湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

紅葉坂

2021-12-02 18:03:56 | 文学
帯の間にはさんだままにしておいた新聞の切り抜きが胸を焼くようだった。葉子は歩き歩きそれを引き出して手携にしまいかえた。旅館は出たがどこに行こうというあてもなかった葉子はうつむいて紅葉坂をおりながら、さしもしないパラソルの石突きで霜解けになった土を一足一足突きさして歩いて行った。
…と、有島武郎「或る女」に出てくる横浜の紅葉坂。

葉子のモデルは国木田独歩の最初の妻、 佐々城信子。独歩をモデルにした人物は木部孤笻という名で、作者自身も古藤義一という名で登場します。
引用文の中で葉子が持っている新聞には、アメリカ行きの船中で出会った妻子ある船の事務長、倉地三吉(モデル武井勘三郎)とのスキャンダルが報じられていました。これによって二人の生活は窮迫していくことになるのです。

紅葉坂の頂上の紅葉ケ丘には神奈川県立図書館があります。
隣接する県立音楽堂と共に、今年神奈川県の重要文化財に指定された前川國男の名建築です。
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