湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

暴くの詩パート1

2020-10-02 12:39:54 | オリジナル
新しい共通テーマ「暴く」でAが書いた詩を投稿します。

舞踏への小序曲

妙に明るく水はけのいい 
白い部屋の真中で
消毒済のベッドから
四角いアルバムを手渡す
――サティですね――
彼女は微笑んで
手際よくCDをかけ
私に麻酔をかける

ジムノペディの数小節が
耳に届くか届かないうちに
すべての感覚は霧となる
仮死状態から蘇ると
暴かれた私の腹は
乱れた芳しい時を切除され
縫い閉じられた後だった

二十のピアノ曲が流れる間に
毒でも薬でもあった過去が取り除かれ
懐かしい胆汁ではちきれんばかりだった
傷んだ私の一部は
清潔な手術室から持ち去られた後だった

腹部の音程と音量は
その後一年間 ある一定を保つ

縫い跡も消えた二年目からは
また 踊る 日々を
コメント
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