湘南文芸TAK

逗子でフツーに暮らし詩を書いています。オリジナルの詩と地域と文学についてほぼ毎日アップ。現代詩を書くメンバー募集中。

風の詩パート2

2018-08-06 10:16:20 | オリジナル
共通テーマ「風」でAが書いた詩を投稿します。

エスの井戸

風が巻くラビスタビルの前を歩いていて
一階の柳澤葬儀社に吸い込まれ
店の奥に開いている風穴に吸い込まれる

微かに見える穴の口に向かって
父母の名を呼ぶ 
失われた私を返せ と叫ぶ
闇が招く
過ぎたことはもう忘れなさい 
底まで降りて来なさい

具体的に希望したことはできる
家から逃げるのなんて簡単だと
思ってしまった
わたしの浅はかさ

失策をごまかし
小さな成功を過剰に評価し
転がってきた年月の間に
深くなってしまったのだぞ 
この穴は
もう埋めることはできない

まだ底をつかない
芝居がかって
あ~~~ と
息が続くまで適当に叫んで
上を向いて
下に向かって
飛んでいく

わたしの 甘くて悪い癖
それでも機嫌がよければいいんだよ
機嫌のいいうちに詩集を出さなくちゃ
穴の横で煙草をふかしながら
エスが言う
コメント
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