湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

プロ/アマの詩パート2

2021-12-05 09:42:43 | オリジナル
共通テーマ「プロ/アマ」でAが書いた詩を投稿します。

凡庸な一エディターの話

子どもは泣くものだ
成長すれば泣く頻度は減る
彼女はなかなかそうならなかった
すぐ泣いて 一度泣けばずっと泣いた
泣いている我が子に
母は喧嘩腰
父は困惑顔

彼女が身ごもったとき
図書館に通って育児書を読み漁っていると
母は「頭でっかちになっても子育てはできないわよ」と言い
父は「手許に置きたい育児書を買ってあげるよ」と言った
彼女の親は本だったので
親と思える育児書を一冊ねだった

母の言うとおり
赤ん坊は理屈ではどうにもならなかった
発達が緩やかな幼児をみて
保健師は彼女のせいにした

――アマチュアの親に育てられ
アマチュアの保健師に指導されるのか――
育児雑誌に投稿した憤慨が反響を呼び
彼女はその雑誌のライターになる
十年後
代表的育児誌編集部のデスクに
彼女の子どもは 母の背中をみて
彼女よりまっとうな人間になった
コメント
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