ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

輝く!ピロデミー賞2012

2013-01-03 17:04:15 | ピロデミー賞
全国、四捨五入すれば10人程度は存在すると思われるピロデミー賞ファンの皆様、お待たせしました。第9回の「輝く!ピロデミー賞」各賞の発表です。

【2012年ベストテン】
1 サニー 永遠の仲間たち
女版「パッチギ!」。歌に恋に大ゲンカにと、痛快で晴れやかな気分にしてくれる。ハチャメチャやってるけど、しっかり時代も描いてて、韓国は386世代以降も着実に監督が育ってるなと実感。
2 別離
裁判員になったかのような気持ちにさせられるサスペンス。ハラハラする場面に家族の有り様とイランの社会が透けて見えてくる。特に主人公の妻と妊婦の家政婦の人物像が興味深かった。
3 かぞくのくに
ラスト間際の兄が車で去るシーンは、痛くて切なくて心えぐられる。ヤン監督から「兄に対して私が出来なかったことを」と言われ、アドリブで演じたと聞き、納得した。
4 最強のふたり
「違っていても仲良くしよう、ではなく、違っているから仲良くしよう」という、まどみちおの言葉を地で行く物語。ふたりの笑顔に、セプテンバーの曲がよく合う。
5 夢売るふたり
無言で思索する場面での、お松の凄み。「今が一番いい顔しとる」という阿部サダヲの言葉が、女の恐さを象徴してる。
6 少年は残酷な弓を射る
徹底的な母親に対する嫌がらせ。理由の見えない絶望感といったら…。呆然と、どんどん表情を失くしていくティルダ・スウィントンが素晴らしい。
7 ロボット
あるもの全部放り込みました的なパワフルな映画。結局、歌って踊るのも、楽しくてしょうがない。年に1本はこういうインド映画を見たい。
8 ミッドナイト・イン・パリ
「昔は良かった」ノスタルジーへの憧れを、きっちり皮肉で打ち砕く。ラストの雑貨屋のお姉さんとくっつくのは、「今を生きてる君には、今が一番いい時代なんだ」ってメッセージに思えた。
9 私が、生きる肌
発想がエキセントリック過ぎて、かなりキてる作品。復讐からもう別の次元に行っちゃってるんだろね。くわばらくわばら。
10 ライク・サムワン・イン・ラブ
自分を知ってほしいという感情と、知られることへの躊躇と。老教授と若い女の2人の主従入れ替わり、最後は共犯関係のような心境に至るやり取りが面白い。夜の描かれ方も綺麗で、好き。
次点 ル・アーヴルの靴みがき
善人ばかりの登場人物に、シニカルな笑いが相まって、ささいな日常が尊いものに見えてくる。カウリスマキは色遣いが本当にいいよねぇ。
次々点 人生はビギナーズ
「トラップ大佐」がゲイだったというのは想像できなかったけど、実際見てみると自然な感じで受け入れられた。息子の視点で描いたっていうのが良かったんだろうな。

特別賞
・11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち
左翼の若松監督が撮る右翼。全学連とアジり合いをする場面に、思想は違えど共通するこの国に対する思いがあったのだと感じた。
・これは映画ではない
タイトルから穏やかじゃないけど、監督の胸中が痛いほど伝わってくる。表現者にとっては辛い記録でもあるけど、検閲があるが故に生まれた希有な映像でもあるわけで。

今年は富山への転勤によって、単館系の作品が封切られるのが3ヶ月遅れぐらいの環境になっちゃったけど、フォルツァ総曲輪という作品チョイスの良い映画館に出会えて良かった。

【最優秀女優賞】
樹木希林 「我が母の記」
希林ばあちゃんの呆けっぷりがサイコー。その場にいない人に対して話しかける様は、もはや名人芸と言って過言でない。人間国宝もの。
【最優秀男優賞】
井浦新 「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」「かぞくのくに」
今年2度、話を聞く機会があって、役に対して本当に真摯な向き合い方をしてる人だなと。待機作も楽しみでしょうがない。

■ドラマ部門
【国内ドラマ賞】
NHK カーネーション
フジ ゴーイングマイホーム
【海外ドラマ賞】
シャーロック2
【最優秀女優賞】
尾野真知子(カーネーション、小原糸子役)
【最優秀男優賞】
渡辺謙(NHK 負けて、勝つ ~戦後を創った男・吉田茂~、吉田茂役)

