永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(261)

2008年12月24日 | Weblog
12/24   261回

【胡蝶(こてふ)】の巻】  その(9)

 源氏はつづけて、

「かう何やかやと聞こゆるをも、思す所やあらむとややましきを、かのおとどに知られ奉り給はむことも、まだ若々しう何となき程に、ここら年経給へる御中にさし出で給はむことは如何、と、思ひめぐらし侍る。(……)」
――こう色々と申しますと、あなたが邪推なさらないかと気が咎めますが、実父の内大臣にお知らせするにしても、あなたがまだ若々しくて、何も経験のないお身で、長年離れておいでになった御一族の中に入って行かれるのは、いかがなものかと思案しているのですよ。(やはり、世間並みの女のように、身の決まりがついた上で、一人前に名乗る折もあろうかと、思うのですよ)――

 兵部卿の宮については、こうおっしゃる。

「宮は一人ものし給ふやうなれど、人柄いといたうあだめいて、通ひ給ふ所あまた聞こゆる。さやうならむことは、憎げなうて見直い給はむ人は、いとやうなだらかにもて消ちてむ。(……)」
――宮は、独身のようですが、お人柄が好色めいていて、妾とか面白くない名のつく女が大勢いると聞きます。夫に妾など居ても大目に見過ごすような女なら、穏便にすませてしまうでしょう。(でも、少しでも嫉妬心のある方では、夫に飽きられてしまうでしょうから、そこは注意が大切です)――

 次に、髭黒の大将については、

 「大将は、年経たる人の、いたうねびすぎたるを厭ひがてらに、求むなれど、それも人々わづらはしがるなり」
――大将は、長年連れ添った夫人が大そう老けてしまったのを嫌いながら、一方でこちらにお申し込みがあると聞きます。当然夫人のゆかりの方々が良くは言わないでしょう――

 源氏は、色々と考えて決めかねていらっしゃることを、姫君にしんみりと仰せになります。「私を亡き母親と思ってください。」ともおっしゃるので、姫君はお困りになりますが、子供のように黙っていても味気ないことと、

「何事も思ひ知り侍らざりける程より、親などは見ぬものにならひ侍りて、ともかくも思う給へられずなむ」
――何のわきまえもない子供の頃から、親などは居ないものだということに慣らされておりまして、今さら親とお思いするもしないも、思案がつきかねますー―

◆ややましき=心苦しい、不安

◆ねびすぎたる・ねびまさる=年齢より老けて

ではまた。

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