ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

輝く!ピロデミー賞2007

2007-12-29 22:44:05 | ピロデミー賞
全国5,6人のピロデミーファンの皆さま、お待たせしました。年末のお楽しみ、4回目を迎えたピロデミー賞各賞の発表です。


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『リトル・ミス・サンシャイン』(米/監督ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス)
『それでもボクはやってない』(日/周防正行)
『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(米/ロバート・アルトマン)
『クィーン』(英仏伊/スティーブン・フリアーズ)
『善き人のためのソナタ』(独/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(日/吉田大八)
『夕凪の街 桜の国』(日/佐々部清)
『ヘアスプレー』(米/アダム・シャンクマン)
『ボーン・アルティメイタム』(米/ポール・グリーングラス)
『やわらかい手』(英仏独ベルギー/サム・ガルバルスキ)

 今年は例年に比べて映画鑑賞はやや控えめな感じだった。見逃したのもたくさんあるし。アジア映画はほとんど観られなかったし。新宿にシネコン出来たし、シネコンで観た映画は増えたし。そんな中だけど十本選んでみました。
 長いブランクを経て周防監督が帰ってきた。痴漢冤罪という我が身にも降りかかりそうな社会問題をユーモアに怒りを込めて世に送り出した。よくよく考えなければならないのは、原爆の痛みは今も続いているという『夕凪の街 桜の国』。3人の女優のスッとした立ち居振る舞いに、世代をつなぐことの大切さを感じた。薬害肝炎の問題にも通ずるものがある。現代史を描いた『クィーン』『善き人のためのソナタ』の2本は、説得力のある物語を見せてくれた。テンションが突き抜けていたのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』。田舎の閉塞感とサトエリの勘違い女の対比が笑える。
 ロバート・アルトマン監督の遺作となった『今宵、フィッツジェラルド劇場で』。監督なりの「さよなら」の仕方だったのかもしれない。

【最優秀女優賞】
マリオン・コティヤール 『エディット・ピアフ ~愛の賛歌~』エディット・ピアフ役
捲し立てるような口調、ステージに賭ける姿、気迫の一言に尽きる演技だった。

【最優秀男優賞】
ウルリッヒ・ミューエ 『善き人のためのソナタ』ヴィースラー大尉役
無表情の中に訪れる春の息吹を体現。映画を観た一ヶ月後に訃報を知った。合掌。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
『点と線』
昭和30年代の影を描いた力作。怒りとも嘆きともつかないラストに深い闇を見た。

【海外ドラマ賞】
『ザ・ホワイトハウス4』
 選挙戦から再選、サムの出馬と飽きさせないストーリーとキャラクターたち。シーズン5以降の日本放送を強く求む。

【最優秀女優賞】
フェリシティ・ハフマン /『デスパレートな妻たち』リネット・スカーボ役
マーシア・クロス /『デスパレートな妻たち』ブリー・バン・デ・カンプ役
 一見コメディに見えて、そこに潜む人間の業をシリアス交えて好演。

【最優秀男優賞】
キーファ・サザーランド /『24 シーズン5』ジャック・バウアー役
 シリーズ最高のアクションだけでなく、極限に追い込まれるジャックの深い苦悩も表現。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『蒼き狼 地果て海尽きるまで』
 最初から最後まで東映特撮モノのようなチープさ。30億も掛けたのに。さすが角川春樹。
『恋空』
 観てもいないけど、女子中高生がスンスン啜り泣いてる姿を見て。場内が散らかりすぎて清掃に苦労した。

【タジー女優賞】
沢尻エリカ
菊川怜 /『蒼き狼 地果て海尽きるまで』ポルテ役
 今年の沢尻サンは文句なしの受賞でしょう。作品とか関係ねぇ。セルフプロデュースの上手さに脱帽。2年連続受賞、おめでとうございます。菊川サンは、フツーに大根役者でした。 そういや一昨年のタジー賞差し上げた香椎由宇が結婚したね。なんだか。

【タジー男優賞】
織田裕二 /『椿三十郎』椿三十郎役
 世界陸上と自伝出版分も上乗せして。クサイ台詞のたびに笑わせていただきました。こちらも2年連続の受賞。来年も期待しております。

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今年もお付き合いありがとうございました。
皆さま、よいお年をお迎えくださいませ。。。

