例えば、体育のマット運動の授業。課題は「後ろ回り」。
グループ活動を巡視している際に、Aグループが両手の平の形やマットへのつき方に注目し、練習方法を工夫しているのを見つけたとする。
この手の平については、後ろ回りを達成する大きなポイントの一つである。
だから、Aグループを個別に誉めるのではなく、ぜひクラス全体にも注意をうながしたい。
「全員、いったん練習をやめて・・・」
と、活動を中断して全体指導することもできるが、この集中して練習できているよい雰囲気まで壊したくはない。
そんなときの攻略法は、これだ!
誉めたい子と一番離れたところへ移動し、そこからその子を具体的に誉める!
である。
こんな場面では、思わずAグループの横で、小声で「いいところに注目したね。」と言葉をかけてしまいがちである。
そうではなく、ちょっと不自然な感じがするが、ちょっと首を伸ばしてのぞきこむようにしながら、Aグループを一番遠くから誉めるのである。
「Aグループ、両手の平に注目しましたね!そこはとても大事ですよ!どんな形をつくればいいか!どんなふうにマットにつけばいいか!見つけたら教えてね!」
こうすることで、この話題は先生とAグループだけの話題ではなく、クラス全体の話題となる。そして
1 他の子たちも「自分はどうだっけ?」と手の形を確認できる
2 形が悪ければ、先生に注意されたわけでもなく、自分で訂正ができる
3 きれいな形ができていれば、間接的に誉められたような気分になれる
4 Aグループは、みんなの前で誉められたようで、個別に誉められるよりうれしい
5 途中で活動を中断することなく、自然と教師がうながしたい注意をクラスに広められる
不思議であるが、先生が「みんな、手の形に気をつけましょうね。必ずこのように…」と、大きな声で指導するより、上のようにだれかに話しかけるような言葉の方が、子どもたちには届きやすい。
コツは、こんな場面では、できるだけ具体的に誉めることである。
「すごいね~!」と誉めるだけでは、他の子にとったは単なる雑音になる。
意図的に、指導したいことを具体的に誉めることで、それはクラス全体を指導することへとつながる。