カーネーションは、後半になっても素晴らしかった。夏木マリに糸子役が代わったことに批判はあったけど、あれはあれで。ゴーイングマイホーム、視聴率は完敗。でも、ああいう静かに味わうようなドラマは、各局が年1作は作るべき。渡辺謙の吉田茂役は、若すぎるデカすぎるってのは分かる。でも、苦虫を噛み潰したような、クシャおじさんみたいな、あの表情は良かったと思う。

■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
・メランコリア
タイトル通り物語が憂鬱でたまらないし、意味プーな展開。ただ、冒頭の超スローモーション映像は、繊細に描かれた絵をじっくり見てるようで、そこは好き。
・ヘルタースケルター
エリカ様にまつわるイメージを最大限に使ったあざとさは、逆にアッパレというしかないのかも。
・ツナグ
死を泣かせるためのアイテムにしか思ってないようなつくり。そんなのに八千草や仲代といった超大御所が出てるのが謎。
・終の信託
尊厳死が一般的でない時代を描いたのであれば理解できるけど、そうじゃないからどう見ても医者側の落ち度にしか見えない。それに、検察官役の大沢の大仰な演技と棒読みの草刈の応酬が続く終盤45分は、見ているこっちとしては地獄。周防監督やっちまったな感がハンパない。

【タジー女優賞】
・キルステン・ダンスト(メランコリア)
・沢尻エリカ(ヘルタースケルター)
・草刈民代(終の信託)
【タジー男優賞】
・草剛(あなたへ)
漁師役の大滝秀治のガチ演技を見たら、あんな軽い演技は許せなくなる。
・大沢たかお(終の信託)

輝く!ピロデミー賞2011

2012-01-01 13:29:31 | ピロデミー賞
全国7,8人のピロデミー賞ファンの皆様、お待たせしました。第8回ピロデミー賞各賞を発表いたします!


■映画部門

【トップ10】
1 冷たい熱帯魚
2 人生、ここにあり
3 ウィンターズ・ボーン
4 エンディングノート
5 モテキ
6 コンテイジョン
7 大鹿村騒動記
8 奇跡
9 ブラックスワン
10 英国王のスピーチ
次点 監督失格
特別賞 がんばっぺフラガール

【最優秀女優賞】
ジェニファー・ローレンス(ウィンターズ・ボーン、リー役)
【最優秀男優賞】
でんでん(冷たい熱帯魚、村田幸雄役)

ダントツで『冷たい熱帯魚』がトップ。もう2度と見たくないとトラウマを植え付けてくれるぐらい衝撃作だった。だって、見終わったら頭が痛くなってしばらく動けなかったんだもの。でんでんの二面性に恐れおののき、吹越満の変貌ぶりに脱帽。『モテキ』は長澤まさみの「殺人スマイル」にやられた!彼女との接戦の末、女優賞を獲得したのは『ウィンターズ・ボーン』のジェニファー・ローレンス。生きることに疲れ果てるんだけど、毅然とした覚悟を感じるあの表情、良かったねえ。地震と原発事故後に見た『コンテイジョン』、デマを吹聴するジャーナリストとそれを信じ切ってしまう人々。本当に怖いのは信用とか信頼が失われて硬直化した社会なんだなと。『大鹿村騒動記』は原田芳雄の追悼というより、単純に笑えてホロッと出来て、ずっとこの人たちを見ていたいと思わせる邦画の良さがにじみ出てる作品だったから。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
NHK カーネーション
【海外ドラマ賞】
ケネディ家の人びと
【最優秀女優賞】
尾野真知子(カーネーション、小原糸子役)
【最優秀男優賞】
松尾スズキ(NHK TAROの塔、岡本太郎役)

■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
まほろ駅前多田便利軒
ツリー・オブ・ライフ
東京オアシス
アントキノイノチ
【タジー女優賞】
榮倉奈々
【タジー男優賞】
山本太郎 高岡蒼佑

『アントキノイノチ』はラストの改変がひどすぎる。『恋空』辺りからのTBS映画のお涙頂戴路線には辟易。そういうことで榮倉奈々も引きずられて受賞と相成りました。『ツリー・オブ・ライフ』、なにあれ。見てる時の客席のぽかーんとした表情は忘れられない。『東京オアシス』は、雰囲気美人を目指して勘違い。『まほろ駅前』はあの2人の醸し出す雰囲気に耐えられなくなりましたとさ。山本サン、高岡サン、もう少し自分と立場の違う人のことも考えてから発言や行動して下さい。

