ブログ日和。

映画と、『ER緊急救命室』『ザ・ホワイトハウス』などの海外ドラマと、世間に対してのツッコミを徒然に書いていきます。

『大阪ハムレット』

2009-01-26 10:28:07 | 映画
『少年アシベ』の森下裕美の原作を映画化。大阪の下町を舞台にしたある家族の小さな物語。

なんといっても、一徳である。一家の父親が亡くなった直後から家に住み着いてしまうおっちゃん。父親の弟だというけれど、最後まで正体しれず。飄々として全くのヘタレ。この絶妙なキャスティングに痺れる。おかあちゃん役の松坂慶子は安定感があって、トラブル続きの一家の大黒柱。二人の「サンドイッチダンス」にほろりとさせられて、この組み合わせ、なんかいいなあと。

そして三兄弟には三者三様の悩みがある。女の子になりたい内気な三男、自分の父親が誰なのか気になってしょうがないヤンキー次男、大学生に恋をして歳を偽って付き合い始める中三のふけ顔長男…。

この彼女が加藤夏希で、健気なんだわ。新しい父親に馴染めなかった幼少期の話をうつむきながら話し始めて。それも柔らかな関西弁で。口を腕で押さえて「惚れてまうやろー!」とチャンカワイならずとも、映画館で静かに叫びたくなるはず。少なくとも自分は。

エンディングは倉木麻衣だったけど、ハナレグミの「家族の風景」がぴったりくるような、あったかさと切なさが同居する映画でした。

『誰も守ってくれない』+舞台挨拶

2009-01-24 21:54:17 | 映画
2時間、腕組みしたまま見ていた。

志田未来演じる沙織の兄が少女殺害事件の犯人として逮捕され、刑事役の佐藤浩市は彼女の警護を命じられる。まさに嵐に巻き込まれたような状況に翻弄される家族。メディアスクラムによって、犯罪者の家族が追い詰められるのか、と。

ステレオタイプな描き方があるものの、なかなかいいプロット、ストーリーだったと思う。特に3年前に息子を事件で亡くした柳葉敏郎と石田ゆり子が営むペンションに行くところとか、やや強引な展開なのだけど、ここで被害者家族と加害者家族と顔を合わせることで、物語に奥行きが出来た。これがないと、可哀想ね、で終わってしまうから。志田ちゃんの「抗議の眼差し」は健在で、存在感ありました。

舞台挨拶では8人のキャストと監督が登壇。佐藤浩市が「“守る”がいつの間にか“守ってやる”になってしまうことが怖い」という言葉が印象に残りました。加えて、石田ゆり子と木村佳乃のお美しさにクラクラ。横の扉近くに亀山Pがいたから、踊る3はいつやるんだと訊こうと思ったけど、舞台挨拶終わったらどこかに行ってしまいましたとさ。

で、その上でツッコミを。
・志田ちゃんの“彼氏”の声が女の子みたいでビックリした
・↑それって、テーマ曲歌ってるリベラがボーイソプラノだから掛けてるの?
・むしろ、刑事役の松田龍平こそ犯罪者ヅラ
・やっぱりBGMが大きい
・制作はフジテレビ。新聞記者とネットに悪役を押しつけてない?
・ドラマ版との繋がりがホテルの有料チャンネルのようで、ヤラシイ商売だなぁ

『私は貝になりたい』

2009-01-10 01:02:32 | 映画
戦後、BC級戦犯として裁判に掛けられた理髪師・清水豊松の物語。

話自体は戦争の虚しさを痛感させるもの。戦争の最大の犠牲者は市井の人々であることはヒシヒシと伝わってくる。…のだけど、演出方法があんまり合ってないような気が。豊松役の中居が、演技に力が入りすぎてて見ているこちらが、白けてしまう場面がチラホラ。それに、朝日新聞の「声」欄にも投稿が載ってたけど、久石譲の音楽がうるさすぎ&激情すぎ。これでもかと、「死」を強調するやり方はあんまりいただけないです。あと、仲間由紀恵が嘆願書の署名を集めるシーンは、「おしん」か!って思ったさ。

その彼女が主演のフジの新ドラマ「ありふれた奇跡」は、音楽控えめで淡々と、でも確かな見応えのある出だしのように感じられた。久々に見続けられる連ドラかなと思う。

『ラースと、その彼女』

2009-01-07 09:36:36 | 映画
あけましておめでとうございます。新年一本目から味のあるいい作品に出会えました。

アメリカの片田舎に住むラースは、人付き合いが苦手で兄夫婦の住む母屋から離れてガレージでひっそり暮らしていた。そんな彼が「紹介したい人がいる」と言い、夫婦は喜んだが、連れてきたのは「リアルドール」なる等身大の人形、ビアンカだった…。

ともすれば、ラースはアブナイ人として「排除」ないし「隔離」して、人々の目に付かないところへ連れて行かれるかもしれない。現に兄は施設に入れようと言い出したわけで。でもここで兄嫁のカリンが機転を利かし、ビアンカとどう付き合うか(つまりはラースとどううまくやっていくか)を考え始める。夫婦が街や教会の人々と相談した結果、暖かい受け入れを方々でしてくれたのだ。そのうちにラースの内面も変化し始める。あれだけ仲の良かったビアンカと大げんかするのだ。ここら辺の機微の描き方も、周りの人々の表情も含め素晴らしい。ラストには賛否あるだろうけど、自分はラースの決断にエールを送りたい。

安易に結びつけるのはいけないのかもしれないけど、東金市の女児殺害事件は、軽度障害者(この言葉でまとめ上げるのもどうかと思うが)に対しての人的サポートが、ある枠(施設、職場とか)を外れるとほぼ無くなってしまうことにも原因の一端はあるような気がして。この作品みたいに街の住人の多くが理解し、受け入れることが出来ればと思うのだけど。まあ、それでも偏見や差別は尽きないだろうし、あれぐらいの小さな町だから可能なのかもしれない。東京の1300万人はとかく多すぎる。

ビアンカちゃんは来日中で、シネクイントのロビーで微動だにせずお休みされていました。僭越ながら触らせていただくと、ずいぶんなもち肌でした。