静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

アニメーションを娯楽動画から脱皮させた宮崎監督に拍手

2024-03-12 10:22:13 | 時評
☆ 【毎日】「君たちはどう生きるか」はどう評価されたか 米識者に聞く受賞理由・・・・【國枝すみれ】 抜粋
・ 米国の研究者はどのように評価したのか。「マンガ・アニメのハリウッド映画化に見る日米の文化的遺伝子」などの著書がある米サウスカロライナ大のノースロップ・デービス教授に話を聞いた。
―作品の評価ポイントは?
* 映像が素晴らしいのはいつものことですが、「人間にとって重要なものを受け取った」と感じました。「不運に遭遇しても、悪意を持つ他人に会ってもあなたの人生をコントロールさせるな。あなたを破壊
  させるな」というメッセージです。親は我が子にできるだけつらい体験をしてほしくない。守りたいと思います。ですが、実際はすべてを守ることはできません。子どもは「暗闇」に対処する方法を自分で見つけて
  成長しなければならないのです。「君たち」の主人公は、「完璧な理想の世界」に住むという選択を拒否して現実の社会に戻り、母親の死と継母の存在を受け入れます。

* これは深い。世界は完璧ではないのです。「暗闇」は人生の一部として必要です。それを経験するからこそ、本当に素晴らしいことが起きたときに「人生は素晴らしい」と理解できるのです。
  黒沢明監督の名作映画「生きる」を思い出しました。主人公はがんになって初めて生きる目的を見つけます。
―作品の内容は難しくないでしょうか?
* ハリウッド映画のメッセージは直接的で分かりやすいことが多い。それが伝統だし、それで実際に成功してきたのです。しかし、「君たち」ではたくさんのことが起き、物語は複雑です。混乱する人もいますが、
  理解できればより豊かな世界を味わうことができます。

―宮崎監督の作品はどのような特徴があると捉えていますか。
* 宮崎監督は独特の物語の展開手法を持っています。主人公に「命綱」を与えません。主人公は追い詰められ、自分で人生を見つけます。そして日本の文化に根づくあらゆるものに魂が宿ると考える「アニミズム」の
  影響があります。これは西欧文化を基盤にする人々の目には異質で魅力的に映ります。さらに、宮崎監督の作品に登場する生き物たちは、善なのか悪なのか、その両方なのか、一見して分かりません。そこがとても
  面白いのです。
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 デービス教授は宮崎監督の狙いを善悪二元論に終止しがちな西欧社会との対比から解いている。「アニミズム」の濃い日本文化の延長に日本人の人生観を観ているのは鋭い。
日本のファンは無論、欧米のファン、特に年少のファンが教授の指摘するポイントをどこまで感じ取り、気づきとなるか? それは韓国製アニメにも共通する魅力となるのか?
 思えば、アニメ制作者の中でも宮崎監督は、漫画などの原作に依拠した初期の作品からシナリオ脚本も自分の頭の中で創造するに至った点で、映画監督以上のマルチ才能だ。
原作への拘りをめぐり、若い頃から葛藤と模索の年月を送った経緯そのものが現在の栄華に華開いた、ということであろう。 宮崎氏は83歳。さて後継者は?と案じてしまう。
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