                  ☆★☆★☆☆★☆★☆

あまりにも大きく辛い現実を目の当たりにした2011年。否が応でも映画に対してもそのことを重ねて見てしまう。おそらく今年は震災を受けての作品がたくさん出てくるのだろうと思うけど、世間が「絆」「つながろう」の一括りで片付けてしまいそうなことを、もっと違った角度や考えでえぐってほしい。それから、世界の「独裁者」がいなくなって、日本国内に新たな「独裁者」が登場。このこともどう描くのだろう。映画もドラマも、いま、この時代に作っていることの意味を考えていってくれれば。
…と、自分のことは棚に上げて言うのは良くないですね。自分も「小さなことからこつこつと(by西川きよし)」の気持ちでやっていきます。今年もどうぞ、よろしくお願いします。

輝く!ピロデミー賞2010

2011-01-01 15:58:51 | ピロデミー賞
全国5,6人のピロデミー賞ファンの皆様、お待たせしました。第7回ピロデミー賞各賞を発表いたします!


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『誰がため』
『(500)日のサマー』
『ボーイズ・オン・ザ・ラン 』
『パリ20区、僕たちのクラス』
『フローズンリバー』
『トイ・ストーリー3』
『オーケストラ!』
『告白』
『悪人』
『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』
『ヘヴンズストーリー』

☆特別賞☆
『HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-』(プラネタリウム用作品)
『月あかりの下で-ある定時制高校の記憶-』

【最優秀女優賞】
寺島しのぶ 『キャタピラー』

【最優秀男優賞】
リカルド・ダリン 『瞳の奥の秘密』


2008年のピロデミー賞は、『ダークナイト』とか「悪」を描いたアメリカ映画がいくつか入ってたけど、今回は邦画にその傾向があったのかなと。『告白』にしろ『悪人』にしろ、テレビ局が出資してないのにヒットしたという意味も大きいと思います。テレビで放送することを織り込み済みで作った映画をわざわざ映画館で見たくないし。
『(500)日のサマー』『ボーイズ・オン・ザ・ラン 』→『モテキ』の流れはあまりに身近すぎて、手で顔を覆いながら指の間から見てるような感覚でした。
「3D元年」、割増料金で何作か見ましたが、3D表現を生かし切れてるのは『ヒックとドラゴン』ぐらい(選外だけど)。たいていは必要性を感じず、トーキー、カラーに並ぶ第3の革命とは思えず。
学校を描いたドキュメンタリー『月あかりの下で』とドキュメンタリー風『パリ20区、僕たちのクラス』は、改めて子どものために大人は何が出来るのかということを考えさせられる良作。それに、大人は子どもたちからもっと学ぶべきだということも指摘しているのだと思います。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
テレビ東京『モテキ』

【海外ドラマ賞】
『ザ・ホワイトハウス シーズン7』

【最優秀女優賞】
満島ひかり テレ東『モテキ』

【最優秀男優賞】
遠藤憲一 フジ『不毛地帯』


『モテキ』はマンガを先に読んだのだけど、ドラマもいろんな演出があって楽しめました。満島ひかりは「ロックンロールは鳴り止まないっ」の絶唱で女優賞決定。『ザ・ホワイトハウス』『24』もとうとう最終回を迎えて、今後海外ドラマは何を見ればいいのか、当てがありません。誰かオススメ教えて。エンケンフィーバーは続き、年をまたぎ受賞。あの顔を朝に見ることになるとは(笑)。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『ウルルの森の物語』
『ゼブラーマン -ゼブラシティの逆襲- 』
『大奥』
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

【タジー女優賞】
沢尻エリカ

【タジー男優賞】
船越英一郎 『ウルルの森の物語』


中でも『ゼブラーマン』は見てて思わずサイテーと呟いてしまうほどの出来。ある意味突き抜けててこれを全国ロードショーするって勇気あるなあって。沢尻サンは何にも出てなかったけど、2年ぶり4度目の受賞。あ、大桃サンと麻木サンは女優じゃないと思うので、ノミネートしませんでした。海老蔵サンも然り。船越サンはふた昔前のトレンディドラマ風の演技がまぶしすぎて。

☆★☆★☆

社会人になって、大阪に引っ越して、一人暮らしを始めて、個人的に激動の一年でした。もっといっぱいの作品を見られればなと常に思うんだけど、なかなか見落としてるものも多くて。ぜひぜひオススメを教えて下さいませ。
映画館にもさまざまな動きが出てます。恵比寿ガーデンシネマや梅田ピカデリー、それに我がシネフロントも閉館するという状況が正直寂しい限りです。今後、シネコンに集約されていくのだろうけど、作品の多様性みたいなものは担保してほしいなあと。このあたりのことはまたそのうち書きます。

さてさて、今回もお付き合いありがとうございました。みなさんにとって良い一年になりますように!

