湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

場所の詩パート12

2016-12-31 00:00:28 | オリジナル
共通テーマ「場所」でTが書いた詩を投稿します。

秘密

うす暗い二畳の部屋で
ふたり 赤ん坊程の大きさの人形の服を脱がせた
部屋の中にも霧雨が降っていて
ブラウスとスカートを脱がせるのに時間がかかった
かれは 大きなイヤホンの中央にクリップをつけ
聴診器のかわりにして
胸と背中にあてた
それをはずすと腹に手をあて
ポンポンと軽くたたいた
「かぜです 注射します」
ガラスのスポイトの注射器が人形の
腕に押し付けられた
それからまた ふたりで服を着せた
雨は少し強くなって
今度は私の番になった
濡れてひっついているTシャツをひき上げ
かれに背中を向けた
かれの湿った手が肩におかれ
聴診器があてられた
胸のふくらみはまだなかったが
私は前を向かなかった
かれもそれ以上は診なかった
ほとんど無言で行われた九才の
雨の日だけの密かなあそび
私が聴診器で診るときもあった

あの湿った部屋には
情事のあとのけだるさまで漂っていた

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