湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

潮の詩パート5

2019-08-17 08:57:22 | オリジナル
共通テーマ「潮」でAが書いた詩を投稿します。

反古の森

わたしの筆圧を優しく受け止める紙とペンが
ある日 悉く消滅した
書きつけようとするペンを
紙は引っ掛けて動かなくさせる
あるいはつっと逸らして跳ね返す
潮が引くように
わたしは一言も一句も書けなくなった

これでは泣かない嬰児だ
反駁できない冤罪逮捕者だ
生き延びようとするなら
嘘の同意を求めて
偽証するしかない

しかし、待てよ
少し前まで苦労なく
書き散らしていた文字に
調べはあったのか
感情はあったのか

最初から小器用なわたしは
わたしにとってのわたしでも
誰にとっての誰でも
なかったのではないか

もちろん遺言は残せなかったが
わたしはわたしを
反古の森に埋葬した

わたしの言語は悉く分解し消滅した
それはそれで気持ちのいい眠り
枝々には瞬間を生きる囀りがある
コメント
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