永子の窓

趣味の世界

蜻蛉日記を読んできて 「解説から」

2017年06月26日 | Weblog
このあたりの作者と右馬頭の状況を知るために、解説を引用します。

【解説】 蜻蛉日記  下巻  上村悦子著より
 
 作者は遠度に兼家の手紙(見せたくない部分を破り取って)を渡したが、翌朝いま一度、その兼家の手紙を見ると自分が破り取った所とは別に今一か所破り取ったあとがあるのでびっくりし、兼家へ返事を出すとき、『今さらに…』の歌句を彼から来た手紙の端に書いて想を練ったことを思い出し、その歌の部分を遠度が破ってもって行ったことに気がついた。作者も困ったことになったと思ったであろう。一方その手紙を見せられた遠度はおそらく、兼家の筆跡の手紙は読んだであろうが、端に書きつけられた、『今さらに…』の歌を見て、兼家の筆跡でなく、作者の筆跡であるので、なぜ作者がこの歌を兼家の手紙の端に書いたのを見せたのか全く腑に落ちず、月光にあてて見ていたが、とっさに破って持ち帰ったのであろう。折々にその歌を口ずさんでいたのも、『紙の色にさへ…昼さぶらひて見給へん』と言ったのも、この歌を見せられた右馬頭の当惑の表れでもあろう。
 
 翌日、昨夜の約束を破って来なかったのは兼家の手紙を見て作者邸へしばしば行くことは兼家の心証を損なうことになり、また作者を当惑させることになると考えたこと、また作者の許可なしにあの歌を勝手に破り取って持って帰ったことで作者宅の敷居がたかくなったことなどにもよるであろう。またあの歌の内容にもこだわったのであろうか。
 
 しかし手紙だけは丁重に作者あてによこしたが、作者も気まずい気持ちですぐ返事も出さなかったが、翌日さりげなく返事を送りさらに遠度と歌の贈答もしている。この「今さらに…」の歌はあとでまた一つの事件をもたらす。

■「今さらに」の歌:「今さらにいかなる駒かなつくべきすさめぬ草とのがれにし身を」


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