永子の窓

趣味の世界

源氏物語を読んできて(21)

2008年04月16日 | Weblog
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【若紫】の巻 (3)
 
 この巻は、これからの物語の重要な部分を多分にもっているので、すこし詳しく原文を引用していきたいと思います。
 病もやや癒えつつありましたので、共人を先に返し、惟光と二人で夕暮れの霞に紛れて、かの小柴垣の方向に下りていきます。
「西面にしも、持仏すえ奉りて、おこなふ尼なりけり。」
――西に面した部屋に持仏を据えて、行をおこなっているのが尼です。――
 
 歳のころ四十過ぎで、色白で痩せているけれど、顔はふっくらとしていて、目元、髪の具合も(当時の尼は肩の辺りで髪を切りそろえた)今風でよいものだ。
 大人や童女が出てきて遊ぶ中に、
「十ばかりにやあらむと見えて、白き衣、山吹などのなれたる著て、走り来たる女子、………いみじくおひ先見えて、うつくしげなる容貌なり。髪は扇をひろげたるようにゆらゆらとして、顔はいと赤くすりなして立てり。」
――その中に、十歳ばかりに見えて、白い下着に山吹重ねなどのやわらかなのを着て、走り出てきた女の子、成人したらどんなに美しくなられるだろうと想像できるご容貌です。……髪は扇を広げたようにゆらゆらとして、顔は、泣いてこすったと見えて、赤くして立っています。――

 尼君が「何事ぞや。童女と腹立ち給へるか」――何事です、喧嘩でもしたのですか――
 女子「雀の子を犬君(いぬき=召使いの童女の名前)が逃がしつる。薫籠(ふせご)の中に籠めたりつるものを とて、いと口惜しと思へり。」
――雀の子を犬君が逃がしてしまったの。籠の中に大事にしていたものをと言って、とても口惜しい様子です――
 大人達がきて、またあのぼんやりが、こんなことをしでかして、いけないですね。どこに行ったのでしょう。雀がだんだん可愛らしくなってきたのに、烏(からす)が見つけたら大変なこと などと言っています。

 この女子(若紫)を見ての源氏の様子
「さるは、限りなう心をつくし聞こゆる人に、いとよう似奉れるが、まもらるるなりけり、と思ふにも涙ぞおつる」
 ――実は、限りなくお慕い申す人(藤壺)に大層よく似ていらっしゃるのが、とても気になり、それにつけてもと涙が落ちるのでした。――

 山桜の匂う北山の霞がかった夕方ちかく、品良く住んでいる尼君の家での、可愛いらしい若紫の様子です。雀の子を巡って、子ども達はこんな風に遊んでいたのですね。
 犬君はこの後も若紫に仕えていきます。ではまた。

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