輝く!ピロデミー賞2009

2009-12-28 11:55:52 | ピロデミー賞
紅白歌合戦は60回だそうですが、こちらはその1割、6回目を迎えました。
さあ、全国5,6人のピロデミーファンの皆さまお待たせしました!どうぞ発表をご覧下さい。


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『ラースと、その彼女』
『ダウト』
『ミルク』
『スラムドッグ$ミリオネア』
『グラントリノ』
『ディア・ドクター』
『バーダー・マインホフ -理想の果てに-』
『沈まぬ太陽』
『母なる証明』
『空気人形』

【最優秀女優賞】
キム・ヘジャ 『母なる証明』母親役
うっとうしくも温かい、そして生々しい「母親」像ここにあり。

【最優秀男優賞】
ショーン・ペン 『ミルク』ハーベイ・ミルク役
ミルクの人間的魅力を余すことなく。表情も本物そっくり。

こうして並べてみると今年は、マイノリティや弱者を扱った作品を多く見ていて、その一つひとつが印象に残りました。
特に良かったのは『ミルク』。困難に立ち向かっていく勇気をあの柔らかい笑顔で包んで突っ走っていった。今まで光が当たらなかったところに光を当てる。そして、共に生きるとはどういうことなのか。『ラース』『グラントリノ』辺りはそのことを考えさせられます。
『母なる証明』は偏見に対して真っ向から向かっていく情熱的な母親の物語。ポンジュノ節の苦みが効いている。家族と言えば『空気人形』も逆説的な家族の物語のようにも見える。家族の「不在」が、繋がりを求める人々の心を浮き彫りにさせているように見えました。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
『深夜食堂』
定点カメラのような、それでいて人間の機微に触れる。こんなドラマあってもいい。

【海外ドラマ賞】
『アルフ』
昔のドラマだけど、たくさんの人の声で再放送、DVD化され、そのことに感動。所さんの笑い声、懐かしい。

【最優秀女優賞】
該当者無し

【最優秀男優賞】
遠藤憲一 『不毛地帯』鮫島辰三役

本当は『不毛地帯』は来年に評価すべきなんだろうけど、遠藤憲一のギラついた顔付きと言動に目を奪われました。それに今年は『白い春』『湯煙スナイパー』とエンケンイヤーだったと思い、差し上げました。
その他、山田太一最後の連ドラ『ありふれた奇跡』は今どき珍しいゆっくりしたペースの作品でBGMも控えめで良かったです。
単発ドラマだと『刑事一代』。渡辺謙の鬼刑事っぷりが堂に入ってる。『沈まぬ太陽』も含めて、「昭和」という時代がすごかったからだとも思ってしまうのだけれど。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『7つの贈り物』
ウィル・スミスさん、だからといってその行動はないでしょう。
『おとなり』
美男美女の自己満足探求うだうだ映画。
『宇宙へ』
NASAのプロバガンダ。やるならもう少し考えましょう。
『わたし出すわ』
アイディアはいいけど、着地点がよく分からない。

【タジー女優賞】
酒井法子
逮捕された事実もさることながら、よりによって裁判員制度のDVDに出演していたとは…。

【タジー男優賞】
中居正広 『私は貝になりたい』清水豊松役
感情を込めすぎです。


  ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


オバマ大統領の誕生という「希望」で始まり、日本でも政権交代が起こった今年、積年の問題を目の当たりにしてやや不安な年越しになってるような気がするけど、来年はパッと明るい映画も見たいなあ。リバイバル上映でやってた『ロシュフォールの恋人たち』みたいなのを。
ではみなさま、良いお年をお迎え下さいませ。

輝く!ピロデミー賞2008

2008-12-31 17:29:01 | ピロデミー賞
レコード大賞は50回だそうですが、こちらはその十分の一、5回目を迎えました。どうぞ発表をご覧下さい。


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『ヒトラーの贋札』
『アメリカン・ギャングスター』
『クローバーフィールド』
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
『告発のとき』
『ぐるりのこと』
『崖の上のポニョ』
『ダークナイト』
『この自由な世界で』
『ブラインドネス』