『愛の予感』

2007-12-27 01:26:34 | 映画
ロカルノ映画祭でグランプリを獲った作品。中野区民でありながら、ポレポレ東中野に初めて入った。

中学生の少女が同級生を刺殺した。その加害者の母親・典子のインタビューと被害者の父親・順一のインタビューから始まる。言葉はそこまでしかない。一年後の北海道で、新聞記者を辞めた順一は製鉄所の労働者になっていた。その旅館には、加害者の母親・典子がいた。なぜ二人が再会したのか、説明は全くない。言葉も交わさない。

そこから先は、順一と典子、各々の毎日の繰り返し繰り返し…。観ているこちらは次第に絶望してくる。まるでドラクエ5で強制労働所に送られたときのように。しかし、ちょっとした変化に気が付く。例えば食卓から醤油が無くなっていたり、可笑しいのか可笑しくないのか。だんだん麻痺した感覚の中で、携帯電話を渡すやりとりが行われる。絶望の中の、光なんてとても言えないけれど、「何か」を感じさせる。

順一が言う。「あなた無しでは、生きられない。でも、あなたと一緒では、生きていく資格が無い」。こう言われてしまうと、私には言葉が無い。

『やわらかい手』

2007-12-25 00:01:26 | 映画
どんより重く垂れ込む、ロンドンの空。マギーは重病の孫の見舞いに出かける。そこで、命を救うためには多額の渡航費が必要になると聞かされる。息子夫婦にはそんなことができる経済状態ではない。彼女もまたそうだ。働きに出ようとした時、見つけた「接客係募集」の文字。彼女は知らなかった、それが風俗嬢の募集だとは…

こう書くと、よくあるおバカコメディ映画(ちょい感動含む)のように思われてしまうかもしれない。しかし、この映画は、孫に捧げる愛の強さを身をもって表していて、心のひだにじんわり染み入る作品。上映館が渋谷のル・シネマだけとは、もったいない。

穴の向こうの男性を悦ばせる行為に、最初は戸惑うマギー。評判と店のオーナー・ミキに褒めてもらったことで、自分が人様から認めてもらえた感覚を手に入れる。主演のマリアンヌ・フェイスフルは、卑しいと思われている仕事を下品に見せず、むしろ、肝を据え誇りさえ持っているように見える。

ご近所連中に浴びせ掛けるセリフ、息子との葛藤、そして孫との約束。会話のひとつひとつが機微に富んでいて、イギリス映画のいいエッセンスが詰まっているように思える。

こんな年寄りを、とマギーが自虐的に呟くのを聴いたミキ。すかさず「そんな奴を雇った覚えはない」と。やわらかい手が、ここにもあった。

『ミッドナイト イーグル』

2007-12-24 00:45:49 | 映画
今年のM-1、無名のサンドウィッチマンが優勝。笑い飯を優勝させたいという「政治」の力は働かなかった。本命無き中、敗者復活から這い上がって笑わせてくれた。2位のキングコングに比べて、華はないが実力はある。ブラマヨのように活躍の場が増えるのだろうか。キンコンも人気先行だったけれど、なかなか良く育ってきたなあ…。


で、そのテレ朝が制作に絡んでる『ミッドナイト イーグル』。ユニバーサル・ピクチャーズも入ってる。日米同時公開って…。それに11/23に公開、正月映画を銘打っておきながら、正月まで客足が続くとは到底思えない興行ランク。松竹よ、大丈夫か?

日本は工作員に潜入され、米軍基地から核爆弾を搭載したステルス機を盗み出された、という筋。観ていて、強烈な違和感、というよりか拒絶感を持った。何に対する感情なのだろう?

北朝鮮に? 日本政府に? 米軍に? 兵器に? マスコミに? 主人公たちの独善的な行動に? 時限爆弾のタイマーがあまりにも安っぽく見えることに…???

同じような設定で舞台がアメリカだったら、納得して観ているだろう。現に『24』はシリーズ全て観ている。どうもそのことが日本で起きたというのが、理解できない、したくないのだ。平和ボケと言われようが。邦画がハリウッド映画を目指し、こういうのを作っているのなら、今すぐ止めて欲しい。銃撃事件が度々起こってる現実を見ていると、なお一層その思いが強くなる。

なんだか、とにかくイヤなのだ。

『椿三十郎』

2007-12-23 00:58:52 | 映画
去年のタジー男優賞受賞の織田裕二主演。しかも制作総指揮は、あの角川春樹。春には『蒼き狼』で、テレマーク姿勢のまま顔面から着陸するような見事なズッコケを見せてくれました。いやが上にも期待が高まる。

