ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

『やわらかい手』

2007-12-25 00:01:26 | 映画
どんより重く垂れ込む、ロンドンの空。マギーは重病の孫の見舞いに出かける。そこで、命を救うためには多額の渡航費が必要になると聞かされる。息子夫婦にはそんなことができる経済状態ではない。彼女もまたそうだ。働きに出ようとした時、見つけた「接客係募集」の文字。彼女は知らなかった、それが風俗嬢の募集だとは…

こう書くと、よくあるおバカコメディ映画(ちょい感動含む)のように思われてしまうかもしれない。しかし、この映画は、孫に捧げる愛の強さを身をもって表していて、心のひだにじんわり染み入る作品。上映館が渋谷のル・シネマだけとは、もったいない。

穴の向こうの男性を悦ばせる行為に、最初は戸惑うマギー。評判と店のオーナー・ミキに褒めてもらったことで、自分が人様から認めてもらえた感覚を手に入れる。主演のマリアンヌ・フェイスフルは、卑しいと思われている仕事を下品に見せず、むしろ、肝を据え誇りさえ持っているように見える。

ご近所連中に浴びせ掛けるセリフ、息子との葛藤、そして孫との約束。会話のひとつひとつが機微に富んでいて、イギリス映画のいいエッセンスが詰まっているように思える。

こんな年寄りを、とマギーが自虐的に呟くのを聴いたミキ。すかさず「そんな奴を雇った覚えはない」と。やわらかい手が、ここにもあった。

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