今年の印象としては、「人間の暗部」を描いた作品が多かったこと。
その暗さもさまざまにあるわけで、『ダークナイト』の徹底した悪役もあれば、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の尽きぬ欲望が生み出す破滅、『告発のとき』『この自由な世界で』が描く現代社会、国家が作り出してしまった「見えない怪物」もある。
そう考えると『アメリカン・ギャングスター』はヒールでありながら、実は弱者の味方だったのではないか、この世の複雑さを改めて考えさせられました。

【最優秀女優賞】
永作博美 『人のセックスを笑うな』ユリ役
とにかく自由で奔放で、無邪気なあの笑顔にコロリとやられる。とてもとても付き合いきれません。

【最優秀男優賞】
堺雅人 『クライマーズ・ハイ』佐山達哉役
見たこともない精悍な顔つき。彼の役幅の大きさに気付かされた。

■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
『あの戦争は何だったのか 日米開戦と東条英機』
ドキュメンタリーと併せて、現在の日本にも通じる巨大な問題が浮かび上がった。

【海外ドラマ賞】
『ザ・ホワイトハウス5』
脚本のアーロン・ソーキン降板後のシーズンだけど、やっぱり面白い。

【最優秀女優賞】
該当者無し

【最優秀男優賞】
該当者無し

…っていうか、なかなか見る気になる連続ドラマが無いんだよなあ。原作モノばっかりで。『風のガーデン』で倉本聰が、次のフジのドラマで山田太一が一線から身を引くみたいだけど、オリジナル作品に力を入れて、しっかりとしたホンを書ける人を育てて下さい。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『明日への遺言』
『少林少女』
前者は映画的表現に欠けていて魅力が無かったこと、後者は言わずもがな。テレビ局は本業に専念しろ!

【タジー女優賞】
沢尻エリカ
今年も終盤の追い込みで受賞。彼女は何になりたいのでしょう?

【タジー男優賞】
木村拓哉『CHANGE』
企画、発想も酷い。同じ政治ドラマでありながら『ザ・ホワイトハウス』の対極にある。最終回、キム様の20分の大演説に大シラケ。

  ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

映画に負けず劣らず、「暗い」ニュースばかりの年末ですが、来年が皆さまにとって良い年でありますように祈っております。では。

輝く!ピロデミー賞2007

2007-12-29 22:44:05 | ピロデミー賞
全国5,6人のピロデミーファンの皆さま、お待たせしました。年末のお楽しみ、4回目を迎えたピロデミー賞各賞の発表です。


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『リトル・ミス・サンシャイン』(米/監督ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス)
『それでもボクはやってない』(日/周防正行)
『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(米/ロバート・アルトマン)
『クィーン』(英仏伊/スティーブン・フリアーズ)
『善き人のためのソナタ』(独/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク)
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(日/吉田大八)
『夕凪の街 桜の国』(日/佐々部清)
『ヘアスプレー』(米/アダム・シャンクマン)
『ボーン・アルティメイタム』(米/ポール・グリーングラス)
『やわらかい手』(英仏独ベルギー/サム・ガルバルスキ)

 今年は例年に比べて映画鑑賞はやや控えめな感じだった。見逃したのもたくさんあるし。アジア映画はほとんど観られなかったし。新宿にシネコン出来たし、シネコンで観た映画は増えたし。そんな中だけど十本選んでみました。
 長いブランクを経て周防監督が帰ってきた。痴漢冤罪という我が身にも降りかかりそうな社会問題をユーモアに怒りを込めて世に送り出した。よくよく考えなければならないのは、原爆の痛みは今も続いているという『夕凪の街 桜の国』。3人の女優のスッとした立ち居振る舞いに、世代をつなぐことの大切さを感じた。薬害肝炎の問題にも通ずるものがある。現代史を描いた『クィーン』『善き人のためのソナタ』の2本は、説得力のある物語を見せてくれた。テンションが突き抜けていたのは、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』。田舎の閉塞感とサトエリの勘違い女の対比が笑える。
 ロバート・アルトマン監督の遺作となった『今宵、フィッツジェラルド劇場で』。監督なりの「さよなら」の仕方だったのかもしれない。

【最優秀女優賞】
マリオン・コティヤール 『エディット・ピアフ ~愛の賛歌~』エディット・ピアフ役
捲し立てるような口調、ステージに賭ける姿、気迫の一言に尽きる演技だった。