で結果。…そーでもなかった。でも、ツッコミどころは多々あるけど。まずね、織田裕二はあの台詞回しが似合わない。「鞘に納まらない刀」のようには見えないんだよなあ。大河ドラマ『新撰組!』で芹沢鴨をやった佐藤浩市だったら良かったのかも。侍の狂気みたなものが沸き上がってくる感じが。ただ、その時には敵役のトヨエツとの対比が弱くなるけど。あと、殺陣が貧弱。てか、血が映らないんだもの。そりゃ、黒沢版はポンプまで使ってやり過ぎ感は否めなかったけどさ。全く出ないのもねえ。あと、杏ちゃん顔デカい(それはどうでもいい)。

良かったのは、押入れ侍役の佐々木蔵之介が飄々とした持ち味を発揮してて、いいアクセントになってたこと。それから、オリジナルと同じ脚本使いつつも、リズムが小気味よかったこと。うーん、それぐらいか…。

終盤の椿が屋敷に突入する辺りから、だんだんと志村けんの「バカ殿」でも観てる気分になってきた。腰元シスターズみたいなのが出てきて、さらに伊藤克信がまるでクワマンみたいな風体。なんだこれは。森田監督特有の「安っぽさ」が出たような。

『ボーン・アルティメイタム』 第一級のスパイアクション

2007-12-19 00:24:09 | 映画
ボーン・シリーズ最終作(と言われている)。

いやあ、息もつかせぬ爽快なアクションシーンの連続だった。まるで、坂道を転がりだしたボールかのように、ボーンは走る、走る。自分は何者なのかという問いを背負い、世界3都市を舞台に駆け回る。特にロンドンのシーンが出色の出来。往来の激しい街頭や駅構内を、情報を握る新聞記者と共に逃げる様に、一喜一憂ハラハラドキドキ。以前、ロンドン旅行した時に訪れたウォータルー駅が使われていて「あ、この売店入ったなあ」とか思って妙にうれしくなってしまった。

シリーズものだけれど、この3作目だけ観ても充分面白い。CIAに追われている、それだけ覚えておけばいい。いわば、壮大な鬼ごっこ。ぶっちゃけストーリーなんて細かいことはどうでも良くなってくる。臨場感を上げるために手持ちカメラが多様されているので、画面揺れがすごい。なので、画面酔いにはお気を付け下さいまし。

24シーズン6がやや地味だったので、ボーンが24時間続けばいいのになあ、なんて。完結なんていってるけど、小説の方はあと2冊出てるらしい。期待して待ちましょ。

抗議。

2007-12-17 00:05:10 | 世間
NHKでやってた「ワーキングプアIII」を観て、憤りを感じた。ただ、そのことをそのまま書いても能がないので他のことを。

ひとつは、佐世保の銃撃事件。子どもが狙われたことに対して、一番怒りを感じる。先週も父親のライフルをいじっていた子どもが弟を誤射する痛ましすぎる事件があったばかり。もちろん犯人が一番悪いのだけれど、そんなに簡単に銃が手に入ったり、転がっていたりする状況はいけない。
今、私人で銃を所持している人たちは、競技用か狩猟用なのだろう。だったら、個人宅で所有しておく必要があるのだろうか?必要最低限の数を警察署だとか公的機関で預かるとか、方法無いの?
「表ルート」の銃が事件に使われる。いわんや「裏ルート」をや。日本国内で銃を護身用に持つ必要はないし、これから先だって、アメリカみたいなことに決してなってほしくない。

もうひとつは、バイト先のこと。良いサービスをした映画館スタッフをお客さんの投票によって選出しようという試み。なんだそれ。スタンドプレーを褒めようとでもいいたいのか。お客さんの目に映る部分が全てではないわけで。目立たず頑張ってる人もいるんだ!「評価活動」の一環なのだとは思うのだけれど、評価というものの難しさを軽視しているように思う。
これでトップになると、某テーマパークに「研修」として行けるのだとか。そんなことよりも、皆の時給を十円でも上げてくれ。
もし本当に良い接客をしているスタッフがいたら、投票なんかしなくても、「ありがとう」とか「ご苦労様」とかの一言の方が、何十倍も有り難いです。

一つ目があまりにも重すぎたけど、今、自分が声を上げたいことでした。。。

『ALWAYS 続・三丁目の夕日』と『点と線』

2007-12-16 00:03:53 | 映画
ちょうど2年前に公開された前作。作品上では4ヶ月しか経ってないのに、子役の須賀健太クンが大きくなりすぎてるのはご愛敬。

