湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

坂&砕くの詩

2021-08-21 20:35:03 | オリジナル
共通テーマ「坂」「砕く」でTが書いた詩を投稿します。

時の棲む場所

坂を下りる時
転ぶから と手をつないでも
二才の君はふりほどいて
いつも走り出した
スピードが出ておもしろいのだ
幾度転んでも笑って起き上がった
あの頃 私達の前には打ち砕くものは
何一つなく
一日は君の笑い声の中で過ぎていた

きょう久しぶりの坂の傾斜に驚きながら
夫と二人注意深く歩いた
君は今 社会のただ中を走っている
私達のうしろには
砕け散ったたくさんの残骸が落ちている
それらは風に吹かれ やがて
塵となって消えてしまうだろう
坂の下には
四十年前に住んでいたアパートが今も建っていて
きちんと使われていた
コメント
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