははそ…木の名…もみぢは黄色で薄いとか…はァはァ…息切れの様子」「もみぢ…もみじ…秋の果て…飽きの果て…も見じ…も見ない」「も…強調「見…見物…覯…媾…まぐあい」「じ…打消の意志を表わす」「よ…(命令形に付く)よ…感嘆。感動を表す」「月…つきひとおとこ…突き好みおとこ」「影…光…陰…陰…おとこ」。

これらはまさに、浮言綺語の戯れである。

 

佐保山の、薄い色のもみじ、散ってしまいそう、夜さえ見よと照らす月の光よ――歌の清げな姿

さおの山ばの、はァはァ、そのも見じ、宵のうちに散ってしまいそう、夜も見るって、照らすつき好みおとこ・感激――心におかしきところ。

 

女のエロス(生の本能・性愛の感情)の本音が心におかしきところに顕れている。これが歌の真髄だろう。

 

古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による)