【最優秀男優賞】
ウルリッヒ・ミューエ 『善き人のためのソナタ』ヴィースラー大尉役
無表情の中に訪れる春の息吹を体現。映画を観た一ヶ月後に訃報を知った。合掌。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
『点と線』
昭和30年代の影を描いた力作。怒りとも嘆きともつかないラストに深い闇を見た。

【海外ドラマ賞】
『ザ・ホワイトハウス4』
 選挙戦から再選、サムの出馬と飽きさせないストーリーとキャラクターたち。シーズン5以降の日本放送を強く求む。

【最優秀女優賞】
フェリシティ・ハフマン /『デスパレートな妻たち』リネット・スカーボ役
マーシア・クロス /『デスパレートな妻たち』ブリー・バン・デ・カンプ役
 一見コメディに見えて、そこに潜む人間の業をシリアス交えて好演。

【最優秀男優賞】
キーファ・サザーランド /『24 シーズン5』ジャック・バウアー役
 シリーズ最高のアクションだけでなく、極限に追い込まれるジャックの深い苦悩も表現。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『蒼き狼 地果て海尽きるまで』
 最初から最後まで東映特撮モノのようなチープさ。30億も掛けたのに。さすが角川春樹。
『恋空』
 観てもいないけど、女子中高生がスンスン啜り泣いてる姿を見て。場内が散らかりすぎて清掃に苦労した。

【タジー女優賞】
沢尻エリカ
菊川怜 /『蒼き狼 地果て海尽きるまで』ポルテ役
 今年の沢尻サンは文句なしの受賞でしょう。作品とか関係ねぇ。セルフプロデュースの上手さに脱帽。2年連続受賞、おめでとうございます。菊川サンは、フツーに大根役者でした。 そういや一昨年のタジー賞差し上げた香椎由宇が結婚したね。なんだか。

【タジー男優賞】
織田裕二 /『椿三十郎』椿三十郎役
 世界陸上と自伝出版分も上乗せして。クサイ台詞のたびに笑わせていただきました。こちらも2年連続の受賞。来年も期待しております。

  ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

今年もお付き合いありがとうございました。
皆さま、よいお年をお迎えくださいませ。。。

ピロデミー賞2006

2006-12-31 22:49:04 | ピロデミー賞
年末恒例のピロデミー賞を発表したいと思います。


■映画部門

【今年の十本】(観た順)
『白バラの祈り ~ゾフィー・ショル、最期の日々~』(独/監督・マルク・ローテムント)
『クラッシュ』(米/ポール・ハギス)
『プロデューサーズ』(米/スーザン・ストローマン)
『かもめ食堂』(日/荻上直子)
『RENT レント』(米/クリス・コロンバス)
『太陽』(露伊仏スイス/アレクサンドル・ソクーロフ)
『時をかける少女』(日/細田守)
『フラガール』(日/李相日)
『地下鉄に乗って』(日/篠原哲雄)
『パプリカ』(日/今敏)

【最優秀女優賞】
ユリア・イェンチ /『白バラの祈り』ゾフィー・ショル役
若さゆえの未熟さと信念を通す芯の強さと、じっと見る目が伝える。

【最優秀男優賞】
イッセー尾形 /『太陽』昭和天皇役
飄々とした風体、物言いたそうで言えない口、戸惑い、焦り、静かな演技で表現。

今年は、邦画の興行収入が洋画を上回ったという。それもあってなのか、このベスト10も半分が邦画。しかも、うち2作品はアニメ作品。『時にかける少女』は爽やかな青春モノでありながら、未来への警鐘と希望を託した気持ちの良い作品。来年の8月15日は、ぜひこれをどこかで放送してほしい。
洋画は、『白バラの祈り』のナチスに迫害された少女の気概と、『クラッシュ』『RENT』の悩める現代を生きる人々の姿がオーバーラップ。考え込んでしまった。3月に行ったイギリス旅行で、ミュージカルにハマり、日本に帰ってきてから、映画やら四季やらたくさん観ました。マイブームは続きそうです。
ただ、今年は見逃した作品が多かったような気がする。特にミニシアター系。あれだけ話題になってた『ゆれる』だって観てないし。来年は観に行く努力をしようっと。