前作同様、鈴木オート一家と茶川商店を中心とした物語なんだけど、オムニバス性をさらに広げてしまった結果、漫然とした印象に。堤お父さんの戦争体験も、薬師丸お母さんの恋愛話も、宅間先生の犬物語も(獣医師法違反では?との疑問も)、中途半端に扱うなら無かった方が…。詰め込みすぎのせいか上映時間は2時間半、娯楽作にしては長すぎる。本ストーリーであるはずの、茶川とヒロミと淳之介の「家族物語」が際だたなくて。せっかく人情話で面白く出来てるところはあるのになあ。

このシリーズ、昭和30年代の「輝かしいあの頃」を描いている。一面それはあるだろう。でも、戦後十数年の時代、戦争の傷跡や記憶がまだまだ残っているはず。人々は辛さをを抱えながら生きていたのでは?そんな疑問が残る。それに対する一つの答えがテレビ朝日で放映された『点と線』だと思う。

福岡の田舎刑事が、男女心中だと思われていた事件を不審に感じ、捜査に乗り出す物語。そこには、官僚と政治家の汚職問題が関わっていた…。退職を控えた初老の刑事が、なぜ執念を燃やすか。彼は戦時中、中国で人を殺したことを独白する。その痛みを、悲しみを、怒りに変えているようだった。戦後庶民は辛苦を重ねたのに、やり抜けた官僚や軍人上がりの政治家は、のうのうと不正を働いているではないか―。松本清張の指摘は鋭くて、重い。演じるビートたけしは、巧くはないけれど鬼気迫る雰囲気は十二分に出ていた。

初の民法テレビ局として開局した日テレが作った『Always』、キー局の中で一番最後に開局したテレ朝が、50周年記念で作った『点と線』。同じ時代をこれだけ違った角度で描いてるのは、とても興味深かった。『Always』公開に合わせて、あえて時代の影を表現しようとしたテレ朝スタッフの心意気を買いたい。

『エディット・ピアフ ~愛の賛歌~』

2007-12-08 23:27:47 | 映画
ずいぶん前に、シネフロントにて。

♪あなた~の燃える手で~私を抱きしめて~ と歌ったのは越路吹雪だけれど、その元歌を歌ったのがエディットピアフ。「いつみても波瀾万丈」の番組には収まらない、彼女の一生を描く。若い頃と晩年とか、時代が行ったり来たりするのについて行くのが少し苦労。

でもそんなの関係ねぇ。とにかく圧巻なのは、主演マリオン・コティヤールの、まるでピアフが降臨したかのような演技。しゃがれた声で、捲し立てるようなしゃべり方を見れば見るほど、そうだったんだろうなと、説得力がある。

ボクサーであるマルセルとの大恋愛、試合中に流れる「愛の賛歌」、バラの花を散りばめた廊下…。うっとりとさせたところにやってくる、突然の悲報。取り乱した後、呆然と歩き出すピアフ。そして、そのままステージに上がってしまう。これがワンショットの長回しで表現されていて、ビッグスターである自分と一人の女性としての自分との間で揺れる彼女の内面を慮らずにはいられなかった。

『自虐の歌』

2007-12-06 17:37:30 | 映画
シネクイントにて。

「日本一泣ける四コマ漫画」がまさかの映画化。前半は、パンチパーマの阿部ちゃんの独壇場。似合うわぁ。話題のCGちゃぶ台返しも毎回毎回あの手この手で、笑わせてくる。前半は彼の独壇場で突っ走る。幸江役の中谷美紀は、そばかすだらけのメイクダウン。健気で不憫で報われないで…。とにかく堪える。でも、ラーメン屋の店長からの求愛はうまくかわす。ある種、お見事。

後半は、幸江の過去に焦点が映り、なぜこの二人が一緒になったのかが明らかにされる。若かれし頃の派手派手シャブ中状態から、イサオによって抜け出していく。ここら辺の変化の仕方が、もう神々しくて。手を合わせたくなる。中谷様に。どんなにみすぼらしい姿にさせられても、後光が差しているというか。そんなこと考えると、普通の男じゃ相手役が務まらないわけで。だからこそ、ぶっとんだ阿部ちゃんがとっても相応しい。

ティーン雑誌モデル上がりばかりがチヤホヤされてるけど、シリアスもコメディエンヌとしても、きっちり演じられる人がホントの女優でしょ。これ観てそう思った。