Full View/Wynton Kelly
(Milestone MSP9004)
(Milestone MSP9004)
Wynton Kelly, 彼のピアノには今まで何度となく自然に体を揺らされる体験を味わわせてもらいました。もうジャズを聞き始めてから30年間ずっとこの現象は、自然に起こっ て来るのです。もちろん、彼のbestは"Kelly Blue"かVee Jayの3枚のアルバムのどれかを挙げる方が多いでしょうが、リーダーアルバムだけでは彼の魅力のごくほんの一部しか楽しめてませんよね。こんな思いの ジャズファンは自分をはじめ本当にたくさん居るのではないでしょうか?彼のキャリアで最も有名なのは、何と言ってもマイルス・デイビスのグループでの仕事 である事には皆さん異論のないところでしょう。他にもビッグネームとの共演はガレスピー、キャノンボール、ダイナ・ワシントン、ロリンズ、ウェスなど、数 えたらキリがないほどです。それぞれのアルバムで、彼のシングルトーンのスウィンギーなピアノ、いわゆるケリー節をきいて知らないうちにリズムを取った り、頭を振ったり、大きく身体を揺さぶったりして来た訳で、こうやってみると自分のジャズ観への影響ははかり知れないものがあるなあ、なんて改めて思って しまいます。
さて、今日のアルバム。お持ちの方も多いですよね。フルビューと題されたケリー晩年の作品です。自分と同じ思いを持っていたオリン・キープニュースがケ リーのすべてを出してやろうと制作した入魂のアルバムです。ドラムにマイルスバンドからの盟友ジミー・コブ、べースは若手のロン・マックルアです。演奏曲 もバラエティに富んでおり、すべてが5分以内の曲ばかりででとても聴きやすい作品です。おなじみ枯葉や自作のブルース"Scuffflin'"ではスウィ ンギーなケリー節を、バラードプレイをfeatureした2曲(ダイナのバックでさんざん弾いた"What A Difference A Day Made"と"Born to Be Blue")ではリリカルなタッチを聴かせてくれます。ジャズの聴き始めた頃に、新潟ジャズ・フラッシュのマスターがよく聴かせてくれたアルバムで、懐か しいですね。全編リラックスした演奏で、疲れた時などについ聴きたくなるアルバムですね。カバーの相変わらずとぼけた表情のケリーが印象的ですね(笑)