■ドラマ部門

【国内ドラマ賞】
 該当作品なし

【海外ドラマ賞】
『ザ・ホワイトハウス3』

【最優秀女優賞】
志田未来 /『14才の母』
母になること、女の顔がそこにあった。

【最優秀男優賞】
ジョン・スペンサー /『ザ・ホワイトハウス3』レオ・マクギャリー役
大統領選出馬にまつわる回想シーン、「Bartlet for America」の言葉が印象深い。

1年前に亡くなったジョン・スペンサーは、画面の中では、いまも渋く存在感のある演技を見せてくれた。第3シーズンが始まる直前に同時多発テロが起き、急遽特別エピソードが作られた。報道官・C.J.の弱い部分も垣間見られ、とても魅力的なシーズンだった。
国内ドラマに関しては、ほとんど観てないので、該当作なし。それでも、志田ちゃんが光った。どんな女優に育つのか楽しみだ。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『ゲド戦記』
アニメ製作に携わったことの無い人に監督やらせるのは無謀すぎ。同時期に『時をかける少女』が公開されたから、よりそのことがはっきりしてしまった。
『NANA2』
内容云々の前に、主役の片割れが交代するなんて。他も入れ替わってるし。案の定な客入りなのも含めての受賞。

【タジー女優賞】
沢尻エリカ
夏川純 /『7月24日通りのクリスマス』『ルナハイツ2』
中島美嘉 /『NANA2』大崎ナナ役
沢尻サンは、東京国際映画祭レッドカーペットでのアユファッションのカッコと振る舞いで。夏川サンは、バラエティでもそうなんだけど、発言がわざとらしくて、うぜぇ。ご存知、中島サンは、続編が見事にコケて去年に引き続き受賞。予告編しか観てないけど。

【タジー男優賞】
織田裕二 /『県庁の星』
一旦は「該当者なし」と書いてしまったけど、後になって思い出した。織田裕二が織田裕二を演じているとしか思えない、ある意味稀代の役者。


以上、今年のピロデミー賞でした。来年もひとつよろしくお願いします。

ピロデミー賞2005

2005-12-28 01:47:32 | ピロデミー賞
2回目を迎えれば「恒例」の二文字は確実に付けられるとおもっていますので、恒例のピロデミー賞を発表いたします。今年は新設のゴールデン・タンジェリン賞もあります。それでは、どーぞ。


■映画部門
【今年の十本】(観た順)
『パッチギ』(日/監督・井筒和幸)
『オペラ座の怪人』(米英/ジョエル・シューマカー)
『エターナル・サンシャイン』(米/ミシェル・ゴンドリー)
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(米/ジョージ・ルーカス)
『ミリオンダラー・ベイビー』(米/クリント・イーストウッド)
『ヒトラー ~最期の12日間~』(独/オリヴァー・ヒルシュビーゲル)
『メゾン・ド・ヒミコ』(日/犬童一心)
『カミュなんて知らない』(日/柳町光男)
『SAYURI』(米/ロブ・マーシャル)
『キング・コング』(米/ピーター・ジャクソン)

【最優秀女優賞】
小泉今日子 /『空中庭園』京橋絵里子役
感情を押し殺した完璧な笑みと、凄まじいほどの叫びとのギャップ。

【最優秀男優賞】
ブルーノ・ガンツ /『ヒトラー ~最期の12日間~』アドルフ・ヒトラー役
世界の嫌われ者役を請け負った勇気と、人間ヒトラーに迫った洞察との素晴らしさ。

今年は戦後60年ということで、戦争に関する映画が多かったように思えます。そのなかでも『ヒトラー~』は、戦争との新たな向き合い方を教えてくれました。その点『スター・ウォーズ』もSFでありながら、なぜ人は悪に堕ちてしまうのかということがテーマで興味深かったです。また、記憶に関する映画も多く、先陣を切った『エターナル・サンシャイン』を選びました。そこから『50回目のファースト・キス』『博士の愛した数式』と繋がって、感動もひとしお。『私の頭の中の消しゴム』も観なきゃ。


■ドラマ部門
【国内ドラマ賞】
『ハルとナツ』
戦争と時代に翻弄された人々の悲哀と情熱が胸を打った。

【海外ドラマ賞】
『ER 緊急救命室』8thシーズン
第21話「託す思い」ON THE BEACH
死を受け入れたマークに『Somewhere over the Rainbow』の曲が掛かり、涙。

【最優秀女優賞】
サラ・クラーク /『24』シーズン2,3ニーナ・マイヤーズ役
シーズン1ラストから続く、壮絶な執念を鬼気迫る表情で熱演。

【最優秀男優賞】
村田雄浩 /『ハルとナツ』高倉忠次役
離ればなれになった二人の父親。日本を最後まで信じた明治男の武骨さ。

今年は映画100本達成できました。加えてアメリカドラマのDVDも観てるのだから、そうとう頑張ったと思います。なので、日本のドラマが少し疎かになった感じ。賛否の分かれた『女王の教室』も面白かったけれど、真矢の過去だけでなく、なぜスパルタになったのかというところまで描いてほしかった。腑に落ちない。『ER』はグリーンがなくなって、『24』は、いままでの主要メンバーが去っていったり、転換期を迎えています。これをどう乗り越えるのか、期待。あと、韓国ドラマ枠が元のアメドラ枠に戻ってくれることを祈っています。


■ゴールデン・タンジェリン賞(略してタジー賞)
 最も「アレ」な感じの作品と俳優に贈られます。

【タジー作品賞】
『ローレライ』
戦争を経験してきたおじいちゃん、おばあちゃんには見せられないよー。ギバちゃんのコントみたいなでっかいコンセント差し込む死に方なんて…。
『エリザベス・タウン』
「勝ち組」の挫折と立ち直りの自己満足映画。

【タジー女優賞】
香椎由宇 /『ローレライ』パウラ役
中島美嘉 /『NANA』大崎ナナ役
今年デビューした割に、出過ぎな感じの香椎サン。キャラ設定もアレだったけど、演技もね。大崎ナナは中島美嘉しかなり手がいないぐらいのハマリ役だったけど、子役か!って思うほどのやる気の無さ。(実は通しては観てないんだけどね。あまりにも、だったんで)

【タジー男優賞】
大友康平 /『パッチギ』ラジオディレクター役
場の雰囲気を全く読まない存在感。スゴすぎです。


明日から大晦日まで初スノボに行ってきます。スキーもやったことがありません。どうなることやら。良いお年を!

「ピロデミー賞2004」発表

2004-12-24 22:56:59 | ピロデミー賞
恒例、と見せかけて第1回ピロデミー賞をこの聖夜に発表いたします。

【今年の十本】(観た順)
『飛ぶ教室』(独/監督トミー・ヴィガント)
ほんとうの教育とは何か、大切なのは友情とそっと教えてくれる。
『ふくろう』(日/新藤次郎)
女の怖さ、実感できます。90歳を超えた監督の鋭いブラックユーモア。
『ラブ・アクチュアリー』(英米/リチャード・カーティス)
恋っていいなあ、と感じさせるあったかい作品。人間関係もうまい。
『グッバイ、レーニン!』(独/ヴォルフガング・ベッカー)
体制が大きく変わるとき、渦中の市民はどうしていたのか。
『ビッグ・フィッシュ』(米/ティム・バートン)
人間が忘れてはならない心の余裕を美しい映像で伝える。
『茶の味』(日/石井克人)
ほのぼのとした日々にエキセントリックな人々。笑おう。
『ロスト・イン・トランスレーション』(米日/ソフィア・コッポラ)
外国人から見た日本。さらにその作品を日本人が観る。認識のズレの面白さ。
『コラテラル』(米/マイケル・マン)
ロサンゼルスの魅力的で危険な夜を丁寧に描いている。
『僕はラジオ』(米/マイク・トーリン)
アメリカに思い出してほしい、寛容な心がこの作品にはある。
『理由』(日/大林宣彦)
「事件」は「社会」を語る。観る人の興味をうまく引き込んで飽きさせない。
=次点=
『華氏911』(米/マイケル・ムーア)
ブッシュの再選を許したため、ランクインならず。

【最優秀女優賞】
大竹しのぶ  『ふくろう』
東北の方言を使い、恨みと悲しみを圧倒的な演技力で表現。
【最優秀男優賞】
ジェイミー・フォックス  『コラテラル』
追いつめられた人間が暴発するまでの変化を熱演。次作『レイ』にも期待。

【国内ドラマ賞】
新選組!第33回「友の死」
山南と、すべて理解していた明里の別れに涙。秀逸。
12月30日に再放送あり。観れ。
【海外ドラマ賞】
ザ・ホワイトハウス2
第22話(最終回)「決断の時」“TWO CATHEDRALS”
大統領とランディハム夫人の幽霊とのやり取りから、再出馬会見まで、これも泣きます。
早くDVDを出してくれー!